「進撃の巨人」の二次創作小説です。
作者様・出版者様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。
翌朝、エルヴィンはキッチンで梓と自分の朝食を作っていた。
「梓、おはよう。」
「パパ、おはよう。」
梓に朝食を食べさせ、彼女を幼稚園へと車で送ったエルヴィンは、一人の保護者に声を掛けられた。
「失礼ですが、もしかしてあなたは・・」
「はじめまして、梓の父親です。」
「まぁ・・」
その保護者は、矢代麗と名乗った。
「折角ここでお知り合いになったところですから、一緒にお茶でも・・」
「申し訳ありません、急いでいるので・・」
「あら、そうですか・・」
麗は少し残念そうな様子で、他のママ友達と共に幼稚園を後にした。
「母さん、梓の荷物を取りに来た。」
「わかったわ。」
エルヴィンが幼稚園から実家へと向かうと、母はどこか気まずい様子で彼を家へ上げた。
梓の荷物は、梓が寝ていた部屋に置かれていた。
「ねぇエルヴィン、奈々さんとは本当に別れるの?」
「あぁ。」
「昨日あんな事があった後、奈々さんのご両親から連絡があってね・・奈々さんが自殺未遂を・・」
「俺の気をひく為だろう。」
「それにしても、奈々さんはいつもあんなヒステリーを起こすの?」
「あぁ。結婚してから、奈々は俺が仕事で帰りが遅くなると、浮気を疑ってヒステリーを起こしていた。もう彼女に振り回されるのは嫌なんだ。」
「そう、わかったわ。奈々さんとは今、冷静に話し合える状態じゃないし・・エルヴィン、あなたが住んでいるマンション、ペットは飼えるわよね?」
「あぁ、うちはペット可だけれど・・それがどうかしたの?」
「ちょっと待ってて。」
そう言って一旦部屋を出た母は、ハムスターのケージを持って部屋に戻って来た。
「この子は?」
「梓ちゃん、ずっとハムスター飼いたいって思っていたんだけれど、中々リヴァイさんに言えなかったんですって。だからわたしがこの前ペットショップで一緒に選んでお迎えしたのよ。」
母の説明を聞きながら、エルヴィンは白い床材の中から顔を出したキンクマハムスターを見た。
「わたしの所に置いて世話をしたいけれど、奈々さんがいつここを襲って来るかわからないし、あなたに預けた方が安全だと思って・・」
「わかったよ、母さん。」
梓の荷物と、ハムスターのケージ、そして飼育本などのハムスターの飼育用品一式を車の後部座席に詰めて実家から帰宅したエルヴィンは、巣箱の中で眠っているハムスターに向かって話しかけた。
「これから、よろしくな。」
エルヴィンが梓と暮らし始めてから一週間が過ぎた頃、奈々の両親がやって来た。
「奈々とは別れてくれ、エルヴィン君。」
「わかりました。」
「正直言って、奈々が君に執着するなんて思いもしなかったよ。一度、あの子を精神科で診て貰おうと思う。」
「そうですか・・」
「エルヴィン君、今まで娘が迷惑を掛けて済まなかったね。」
「いいえ。」
「梓ちゃんは、元気にしているの?」
「はい。」
「そう・・これからわたし達は奈々に寄り添っていこうと思います。」
玄関先で奈々の両親を見送った後、エルヴィンは深い溜息を吐いた。
彼らはああ言ってくれていたが、奈々がいつ自宅や実家を襲うのかわからないので、まだ気が抜けない。
「パパ。」
「梓、どうした?」
「あずさ、ここに居てもいいの?」
「いいよ。」
「コスモちゃんも?」
「あぁ、居てもいいよ。」
梓と暮らし始めてから、エルヴィンは仕事を定時で帰宅できるよう調整したり、休日は梓と一日中過ごすようにした。
そんな中でわかったのは、育児と仕事の両立の難しさだった。
働きながら育児をする父親たちの一番の障害は、育児休暇を父親が取得する事や、育児をする為の時短勤務に対する職場の無理解さだった。
エルヴィンの上司は、妻が専業主婦であるのが当たり前の時代で、ひたすら仕事に没頭してきた世代だった。
しかし、“男は仕事、女は家事・育児”という性的役割を重視していた時代はとうに終わりを告げ、今や離婚や同性婚、ひとり親など当たり前になっており、結婚に対する意識や価値観も多様化してきている。
そんな時代に逆行しているかのような会社の体質を変える為、エルヴィンは社長にある提案をした。
「社内託児所の設置?」
「はい、そうです。子供を預けて働こうにも、預ける所がない。預け先が決まっても、自宅や職場との移動時間がかかり、負担がかかる。社内に託児所があれば、仕事のコストパフォーマンスも上がり、働く親達のストレスが減るのではないでしょうか?」
「良い考えだと思うんだが、前例がないねぇ・・」
「前例がないなのなら作ればいいのです!」
その日の夜、エルヴィンがキンクマハムスター・コスモのケージの掃除をしていると、ハンジがやって来た。
「ふぅん、あんたが社内託児所の設置をねぇ。以前のあんたなら、“育児は全て自己責任”で冷たく突き放してたのに、随分変わったねぇ。」
「梓と一緒に暮らしてみて、育児の大変さを知ったよ。子供は大人の都合を完全無視で、どれだけ仕事や家事が忙しくても、子供を優先しなければならない。こんな大変な事を、リヴァイは一人でやっていたんだな・・」
「そのリヴァイだけどね、手術の日程が決まったよ。」
「そうか・・それは良かった。」
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