※BGMと共にお楽しみください。
「千、居るか!?」
「どうしたんですか、皆さん?」
部屋に入って来たのは、中村五郎、茨木司、富川十郎、佐野七五三之助の四人だった。
「千、お前占いが出来るんだってな?」
「えぇ、そうですけれど・・」
「俺達の未来を、占ってくれないか?」
「へ?」
驚きの余り、千は声が裏返ってしまった。
この世人は新選組から脱退し、伊東の元へ逝こうとしたが拒絶され、自害したのではなかったか。
前回、現代から幕末へ戻った時、現代で治った筈の総司の肺結核は再発した。
“人の死は何者にも変える事はない”―千は総司の肺結核再発で、そう思ったのだった。
(適当に占おう。)
現代に居た時、学校帰りによく立ち寄った商業施設で、“よく当たる占い”という看板を掲げた占い屋があったが、蓋を開けてみれば霊感商法まがいの事などをしている詐欺師だった。
結局その店はオープンで一ヶ月足らずで潰れたが、騙される人は騙されるものなんだなと店の跡地を見た千はそう思った。
「・・わかりました。」
あの店を訪れた時は一度きりだったが、その占い師のやり方を真似てみる事にした。
「このカードの中から一人ずつ、一枚選んで下さい。」
「わかった・・」
適当にシャッフルしたタロットカードを中村達に選ばさせた千は、そのカードを一枚ずつめくった後こう言った。
「あなた達の未来に、暗雲が見えます。もしかしてあなた達、伊東先生の所へ行こうと思っていますね?」
「なんでそれを・・」
「このカードが示すあなた達の未来は、死です。避けられない未来です。その未来から遠ざかる一つの方法は、今動かない事、それだけです。」
「本当に、お前の占いは当たるのか?」
「僕のカードは嘘を吐きません。」
中村達を占った後、千は深い溜息を吐いた。
(あの四人の未来が変わる事はないけれど、出来る限りの事はした。)
千が四人を占ってから暫く経った後、彼らが新選組を脱退した事を知った。
「あいつら、どうなるんだ?」
「さぁ、今土方さんが会津中将様の所へ行っているから・・」
「みんな、大変だ!」
「どうしたんだ、そんなに血相を変えて・・」
「中村達が・・会津中将様の所で、自害した!」
その知らせを聞いた千は、溜息を吐いた。
「それは本当か?」
「はい。間違いありません。」
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