1870年12月24日、クリスマス・イヴ。
その日、パリの街は雪で一面白く染まり、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
そんな中、一台の馬車が、ノートルダム大聖堂の前に停まった。
馬車の中から降りて来たのは、白貂のコートを着た美しい令嬢―千だった。
『センさん、お久しぶりです。』
『ありがとう。』
コートの裾を翻し、千は大聖堂の中へと入った。
美しい“薔薇窓”の下に、“その人”は立っていた。
漆黒のフロックコート姿の“その人”は、千の気配に気づくと、ゆっくりと千の方へと振り向いた。
「土方さん・・」
「千、やっと会えたな。」
「怪我の具合はどうですか?」
「大丈夫だ。」
「そうですか、良かった。」
千はそう言うと、歳三に抱きついた。
歳三の紫の瞳が、“薔薇窓”に照らされ、暗赤色に輝いた。
―第一部・完―
この作品の目次は
コチラです。
にほんブログ村