※BGMと共にお楽しみください。
歳三は、刺客の男から渡された文の内容を思い出した。
そこには、将軍暗殺と英国海軍が将軍暗殺に乗じて日本を侵略するという恐ろしい計画が書かれていた。
「さるお方とは、誰だ?」
「マッケンジーというお方だ・・その方は今、大坂近くの港にいる・・」
刺客の男は歳三にマッケンジーの事を話した後、こと切れた。
「副長、ご無事ですか?」
馬のいななきが闇の中から聞こえたかと思うと、白馬に跨った斎藤が歳三の前に現れた。
「斎藤、馬を貸せ。総司達の居場所がわかった。俺はこれから大坂へ向かう。」
「お気をつけて。」
「この文を、近藤さんに渡してくれ。」
「はい、必ず。」
斎藤は馬から降りると、歳三から文を受け取り屯所へと戻った。
(待っていろ総司、必ず助けてやる!)
一方、英国海軍の船に軟禁されている総司と千は、宛がわれた船室の中で互いに黙り込み、暗い水面を窓から眺めていた。
「ねぇ千君、わたし達はこれからどうなるんでしょうね?」
「それは僕達にもわかりません。ですが、マッケンジーさんは僕達に危害を加えないと約束してくれました。」
「ここに居る限り、わたし達の身の安全は保障されるという事ですね?」
「ええ。」
「よかった。」
総司がそう言って笑おうとした時、彼は激しく咳込んだ。
「沖田さん、大丈夫ですか?」
そう言って千は、総司の白い掌が血で赤く染まっている事に気づいた。
「沖田さん・・」
総司の結核は現代で完治した筈ではなかったのか。
「わたしの寿命は、神様が決めてしまっているんですね。」
「そんな・・」
「わたしはもし明日死んでも悔いはありません。だって、近藤さんや土方さんに会えて一緒に武士として生きられたんですもの。」
「沖田さん・・」
「少し横になれば治まりますから、君はもうお休みなさい。」
「人を呼んできます。」
苦しむ総司を放っておけず千が船室を飛び出すと、白衣姿の兵士がたまたま彼の前を通りかかった。
『お願いします、助けてください!』
『どうしたのかね?』
『同室の者が突然血を吐いて苦しんでいるんです。』
『今すぐ船室へ案内してくれ。』
千が白衣姿の兵士とともに総司が居る船室へと戻ると、そこには床で苦しそうに息をしている総司の姿があった。
「沖田さん!」
「千君、土方さんの事を頼みます。」
「まだ、逝かないでください!貴方には、まだこの世での役目が残されているんです!」
「千君・・」
総司は震える手を千に向かって伸ばすと、千はしっかりとその手を握った。
“土方さん”
(総司?)
歳三は一瞬総司に呼ばれたような気がして闇の中を見つめていると、一匹の蛍が歳三の前に現れた。
歳三がその蛍の光を道標に進むと、やがて彼は潮の匂いを感じた。
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