「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。
作者・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。
「狭いな、本当にこんな所にお前は住んでいるのか?」
病院から地下鉄で数分移動し、アルフレートがルドルフを自分の住む部屋へと案内すると、彼の口から開口一番出た言葉に、アルフレートの笑みが少し引き攣った。
無理もない、ルドルフはついこの前まで華やかな宮殿で暮らしていた皇太子だ。
彼が住んでいる部屋と比べれば、この部屋は厩のようなものだ。
「何か飲み物はいかがですか?」
「要らない。それよりも、腹が減った。」
「解りました。では何か出前を頼みますので、そちらに掛けてください。」
アルフレートが近くのイタリアン料理店にピザの出前を電話で頼んでいると、ルドルフはソファの前に座り、テレビをつけていた。
「奇妙な箱だな。誰かが中で動かしているのか?」
「いいえ。それよりもルドルフ様、今後の事ですが・・」
「お前とこの部屋に住むのだろう?わたしの部屋は何処だ、アルフレート?」
「今から案内致します。」
リビングを出たアルフレートは、ルドルフを曽祖父が使っていた部屋へと案内した。
「ここは誰の部屋だ?」
「曽祖父の部屋です。今は誰も使っていませんが、毎日掃除していますから綺麗ですよ。」
「趣味のいい部屋だな、気に入った。」
ルドルフがそう言って曽祖父が選んだ家具や調度品を見ていると、玄関のチャイムが鳴った。
「わたしが出ます。」
注文したピザが届き、代金と共にそれを受け取ったアルフレートがキッチンでサラダを作っていると、曽祖父の部屋から戻ったルドルフが怪訝そうな顔をしてピザの箱を見ていた。
「それは何だ?」
「夕飯です。」
「美味そうだな。」
箱の蓋を開けたルドルフは、そう言ってそこに入っているピザを一切れ食べた。
「いかがですか?」
「悪くない。お前はいつもこういう物を食べているのか?」
「一人暮らしですので、大抵食事は出前か病院のカフェテリアで済ませます。」
「料理は出来るのか?」
「はい。事情があって、曽祖父と二人暮らしでしたから、子供の頃から家事はわたしの担当でした。」
アルフレートは手早くサラダを作ると、それを皿に盛った。
「ルドルフ様、わたしが留守にしている間は、家事をしてください。」
「料理は出来ないぞ。」
「そうですか。では洗濯をお願い致します。後で洗濯機の使い方を教えますね。」
「わかった。」
何だか上手いようにアルフレートのペースに乗せられているような気がして、ルドルフは少し不機嫌そうに顔を顰めた。
「使い方が解らない時は説明書を読めばいいんだな?」
「ええ、そうです。」
「解った。アルフレート、浴室は何処だ?」
「浴室はあちらです。」
アルフレートがルドルフの後に続いて浴室に入ろうとした時、ルドルフはムッとした顔を彼に向けた。
「シャワーの使い方は知っている。」
「解りました、では終わったらリビングに来てくださいね。」
ルドルフはアルフレートの鼻先で浴室のドアを乱暴に閉めた。
(完全にあいつのペースに乗せられているな・・)
ルドルフがそう思いながら服を脱いで裸になり、浴槽に入ろうとした時、隅の方にゴキブリが居たので、彼は思わず悲鳴を上げてしまった。
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