「薄井さん、どうして貴方がここに?沖田さんは何処です?」
「久しぶりだね、千君。君達には我々とある場所へと来て貰おう。」
有無を言わさず、薄井は千の背中に銃を突きつけ、目隠しをされてある場所へと彼は総司と共に連れて行かれた。
「もう目隠しを取ってもいいぞ。」
「はい、薄井様。」
部下らしき男の声が聞こえ、目隠しを外された千は、自分が船底に居ることに気づいた。
「ここは何処ですか?」
「ここは英国海軍の船だ。わたしはある人物から依頼を受け、君と沖田さんをここまで連れて行くように命じられた。あぁ、もう来たようだ。」
コツン、という靴音が響き、薄井達の前に軍服姿の男が現れた。
「マッケンジー大尉、二人をお連れしました。」
「ご苦労。この子が、未来が見える少年なのかね?」
マッケンジー大尉の金の瞳が、怯える千の姿を捉えた。
「ええ。必ずや閣下のお力になれる事でしょう。」
「その少年とあちらのご婦人を船室へ案内しなさい。彼らは捕虜ではない、ウスイ。客人は客人として丁重にもてなさねば。」
マッケンジー大尉によって案内された船室は、寝心地が良いベッドが二台置かれていた。
「沖田さん、大丈夫ですか?」
「ええ。それよりも千君、あの人達は一体何者なんでしょうね?」
「さぁ・・ですが、わたし達の居場所を土方さん達に早く知らせないと・・」
「そうしたいのはやまやまですが、連絡手段がありませんからね。」
千はそう言うと、薄井達によって屯所から連れ出された時に隠し持っていたスマートフォンを懐から取り出した。
液晶画面には、当然ながら“圏外”と表示されていた。
「これ、遠くの人に連絡できる魔法の箱ですよね?」
「ええ。ですがこれを使うには電波が必要です。ここでは電気自体存在しないので使えませんね。」
「そうですか、それは残念ですね。」
二人がそんな話をしていると、廊下の方から船室へと近づいて来る足音に千は気づき、素早くスマホを懐に隠し、ベッドに横になった。
『食事を持って来た。』
『有難うございます。そちらへ置いておいてください。』
マッケンジー大尉と同じ軍服姿の男達はジロジロと千と総司を見た後、船室から出て行った。
(何とかして、ここから脱出しないと!)
一方、襲撃を受けた屯所では、山崎が負傷者の治療に当たっていた。
「山崎、千と総司を見なかったか?」
「いいえ。先ほど斎藤さんと一緒に二人を探しましたが、何処にも居ませんでした。」
「そうか。」
「副長、総司の部屋にこのような文が置かれていました。」
「寄越せ、斎藤。」
斎藤から謎の文を受け取った歳三の眉間の皺が徐々に深くなっていった。
『お前達の大切な宝は預かった。返して欲しくばこの場所まで来い。』
「副長?」
「斎藤、後はお前に任せる。近藤さんに俺は暫く留守にすると伝えろ。」
「承知しました。」
夜明け前、歳三は屯所から出てある場所へと向かった。
そこはかつて、新選組が屯所として使っていた八木邸の前だった。
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