イラスト素材提供サイト:薔薇素材Mako's様
浴室でレオンと激しく互いを貪り合った後、エリーザベトが浴室から出ると、数人の女官達が彼女の前に現れた。
「陛下、ハノーヴァー伯爵がお見えになります。早くお召し替えを。」
「解ったわ。」
エリーザベトが鏡台の前に座ると、女官達はそれぞれ彼女の髪を櫛で梳いたり、彼女の爪の手入れをしたりしていた。
「一体伯爵がわたしに何の用なのかしら?」
「さぁ、存じ上げません。あの方は、ただ陛下のお顔が見たいだけなのでしょう。」
「まあ、そうでしょうね。」
エリーザベトがそう言って笑うと、女官達も彼女につられて笑った。
「これは陛下、いつも麗しゅうございます。」
「あら、有難う伯爵。お世辞でそう言って頂けるだけでも嬉しいわ。」
執務室へとやって来たハノーヴァー伯爵は、いつものようにエリーザベトの容姿を褒め称えると、彼女の手の甲に接吻した。
「それで、わざわざわたしに会いたいが故に、領地から遠路はるばる来たというの?」
「はい、陛下。それもありますが、我が領地である問題が起きているのです。」
「ある問題、というと?」
エリーザベトは伯爵の言葉を聞くと、眉間に皺を寄せた。
「ええ。最近異端審問官の横暴が酷過ぎると、わたしの元に領民達からの苦情が殺到しているのです。」
「彼らは異常よ。小さな子供が魔力を持っているとわかれば、徹底的にその魔力を封じ込めようとする。彼らの雇い主が異常者だから仕方がない事だけど。」
エリーザベトは開いていた扇を閉じると、伯爵を見た。
「それで、貴方はわたしに何をして欲しいの?」
「異端審問所の閉鎖を、教会に頼んで欲しいのです。わたくしの力だけでは、彼らを抑えることは出来ません。」
「・・わかったわ。すぐに教会宛に手紙を書きましょう。」
エリーザベトがそう言ってソファから立ち上がると、ノックもなしにエリーザベトの妹・ヴィクトリアが美しい金髪を波打たせながら執務室へと入って来た。
「お姉様、アメリアが居なくなったというのは本当なの?」
「ヴィッキー、今わたしは大切な話をしているところなの。後にして頂戴。」
「お姉様、実の娘が居なくなったっていうのに、どうしてそんなに薄情な態度を・・」
「ヴィクトリア!」
エリーザベトの凛とした冷たい声が、執務室の空気を微かに震わせた。
「ごめんなさい、お姉様。また後で伺う事にするわ。」
「そうして頂戴、ヴィッキー。伯爵、異端審問所の事についてはわたしに全て任せて頂戴。」
「わかりました、陛下。ところで陛下とレオン様がただならぬ関係だという噂が宮廷内に流れておりますが・・」
「噂は事実よ。伯爵、わたしの事は諦めてくださらないかしら?」
「え、ええ・・そう致します。」
伯爵が落胆した様子でエリーザベトの執務室から出て行った後、彼と入れ違いにヴィクトリアが執務室に入って来た。
「お姉様、先程は場を弁えない態度を取ってしまってごめんなさい。」
「いいえ、わたしの方こそ貴方に厳しくしてしまって悪かったわ。でもヴィッキー、あの子は、表向きではわたしの“妹”となっているの。だから人前で、あの子の事をわたしの娘だと言わないで。」
「わかったわ、お姉様。あのね、お姉様にお話ししたいことがあるの。」
「何かしら?」
「レオンの部下から先ほど聞いたのだけれど・・わたしの可愛い天使が・・マリエッテがあちら側に居るって・・もしそれが本当だとしたら、わたし・・」
「ヴィッキー、はやまった行動を取っては駄目よ。その情報は貴方をおびき出す罠かもしれないわ。」
「でも、たとえその情報が嘘だとしても、わたしはあの子に会いたいのよ、姉様!」
そう言ってヴィクトリアは、美しい深紫の瞳を涙で潤ませた。
作品の目次は
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