「何だ、こんな夜中に?」
「わかりませんが、出た方がいいのでは?」
「そうだな・・」
歳三がそう言ってドアを開けたが、その直後警官達が部屋に雪崩れ込んで来た。
「何だ、お前達!?」
『この男だ!』
警官達の中から、昼間歳三とカフェでぶつかった男が現れた。
『こいつだ、わたしの財布を盗んだんだ!』
『言いがかりは止せ!確かに俺はあんたにぶつかったが、俺は何も盗んじゃいねぇ!』
『嘘を吐くな!』
警官の一人がそう叫ぶと、歳三を絨毯の上に突き倒すと、うつ伏せになった彼の首を両膝で圧迫した。
『すぐに彼から離れろ!』
『彼は何もしていない、早く彼から離れろ!』
仲間の警官達が慌てて歳三から彼の首を圧迫した警官を引き剥がした。
『彼が抵抗したから押さえつけただけだ!』
『我々は彼に事情を聞くだけだった筈だ!死んだらどう責任を取るつもりだ!』
『お客様、大丈夫ですか?』
騒ぎを聞きつけたホテルの支配人が、そう言って部屋に入るなり歳三に駆け寄った。
『あぁ、何てことを・・お医者様をすぐに呼んで参ります!』
「土方さん、大丈夫ですか!?」
「あぁ・・」
そう言った歳三の顔は、蒼褪めていた。
ホテルの支配人が医者を連れてホテルに戻って来たのは、騒動から数分後の事だった。
『何と酷い・・あざになっていますね。どれ位圧迫されていたのですか?』
『数秒位です。こちらの男性が彼に財布を盗まれたと言っていたので、彼に事情を聞こうとしたら、こいつがいきなり・・』
『わたしは彼が抵抗したから押さえつけただけだ!』
『黙りなさい!』
歳三に財布を盗まれたと主張していた男性は自分の勘違いだと認めた後、歳三に謝罪した。
『そんな事があったのですか・・怪我は大丈夫ですか?』
『あぁ。首が少し痛いけどな。』
『その警官は何と愚かなのでしょう。』
ブリュネはそう言って溜息を吐いた後、紅茶を一口飲んだ。
『失礼致します、お客様。お客様にお会いしたいという方がロビーにいらっしゃいます。』
『わかりました、すぐに行きます。』
千がホテルの支配人と共に部屋から出て、ロビーに降りると、そこにはアーノルドの姿があった。
『久しいな、チヒロ。』
『お久しぶりです。』
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