「本当にわたしに似ているわね。まるで鏡に映しているかのようだわ。」
歳三の顔を見た異世界の女王―エリーザベトはそう言うと、自分の傍で控えている金髪紅眼の男の方へと向き直った。
「レオン、彼と二人きりで話したい事があるの。お前は席を外しなさい。」
「お言葉ですが、陛下・・」
「わたしの言う事が聞けないの?」
冷たい光を湛えた紫紺の瞳でエリーザベトが男を睨みつけると、彼はそのまま部屋から出て行った。
「俺と二人きりで話したい事とは何だ、女王様?」
「娘がそちらでお世話になっているようね。アメリアは少し世間知らずなところがあるけれど、己の立場を弁えた子だから、決してそちらにご迷惑をおかけするような事はしないと思うわ。」
エリーザベトの言葉は、自分の娘の事でありながらも、何処か事務的で冷たいものだった。
(アメリアが母親ら逃げ出して来たというのは、嘘じゃねぇな・・)
歳三の脳裏に、母親から逃げて来たと言っていたアメリアの今にも泣きだしそうな顔が浮かんだ。
彼女は実の母親からどんな扱いを受けて育ったのだろうか。
そんな事を歳三が考えていると、扉が軽くノックされた後、金髪紫眼の女性が部屋に入って来た。
「姉様、この方はどなたなの?」
「ヴィッキー、用事があるのならノックくらいなさいな。」
「したわよ。姉様が聞こえなかっただけじゃないの。」
そうエリーザベトに言いながら、女性はチラリと歳三の方を見た。
歳三は彼女が自分の恋人と瓜二つの容姿をしている事に気づいた。
「こちらはわたしの妹の、ヴィクトリアよ。ヴィッキー、こちらの方はトシゾウ=ヒジカタ様よ。」
「初めまして、トシゾウ様、ヴィクトリアです。」
「こちらこそ初めまして、ヴィクトリア様。」
「そんな他人行儀な呼び方はお止しになって。ヴィッキーと呼んでくださいな。」
ヴィクトリアがそう言って笑った時、彼女が右手薬指に嵌めている指輪が、恋人が身に付けている指輪と同じ物である事に気づいた。
「その指輪・・」
「ああ、これ?昔恋人から贈られた物なの。」
「そうなのですか。実はその指輪と同じような物を、見たことがあるんです。」
「それは、本当なの?」
「はい。実はわたしの小姓は、貴方と瓜二つの顔をしているんです。」
「その子の名前は?何というの?」
「雪華といいます。ですが昔、彼は祖母から別の名前で呼ばれていたと、わたしに以前話してくれました。」
歳三がそう言ってヴィクトリアの方を見ると、彼女は大粒の涙を流していた。
「すいません、俺・・」
「いいの、謝らないで。ねぇトシゾウ様、これからわたくしの部屋でお茶でも頂かないこと?」
「は、はい・・」
「姉様、暫く彼をお借りするわね。」
「わたしに断りを入れなくても結構よ、ヴィッキー。」
エリーザベトがそう言って呆れたような顔をして妹の方を見た。
「それじゃぁ行きましょうか、トシゾウ様。」
ヴィクトリアは歳三の腕に自分のそれを絡ませると、そのまま姉の部屋から出て行った。
作品の目次は
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