素材は
NEO HIMEISM 様からお借りしております。
「姉上、カバリュスの遺体を娼館に置いてよかったのでしょうか?」
「マダムが上手く処理をしてくれるだろう。客と娼婦との間に起きた揉め事なんて、マダムにとっては当たり前の事だからね。」
「しかし・・」
「マックス、お前は何も知らなかった・・いいね?」
「はい。」
「邪魔者は一人消したから、これからわたしは家には帰らずにあそこへ戻るとしよう。」
「娼館へ、ですか?一体、何の為に?」
「あそこは、貴族御用達の店さ。表では話せないような事を、安心して話せる場所という訳だ。」
「わかりました。」
「そんな不安そうな顔をするのは、おやめ。時期が来たら、家に戻って来るよ。」
アンジェリーナは不安がる弟の頬を撫でると、邸の前で彼と別れた。
(さてと、これからが勝負だ。)
「あら、お帰りなさい。あのお客様の処理は上手くやったわよ。」
「ありがとう、マダム。これから世話になるよ。」
「こちらこそよろしくね・・まぁ、昔に戻ったようなもんだからね。」
マダムはそう言って笑うと、紫煙をくゆらせた。
翌朝、カバリュスが失踪した事は、瞬く間に宮廷内に広まった。
「カバリュス様が失踪されたなんて、信じられませんわ。」
「奥様が可哀想・・」
「あいつは女の噂が絶えなかったから、どうせ痴情の縺れが何かで殺されでもしたんだろう。」
「あいつなら有り得るよな。」
カバリュス失踪について、女達と男達の反応はそれぞれ違った。
「何だか、こんなに反応が分かれるなんて、少し驚いたわ。」
「だがどちらも共通しているのは下種の勘繰り、下品な好奇心さ。」
「それはそうでしょうね。何せ失踪した場所が場所だけに・・」
フィリスとクリスティーネがそんな事を話しながら街を歩いていると、向こうの路地に何やら人だかりが出来ていた。
「何かしら?」
「行ってみよう。」
二人が野次馬を掻き分けながら歩いていると、丁度遺体を載せたと思われる担架を持った警官隊が彼らの前を通り過ぎた。
「何があったんですか?」
「昨夜失踪されたお貴族様が、川で見つかったんだと。」
近くを歩いていた老婆にクリスティーネがそう尋ねると、老婆は顔を顰(しか)めながら口と鼻を自分の顔と同じような皺だらけのハンカチで覆った。
「仏さんは、腸を魚に喰われていたようでね、見つけた奴は腰を抜かして小便を漏らしちまったんだと。」
「遺体を見つけた方の名前はわかりますか?」
「あぁ、わかるとも。イグノー酒店のナイルって奴さ。」
「ありがとうございます、お婆さん。」
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