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JEWEL

2019年12月14日
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「大変ご無沙汰しております、旦那様。」

そう言って沖田伯爵に向かって頭を下げた女を、沖田伯爵は冷たい目で睨みつけた。
「今更わたしに何の用だ?もうお宅とはとっくに縁が切れている筈だが?」
「それは承知の上で、こうして旦那様の元へ伺いました。」
「愛子に何かあったのか?」
「愛子は・・娘は突然わたし達の前から姿を消しました。」
「それで?わたしに愛子の消息を捜してくれるよう、わざわざ頼みに来たのか?」
「いいえ、こちらへ伺ったのは、旦那様に別の事で相談したかったからです。」
「別の事、だと?」
「はい。」
女はそっと、沖田伯爵の耳元で何かを囁いた。
「わかった、わたしの方でも色々と調べておこう。」
「有難うございます、旦那様。ではわたくしはこれで失礼いたします。」
女は伯爵の書斎から出て行くと、口元を歪めて笑った。
「ちょろいもんだね、華族様を騙すのは。」
「お嬢様、行ってらっしゃいませ。」
玄関ホールでキヌに見送られ、聡子は女学校へ向かう為に待たせてあった車に乗り込もうとした。
その時彼女は、見知らぬ女が邸の中から出て来るのを見た。
「お嬢様、早くなさらないと・・」
「わかっているわ、キヌ。行ってくるわね。」
「お気をつけて。」
キヌと抱擁を交わした聡子が車に乗り込むと、運転手の奥山が険しい表情を浮かべながら女を睨みつけていた。
「奥山、どうしたの?」
「いいえ、何でもありません、お嬢様。女学校まで、お送り致します。」
「ええ、お願いね。」
女は、車に乗った聡子を一瞥すると、そのまま沖田邸を後にした。
一方、聡子が通う女学校で英語教師を務めている大鳥圭介は、自分と向かい合わせに座って仏頂面を浮かべている客の方を見た。
「君がこんな所に来るなんて珍しいね、土方君。」
「別に、俺だってここに来たくて来た訳じゃねぇ。ただあんたに渡したい物があったから来ただけだ。」
「渡したい物?」
「ああ。」
歳三は鞄の中を開け、そこから一冊の手帳を取り出した。
「これ、あんたのだろう?」
「有難う。ねぇ土方君、中身は見ていないよね?」
「見る訳ねぇだろう、馬鹿。それじゃぁ、俺はもう帰るからな。見送りは要らねぇ。」
歳三はそう言って椅子から乱暴に立ち上がると、そのまま大鳥の部屋から出て行こうとした。
「大鳥先生、いらっしゃいますか?」
「沖田君、入りたまえ。」
「失礼いたします。」
ドアが開き、部屋の中に桜色の着物に深緑の袴姿の聡子が入って来た。
「あら、貴方は・・」
「土方君、沖田君とは知り合いなのかい?」
「知らねぇな。それじゃぁ大鳥さん、これで失礼するぜ。」
「ああ、また来てね、土方君。」
歳三が部屋から出て行くと、聡子は名残惜しそうな様子でその背中を見送った。
「大鳥先生、土方様とお知り合いなのですか?」
「ああ。土方君と僕は、大学の同期生でね。沖田君、土方君の事を知っているの?」
「ええ。」
聡子がそう言って大鳥の方を見た時、彼は聡子の髪に飾られている簪(かんざし)に気づいた。

「その簪、素敵だね。誰から贈られたの?」
「これは、子供の頃好きな人から贈られたんです。」

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最終更新日  2019年12月14日 00時00分18秒
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