イラスト素材提供サイト:薔薇素材Mako's様
夜が明け、アメリアは自分に与えられた新選組の屯所内にある一室で、朝日の光を受けて目を覚ました。
「ん~、気持ちいい!」
アメリアがそう叫びながら思い切り手足を伸ばすと、部屋に雪華が入って来た。
「アメリアさん、土方さんがお呼びです。」
「解りました、すぐに行きます。」
彼女が雪華と共に幹部隊士達が集まる広間へと向かうと、そこでは歳三と丸眼鏡を掛けた男が何やら話をしていた。
「あの・・」
「アメリア、昨夜はよく眠れたか?」
「はい。あの、そちらの方はどなたですか?」
「あぁ、君とは初対面でしたね。初めまして、わたしは新選組総長の、山南敬助(やまなみけいすけ)と申します。貴方が、アメリアさんですね?」
「はい・・あの、これからお世話になります。」
「君の処遇について昨夜局長と副長と共に話し合いましたが、貴方は副長である土方さんの小姓に就くことに決まりました。雪華君、新人のアメリアさんに色々と仕事を教えてあげてくださいね。」
「はい、解りました。アメリアさん、これから宜しくお願いしますね。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
アメリアはそう言うと、雪華に頭を下げた。
こうして、彼女は歳三の小姓として新選組で働くことになった。
小姓といっても、仕事は主に掃除や洗濯、炊事などの家事全般であり、たまに歳三が幕府の要人との会合に出席するときは護衛として彼と会合に出席するくらいのものだった。
「アメリアさんは、お料理がお上手なのですね。今朝の朝餉、隊士の皆さんが嬉しそうに食べていましたよ。」
「料理や裁縫といった家事は、全て祖母から教えて貰いました。わたしは、母ではなく祖母に育てられましたから。」
「まぁ、そうなのですか。わたしも、祖母に育てられました。でもその祖母は、数年前に病死してしまいました。」
「何だかわたし達、似ていますね。」
「ええ。アメリアさんのお母様は、どのような方なのですか?」
「母は・・わたしにとって恐ろしい人です。国民達には慕われているけれど、母は国民達に全ての愛情を注ぎ、わたしが熱を出しても気にも掛けない人でした。」
アメリアはそう言って口を噤(つぐ)むと、溜息を吐いた。
「嫌な事を聞いてしまいましたね、ごめんなさい。」
「いいえ。それよりも雪華さんは、何故新選組にいらしたのですか?」
「わたしも、貴方と似たような境遇で育ちました。数年前に祖母が病死した時、祖母はわたしの出生に纏わる物を渡してくれました。」
「貴方の出生に纏わる物?」
「はい、これです。」
雪華はそう言って着物の衿元を寛げると、首に提げている指輪をアメリアに見せた。
それは、ダイヤモンドが周りに鏤められたルビーの指輪だった。
「祖母が臨終の際にこれをわたしに手渡し、死んだとされている実母が生きている事を彼女は教えてくれました。わたしはこの指輪を手掛かりに、実母の事を調べようと生まれ育った村から出て京に来た時、運悪く柄の悪い連中に絡まれてしまって、土方さんに助けられて彼の小姓として新選組で暮らすことになったんです。」
「そうだったのですか。」
アメリアはそう言ってルビーの指輪を見た途端、自分の叔母が雪華と同じ指輪を持っていることを思い出した。
「アメリアさん、どうかなさいましたか?」
「いいえ・・その指輪と同じ物を持っている人をわたし知っているんです。」
「その人とは、誰なのですか?」
「ヴィッキー叔母様・・わたしの母方の叔母にあたる、ヴィクトリア叔母様です。」
アメリアがそう言って雪華の方を見ると、彼は驚愕の表情を浮かべながら指輪を握り締めていた。
作品の目次は
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