JEWEL

2020/05/08(金)01:30

双つの鏡 第190話

連載小説:双つの鏡(219)

※BGMと共にお楽しみください。 1868(慶応4)年4月19日、宇都宮城。 千達は大鳥圭介率いる伝習隊と共に宇都宮城を一度は奪取したが、4月22日、新政府軍により宇都宮城を奪われ、この戦いでも新政府軍に敗れた旧幕府軍は、一路会津へと向かった。 「副長、どちらにいらっしゃいますか?」 「土方さん、何処ですか!?」 戦いの最中、撤退しようとしている兵士達の中で歳三の姿を見失った千は、千尋と共に彼の姿を血眼になって捜した。 「わたくしは向こうを捜しますから、あなたはあちらを捜して下さい!」 「はい!」 千尋と二手に分かれ、歳三の姿を捜した千は、漸く宇都宮城の南側で戦っている彼を見つけた。 「土方さん!」 「千、どうした!?」 「大鳥さんからの伝令です!ここから即撤退せよと・・」 「わかった、すぐに合流すると大鳥さんに伝えろ!」 「わかりました!」 そう言って千が歳三に向けた時、一発の銃声が戦場に響いた。 「土方さん、しっかりしてください!」 「大丈夫だ、こんな怪我で俺は死なねぇ・・」 そう言って蹲った歳三の足は、鮮血に染まっていた。 宇都宮城の戦いで負傷した歳三は、療養の為本軍より先に会津入りする事になった。 「土方君、失礼するよ。」 「大鳥さんか、入ってくれ。」 歳三が文机に向かって勇の助命嘆願書を認めていると、大鳥が部屋に入って来た。 「宇都宮での君の戦いぶりは無事だったよ。でもあの戦い方は参謀としては失格だ!」 「そうか・・」 「では僕はこれで失礼するよ。」 大鳥が去った後、歳三は溜息を吐いた。 「参謀としては失格か・・何だかあの人から言われるとこたえるな。」 「土方さん・・」 「副長、只今戻りました。」 「千尋、伝習隊に兄貴が居ると言っていたが、会えたのか?」 「はい。義理の母はわたくし達が会津に着く前に亡くなったそうです。」 「そうか。会津の様子はどうだった?」 「会津は何かとしきたりを重んじる者達が多いようで、藩士達の多くは洋装を嫌い、甲冑を纏って戦に出るつもりだとか・・」 「色々とややこしくなりそうだな。」 「そうですね。」 (何だか、嫌な予感がする・・) 「その箱は?」 「これで、戦の結末がわかりますし、作戦も立てられます。」 優之はそう言うと、タブレットを鈴江に見せた。 この作品の目次はコチラです。 にほんブログ村

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