「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。
作者・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。
ノートパソコンの電源を入れたアルフレートは、すぐさま検索エンジンで患者の名前を検索窓に打ち込んだ。
すると、膨大な量の検索結果がヒットした。
そこには、『マイヤーリンク事件』や『うたかたの恋』といった関連キーワードが多く挙がっていた。
ひとつずつクリックしていくと時間が掛かるので、アルフレートはハプスブルク家の家系図を載せているサイトへアクセスした。
そこには、オーストリア=ハンガリー帝国を統治したフランツ=カール=ヨーゼフとその家族の紹介や肖像画―特に彼の妻であり欧州一の美女と謳われたエリザベートなどが多く載せられていた。
マウスをスクロールしながら、アルフレートはルドルフの名前をクリックした。
そのページには『謎の情死を遂げた悲劇の皇太子』という見出しの下に、幼少時代のルドルフの肖像画や、葬儀の際のルドルフ皇太子の写真などが載っていた。
その写真を見たアルフレートは、マウスを動かす手を止めた。
そのページに表示された写真は、病院で見た青年と瓜二つだった。
アルフレートは椅子から立ち上がると、曽祖父の遺品が置いてある部屋に入った。
「ええと、この箱だったかな?」
古めかしい木箱についた埃を払ったアルフレートは、木箱の蓋を開けて曽祖父が生前つけていた日記を取り出した。
日記は、マイヤーリンク事件―ルドルフ皇太子が男爵令嬢・マリー=ヴェッツラと謎の情死を遂げた日から始まっていた。
『今日はルドルフ様を解放する日だ、失敗は許されない。』
(どういうことだ、ルドルフ様を解放する日? 解放って何から・・)
アルフレートが曽祖父の日記を読み進めようとした時、ノートパソコンの隣に置いていた携帯が鳴った。
「もしもし?」
『アルフレート、わたしだ。例の患者の事で君に話があるんだが・・』
「解りました、すぐに行きます。」
ノートパソコンの電源を消したアルフレートは、携帯とショルダーバッグを掴んで部屋から出て病院へとタクシーで向かった。
「アルフレート、こちらに掛け給え。」
「はい。」
理事長室にアルフレートが入ると、理事長のハワードは窓際の椅子に座って獲物を狙う猛禽類のような目で彼を睨んでいた。
「お話とは何でしょうか、理事長?」
「君が処置した患者だが・・容態は安定しているようだし、明日にでも退院させることにした。」
「待ってください、彼は精神的に不安定で・・」
「いいかねアルフレート、病院は慈善事業でやっているんじゃないんだ。うちの経営が苦しいことくらい、君も知っているだろう?」
「それは、承知しております。」
「さてと、その患者の今後の事だが・・君が彼の身元引受人(みもとひきうけにん)となり給え。」
「それは、一体どういう事でしょうか?」
「君が処置した患者だ、君が責任を持ち給え。話は以上だ。」
晴天の霹靂(へきれき)とは、まさにこの事だ―アルフレートはそう思いながら、ルドルフの病室のドアをノックした。
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