※BGMと共にお楽しみください。
「進撃の巨人」の二次創作小説です。
作者様・出版者様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。
エルヴィンが「椿屋」に戻って来たのは、日が暮れた後だった。
「エルヴィン様、お客様がお待ちどす。」
「わたしに客?」
「へぇ、美禰(みね)様とおっしゃる方が・・」
「お帰りなさいませ、エルヴィン様。」
エルヴィンが部屋に入ると、そこにはどこか冷たい顔をしている美禰の姿があった。
「美禰、どうした?何故わたしの部屋に・・」
「エルヴィン様、あの芸妓と別れて下さいませ!」
「いきなり何を言い出すんだ、美禰?」
「エルヴィン様、先程わたしはジーク様から“黒猫”の事を知りました。それなのに何故、あの女と・・」
「美禰、一体何を言っているんだ?」
「とぼけないで下さいませ!」
美禰はそう叫ぶと、簪の残骸をエルヴィンに見せた。
「この簪は、あの女に渡すつもりだったのでしょう!」
「美禰、お前は・・」
「わたくしは、あの女が許せません、わたくしが兄上の仇を討たなければ!」
我を忘れた美禰は、そう叫ぶと「椿屋」から飛び出していった。
「美禰、待つんだ!」
慌てて美禰を追いかけたエルヴィンだったが、時すでに遅く、彼女の姿はどこにもなかった。
「エルヴィン様、文をお預かりしてます。」
「わたし宛ての文を?誰から預かった?」
「さぁ、お名前はお聞きしてまへんけど、黒髪で小柄な方どした。」
「そうか、ありがとう。」
女中から文を受け取ったエルヴィンは、すぐさまそれに目を通した。
そこには、“戌の刻(午後八時頃)、巽橋の袂にて待つ”とだけ書かれていた。
戌の刻まで、時間がなかった。
リヴァイは空から舞い散る雪を見て、軽く舌打ちした。
(エルヴィン、遅ぇな。)
あの女中は、エルヴィンにちゃんと文を渡したのだろうか?
そんな事を思いながら寒さでかじかんだ指先をリヴァイが擦っていると、白い影が自分の前に突然現れた。
それは、白装束姿の美禰だった。
頭に白い鉢巻を巻き、朱塗りの懐剣以外帯に至るまで白一色の彼女の姿は、まるで幽霊そのものだった。
「お前が、“黒猫”・・」
血走った眼で自分を睨みつけている美禰の口から、その容貌に似つかわしくないしわがれた声でその名を呼ばれ、リヴァイはまるで金縛りに遭ったかのようにその場から動けなくなった。
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