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JEWEL

2018.09.12
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高熱で意識を失った千尋は、奉行所からほど近い町医者の下へと運ばれた。

「今夜が峠ですな。」
「何だと!?」
「こればかりは本人の生命力に頼るしかありまへんな。」

千尋が目を覚ますと、そこは鬱蒼と茂った森の中だった。
彼が森の奥へと進むと、森の中が突然開け、石造りの城塞のような建物が現れた。

(ここは、一体・・)

千尋が扉の前に立つと、それは自然に開いた。
建物の中へと奥へと進むと、そこには薄暗い神殿のようなものが現れた。

「来たのか。」
闇の中から突如声が聞こえ、千尋が振り向くと、そこには黒衣を纏った仮面をつけた男が立っていた。
「貴方は何者です?」
「ここは冥府への入り口、そしてわたしはタナトス―死だ。」
そう言った男は、優雅な手つきで被っていた仮面を外すと、そこから端正な美貌が現れた。
「土方さん、何故貴方が・・」
「ほう、わたしは其方の想い人に似ているのか。」
男―タナトスは、そう言うと千尋の唇を荒々しく塞いだ。
「何をなさいます!?」
「お前は我が妻となるのだ。ここから出ることは許されぬ。」
「嫌です、わたしはまだ死にたくありません!わたしはあの人のお傍に居たいのです!」
「それは出来ぬ。お前の命と引き換えに、お前は我に何を与えられる?」
タナトスは紫紺の双眸で千尋を見つめ、そう彼に問うた。
その問いに、千尋は黙って首を振ることしか出来なかった。
「其方の命を助ける代りに、其方の想い人の命を貰おうか。」
「・・わたくしに、考えがあります。」
千尋はタナトスの耳元に何かを囁いた。
「そうか・・其方はそれほど、あの男を想っているのか・・」
タナトスはそう呟くと、大声で笑った。
「よかろう。だが、二度目はないぞ。」
「命を助けて頂き、有難うございます。」
千尋がタナトスに一礼すると、彼は再び千尋の唇を塞いだ。
「さぁ、現世へと戻るがいい。」
タナトスに神殿の出口まで見送られ、千は森の中を抜けて現世へと戻っていった。
「荻野、気が付いたか?」
「土方さん・・ここは、一体・・」
千尋が目を開けると、彼は副長室に敷かれた布団の中だった。
「お前が熱を出して意識を失ったと奉行所から文が届いた。」
「そうですか・・土方さん、わたしは誰も殺してはいません。」
「わかっている。俺がお前ぇを屯所へと連れ帰った後、奉行所に殺しの下手人が自首してきた。」
「それは、本当なのですか?」
「ああ。鈴江とかいう芸妓だ。」
自分に殺しの濡れ衣を着せようとした鈴江が自首するなど、千尋には信じられない事だった。
「暫く休め。」
「わかりました・・土方さん、ご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありません。」
「謝るな。何かあれば山崎を呼べ。」

副長室から出て行った歳三の背中を見送った後、千尋はゆっくりと目を閉じて眠った。

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最終更新日  2018.09.12 17:25:48
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