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JEWEL

2017.12.09
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斎藤と共に奉行所へと向かった千は、そこで千尋の面会を南田に求めたが、彼はそれを断固として拒否した。

「申し訳ないが、今あの者とは会わせる訳にはいかん。」
「何故です?明確な理由をおっしゃってください。ただ一方的に面会できないと言われるだけでは、納得できません!」
そう言って南田に抗議した千だったが、彼は千尋との面会は認めないとの一点張りで、結局千達は諦めて奉行所を後にした。
「恐らく町方は、早く荻野を殺しの下手人と決めつけて事件を解決させたいのだろう。」
「荻野さんは、ただ殺人現場で被害者の遺体を発見しただけですよね?遺体の第一発見者が疑われるというのはわかりますが、被害者の殺害時刻に荻野さんを目撃したという話だけで、荻野さんを犯人にするのは無理があるんじゃないんですか?被害者が死ぬ間際に荻野さんの髪を毟(むし)り取ったり、荻野さんの顔を爪で引っ掻いて、被害者の爪に皮膚片がついていたという物的証拠が殆どないのに・・」
奉行所からの帰り道、早めの昼餉を食べに蕎麦屋へと入った千は、そう言って蕎麦を一口啜ると、斎藤が何やら驚いた顔をしながら自分を見ている事に気づいた。
「どうされましたか、斎藤さん?」
「いや、やけに捜査について色々と知っているのだなと思っただけだ。」
母親が好きな二時間サスペンスドラマや推理小説の影響を受け、自分なりに持論を斎藤に話しただけだったのだが、千はそれを斎藤に話すのを躊躇った。
「いえ、随分昔に読んだ本の中で、そういった題材の小説があったので・・荻野さんの事件が、まさしくその小説で起きた事件と同じ状況だったから、自分なりに今回の事件を推理してみただけです。」
「そうか。そういえば被害者はかつて荻野が養母だった置屋の女将の実の娘だったのだが、母親とは仲が悪かった。母親が荻野ばかりを可愛がり、その上荻野は自分よりも所作や歌舞音曲も完璧で、もし荻野が女だったら自分の養女に迎えて置屋を継がせたかったと、一度母親がそう零しているのを被害者は聞いて激昂し、母親と激しく口論した事があったらしい。」
「そうですか・・確か花街は置屋の女将はその置屋の娘が継ぐしきたりなんですよね?荻野さんが被害者に嫉妬されていて、その被害者が殺されてわざと荻野さんが疑われるように仕向けた人が居るのかもしれませんね。そう・・例えば、荻野さんを蹴落として荻野さんの代わりに花街の女王として君臨しようと企んでいる“誰か”です。斎藤さん、副長室で土方さんと何か内緒話をしていましたよね?もしかしてその“誰か”さんの事、知っているんじゃないんですか?」
千からそう鋭く指摘され、斎藤は思わず舌を巻いた。
「鋭いな。まぁ、お前は信用できるし、話しておくか・・」
斎藤はそう言うと笑った。
「荻野が奉行所で今回の殺しの下手人として捕まったのと同時に、荻野が世話になっていた置屋の芸妓が一人、姿を消している。その芸妓の名は、鈴江。」
「鈴江・・何処かで聞いた事があります、その名前。」
「何か知っているのか?」
「ええ。詳しい話は屯所に戻ってからお話しします。」
千は先程から自分達の事を時折ちらちらと見ている男の姿に気づくと、そう言って斎藤と共に蕎麦屋から出た。
「千、これから俺が言う事に従えるか?」
「何ですか、急にそんな事を言って?」
「先ほど俺達の後を尾けていた者がすぐ近くに居る。いいか千、何かあったら屯所まで俺を置いて走れ、決して後ろを振り向くな。」
「そんな事、出来ません!」
「敵の事を副長に報告できるのはお前だけだ。いざ敵と戦う事になったら、お前と俺が敵に倒されたらどうなると思う?」
斎藤の言葉を聞いた千は、真っ直ぐな目で彼を見た。
「わかりました。」
「俺はすぐにお前に追いつく。さぁ、早く行け!」

斎藤に向かって大きく頷くと、千は彼に背を向けて走り出した。

その直後、激しい剣戟の音が背後から聞こえてきたが、屯所に戻るまで千は一度も後ろを振り向くことはなかった。

(斎藤さん、どうぞご無事で!)


この作品の目次はコチラです。

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最終更新日  2017.12.09 16:54:13
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