※BGMと共にお楽しみください。
土方さんが両性具有です、苦手な方はお読みにならないでください。
第二部
江戸で隠れ見たキリシタンの集会で初めて“マリア様”と会った時、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
絹糸のような美しく艶やかな黒髪、雪のような白い肌、そして宝石を嵌め込んだかのような蒼い瞳―桂は一目で“マリア様”に心を奪われた。
その“マリア様”の正体を知った時、桂は呆然としてしまったが、ますます彼は“マリア様”―歳三に心を奪われ、彼の虜になってしまった。
そんな中、桂は知人から“マリア様”に関する噂を聞いた。
―“マリア様”は男女両方の性を持っている。
その噂の真偽を確かめてみたいが、その前に敵の動きを探るのが先だと考えた桂は、真紀を新選組に潜入させる事にした。
「また、“マリア様”の事を考えていらしたのですか?」
背中に突然鋭い痛みが走り、桂が我に返ると、そこにば仏頂面を浮かべた真紀の姿があった。
「済まない・・」
「暫く桂さんとは会えなくなるというので、俺はこうして桂さんに抱かれているだけでも嬉しいのに、つれないですね。」
「嫉妬か?」
「いいえ。少し桂さんに腹が立っただけです。」
真紀はそう言って身体を反転させると、桂の上に跨った。
「今宵は、俺だけを見て下さいませ。」
「あぁ、わかったよ・・」
桂はくすくすと笑いながら、真紀の唇を塞いだ。
同じ頃、西村の屋敷に監禁された歳三は、喉が渇いて水を飲もうと厨へと向かおうとした時、中庭を挟んだ向かいの部屋からくぐもった男の呻き声と女の嬌声が聞こえて来た。
(なんだあいつら、俺の事放っておいて盛ってんじゃねぇか。)
歳三がそう思いながら部屋の前を通り過ぎて厨へと向かおうとした時、不意に部屋の襖が開かれ、あっという間に彼は部屋の中へと引き摺り込まれた。
部屋の中は薄暗く、何処か咽せ返るかのような甘い香りが漂っていた。
「さぁ、あなた様も快楽を味わって下さいませ。」
「やめろ・・」
「恥ずかしがらないで、快楽に身を委ねるのです。」
「俺に触るな!」
歳三は自分の着物を脱がそうとするしずの手を乱暴に払い除け、自分の部屋へと戻って愛刀と脇差を握り締めて屋敷から飛び出した。
「旦那様、逃げられてしまいましたわ。」
「追わずともよい。“マリア様”とはまた会う事になるだろう。」
西村はそう言うと、口端を歪めて笑った。
「では真紀、ここでお別れだ。」
「はい。桂さん、どうかお元気で。」
「お前も、元気でな。」
宿の前で桂と別れた真紀は、その足で新選組屯所がある西本願寺へと向かった。
「何だ、貴様は?」
「新選組に入隊したいのですが・・」
「ここで暫く待っておれ。」
「はい・・」
真紀が暫く屯所の正門前で待っていると、そこへ巡察を終えた一番隊がやって来た。
「あれぇ、君、確か池田屋で会ったよね?もしかして僕に殺されに来たの?」
「沖田先生、この者は入隊希望者です。」
「ふぅん、そうなの。じゃぁ、僕が直々に入隊試験をさせてあげるよ。」
「ありがとう・・ございます。」
「お礼なんていいって・・まぁ、君が生きて帰れるかどうかはわからないけれど。」
総司はそう言うと、口端を歪めて笑った。
「何だ、道場がいつもより賑やかだな。」
「局長、お帰りなさいませ。先程入隊希望者が屯所に来て、沖田先生が今その者に試験を・・」
大坂出張から戻った勇に隊士がそんな話をしていると、突然道場の方からどよめきが起こった。
「今のは何だ!?」
「行ってみましょう!」
二人が道場へと向かうと、その中では入隊希望者の若者と総司が対峙していた。
「どうしました、もう終いですか?」
「・・うるさい!」
総司はそう叫ぶと、木刀を構え直した。
「そうですか。」
「次は、殺してやる!」
「総司、やめないか!」
殺気立った二人の間に勇が慌てて入ると、総司は正気を取り戻した。
「近藤さん、お帰りなさい。」
「彼が、入隊希望者かな?」
「はい。確か、名前は・・」
「宮下真紀と申します。」
「宮下君か。年は幾つだ?」
「17です。(※数え年、満年齢は16歳)」
「総司、彼の剣の腕前はどうだ?」
「そんな事、僕に聞かないで下さいよ。」
総司はそう言って額の汗を拭った後、溜息を吐いた。
「総司、宮下君の入隊を認めるか?」
「えぇ。」
「では宮下真紀君、よろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
こうして真紀は、新選組への潜入に成功した。
「どういう目的で入隊したのかは知らないけど、下手な動きを少しでもすれば、僕が君を斬るよ。」
(これから用心しないといけないな。)
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