黒執事・薔薇王の葬列クロスオーバー中世パラレル小説です。
ディズニー映画「ノートルダムの鐘」風のパラレルですが、一部キャラ設定や時代設定が違っていたりしますが、それでもいいよという方のみお読みください。
「坊ちゃん、お帰りなさい。」
「お帰りなさいですだ!」
シエルとセバスチャンが広場から帰宅すると、ファントムハイヴ家の使用人達が一斉に二人を出迎えた。
「メイリン、バルドー、フィニ、一体何があったのです?」
「セバスチャン、俺達は何もしてねぇぜ!」
「そ、そうですよ!」
そう言ったバルドーとフィニの目は、少し泳いでいた。
セバスチャンが厨房に入ると、案の定そこは足の踏み場がない程散らかっていた。
「バルドー、貴方一体何をしたんですか?」
「い、いや、ちょっと、なあ・・」
バルドーがまた例の“創作料理”を作ろうとしたのかと睨んだセバスチャンは、大きく溜息を吐いた。
「坊ちゃん、本日の夕食が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。」
「別に気になどしていない。それよりもセバスチャン、例の事はわかったのか?」
「はい。バッキンガム判事は、あの若さで異例の出世をしたのは、ある事を徹底的に行ったからだそうですよ。」
「ある事だと?」
「ジプシー狩りですよ。」
「バッキンガム判事は何故ジプシーを憎むんだ?ジプシーに親でも殺されたのか?」
「殺されはしませんでしたが、昔バッキンガム公爵家はジプシーの金貸しから財産の大半を騙し取られたとか。」
「坊主憎ければ何とやらか・・それよりも、あのジプシーの踊り子はどうなった?」
「未だに行方はわかりません。ですが、彼女の出自に関する面白い事実が判りました。」
「面白い事実だと?」
「えぇ・・」
セバスチャンは口元に笑みを浮かべると、シエルの耳元に何かを囁いた。
「そうか・・」
「失礼いたします、坊ちゃん。お客様がいらっしゃっております。」
「客だと、こんな時間にか?」
「えぇ、それが、どうしても坊ちゃまにお会いしたいと・・」
「失礼致します、ファントムハイヴ伯爵。夜分遅くに突然訪ねてしまって申し訳ありません。」
輝くようなブロンドの髪をなびかせながら、一人の貴婦人がダイニングルームへと入ってきた。
「わたくしはキャサリン=ウッドウィルと申します。」
「このようなお時間に、バッキンガム判事の奥様がどのようなご用件でこちらにいらっしゃったのですか?」
「それは、使用人のあなたには申し上げられませんわ。」
何処か有無を言わさぬ口調で、キャサリンはセバスチャンを睨みつけながらそう言った。
彼女の蒼い瞳は、“使用人の分際ででしゃばるな”と、セバスチャンを静かに威圧しているかのようだった。
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