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コチラからお借りいたしました。
「薔薇王の葬列」二次創作小説です。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
二次創作が嫌いな方は読まないでください。
リチャードが剣舞を舞っている時、金色の髪を揺らしながら自分の方へと走って来る男の姿を捉えると、彼は自分に抱きついて来た。
「リチャード、また君と会えるって僕は信じていたよ!」
「お前、あの時の・・」
リチャードがそう言って男の顔を見ると、彼はあの時泉で出逢った男だった。
「王様、どうか席にお戻りください。」
急に席を立った王を慌てて呼び戻す為、内侍府長・チョジョンは慌ててヘンリーの元へ駆け寄った。
リチャードは今自分に抱きついている男がこの国の王であるという事実を知り、そっとヘンリーから離れた。
「王様、これは失礼を致しました。どうぞわたくしなどには構わず、お席にお戻りくださいませ。」
「嫌だよ、リチャード、君と離れたくないんだ!」
「王様、どうか・・」
「何を騒いでいるのです?」
中々リチャードから離れようとしないヘンリーの様子を見て痺れを切らした王妃が数人の女官達を引き連れて夫の元へと駆け寄った。
「このような妓生に構わず、席にお戻りください!そうしなければ宴の進行が滞ります。」
「リチャード、リチャード・・」
王妃はリチャードをチラッと一瞥すると、夫の腕を掴んで無理矢理自分の方へと引き寄せた。
「わたくしに恥をかかせるおつもりですか!?」
王妃はそう叫ぶと、躊躇いなく王の頬を平手で打った。
乾いた音が中庭に響き、ヘンリーは打たれた頬の痛みで涙ぐんだ。
「母上、おやめください。」
慌ててエドワードが王妃を止めに入り、王妃は憤然とした様子で自分の席へと戻った。
「何をしておる、宴を続けよ!」
世子の言葉に恐怖で固まっていた楽士達が、賑やかな楽の音を響かせた。
リチャードは中断していた剣舞を再開し、なるべく王の方を見ないようにして剣舞を終えた。
「いやぁ、見事な剣舞だった。其方、リチャードと申したな?褒美を遣わすから、こちらへ来い。」
「はい・・」
エドワードに呼ばれ、リチャードは彼の前で頭を垂れた。
「おもてを上げよ。」
リチャードがゆっくりと顔を上げると、エドワードは困惑と驚愕が入り混じった表情を浮かべながらリチャードを見ていた。
「其方、あの時の・・」
エドワードがそう叫びそうになった時、リチャードは彼の唇に人差し指を押し当てた。
「いつぞやは世子様とは知らず、ご無礼を。後で存分にお叱りを受けますから、何卒わたくしの事はお許しになってくださいませ。」
(おのれ、妓生の分際で俺に取引を持ち掛けるつもりか?だが、可愛いから許してやる!)
「何か欲しい物はあるなら申せ、金銀財宝全てを其方に与えてやろう!」
「いいえ、そのような物は頂けません。どうかわたくしの事をお忘れ頂ければ・・」
「何を言う、そなたのような美妓を簡単に忘れられるものか!そうでしょう、母上!」
「折角の世子様の計らいです、有り難く褒美を受け取りなさい、リチャードよ。」
「はい、王妃様・・」
威厳に満ちたマーガレットは、女官達に命じてリチャードに褒美を渡した。
それは、美しい宝石の髪飾りだった。
「其方の黒髪にその髪飾りはさぞや映える事でしょう。」
「有り難き幸せにございます、王妃様。」
リチャードがそう言ってマーガレットから賜った髪飾りを付けると、恭しく彼女に向かって頭を下げた後、仲間の妓生達の元へと戻った。
背後からヘンリーの強い視線を感じたが、リチャードは宴が終わるまで一度も彼の方を見ようとしなかった。
(もう二度と、会う事はないだろう。)
彼はこの国の王、この国を照らす太陽。
自分は妓生、卑しい賤民。
彼とは、一生結ばれぬ仲なのだ。
「リチャード様、帰りましょう。」
「ああ。」
ケイツビーと共に王宮から立ち去ろうとした時、リチャードは突然数人の兵士達に囲まれた。
「何ですか?わたくしに何か用ですか?」
「王様がお前をお呼びだ。我々と共に来るように。」
有無を言わさずリチャードの細腕を兵士達は掴み、そのまま王の寝所へとリチャードを連れて行った。
「リチャード様!」
「ケイツビー、義母上には俺は無事だと伝えろ!」
ケイツビーはリチャードの元へと駆け寄ろうとしたが、兵士達に阻まれ、非情にも目の前で閉まる門を前に立ち尽くす事しか出来なかった。
「王様、例の妓生をお連れ致しました。」
「ご苦労だった。皆、下がってよい。」
篝火が、嬉々とした表情を浮かべながら自分の元へとやって来るヘンリーの顔を照らした。
「リチャード、漸く二人きりになれたね。」
「王様・・」
「そんな呼び方は止めてくれ、名前で呼んでくれ。」
ヘンリーはそう言うと、リチャードの頬を優しく撫でた。
「わたしをどうなさるおつもりですか?」
「僕は、君を今抱きたいんだ。」
ヘンリーの言葉に、リチャードは微かにその身を震わせた。
「わたしは、貴方に抱かれたくありません。わたしは、出来損ないの身体なのです。」
「出来損ないの、身体?」
「それを今から、お見せ致します。」
リチャードはそう言うと、纏っていたチマとチョゴリを脱ぎ去り、下着姿となった。
リチャードの足元で、乾いた音と共に紫と薄紅色の花が落ちた。
下着を全て脱ぎ去り、一糸纏わぬ姿でリチャードはヘンリーの前に立った。
その身体には、男と女、それぞれを象徴するものがあった。
「わたしは、この身体の所為で親に捨てられ、妓生として生きて参りました。わたしの身体は前世の罪故に呪われたもの。この世の太陽である王様が触れることなど・・」
「どうして触れてはいけないの?こんなに綺麗なのに。」
ヘンリーはそう言うと、そっとリチャードを自分の方へと抱き寄せた。
「僕は今まで、孤独の闇の中に居た。妻と子を得ても、その闇から抜け出せない・・そんな中、僕は君と出会ったんだ。その時僕の中にあった暗闇に、
君という一筋の光が射した。」
「・・ヘンリー・・」
「リチャード、僕は君が男でも女でもなくても、君さえ居てくれればそれでいい。だから、ずっと僕の傍に居て・・」
涙を流すリチャードを見たヘンリーは、そっとその涙を優しく舐め取り、彼の柔らかな唇を塞いだ。
ヘンリーが彼の女の部分に挿入すると、彼は痛みに呻いたが、やがてそれは快楽の喘ぎへと変わった。
互いの身に宿した情欲の炎が燻るまで、ヘンリーとリチャードは飢えた獣のように互いの身体を貪り合った。
絶頂に達した時、リチャードはヘンリーの肩口に深い歯形を残して意識を手放した。
「妓楼の者にこの文を届けてくれ。」
部屋の外で自分達の様子を窺っていたチョジョンにヘンリーがそう言って文を渡すと、彼は暗闇の中へと消えていった。
その文には、リチャードを王の側室として宮廷に迎えるという旨が書かれていた。
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