(もう、さっさと終わらせるしかねぇか。)
胡蝶姫の装束を身につけた歳三は、深呼吸した後、ゆっくりと本殿の中から出て、舞台へと向かった。
周囲の視線を感じるが、歳三はそんな事を気にせずに舞台に上がった。
扇を持って彼が静かに舞い始めると、何故か周囲のざわめきが全く聞こえなくなり、観客達は一心に自分の舞に見惚れていた。
舞い終わった後、歳三は舞台から降りて本殿へと戻った。
「ありゃ、見事なもんだ。」
「本当にな。」
「姫様が乗り移ったのかと持った。」
町民達は口々にそう言い合いながら、荻野神社を後にした。
祭りが終わり、巫女という大役を終えた歳三は、滝に礼を言って荻野神社を後にした。
「土方さん、お疲れ様でした。」
「ありがとうよ。」
「これからどうなさるおつもりで?」
「この町を出る。出来れば雪が降る前に。」
「俺も・・お供致します。」
斎藤はそう言った後、歳三に跪いた。
「なぁ、土方先生はこの町にずっと居るんだろうな?」
「居るに決まってるさぁ、土方先生はここの守り神様だもの。」
「そうだなぁ。それにしても、あの美人姉妹は何処に行っちまったんだか。」
「さぁな。」
町民達がそんな事を話していると、遠くから不気味なサイレンが鳴り響いた。
「何だ?」
「まぁた山崩れか?」
「いつもの事だぁ、どうせすぐに止むべ。」
「ほっとけ、ほっとけ。」
サイレンが鳴り響く中、歳三と斎藤、丸山は土砂崩れが起きる前に、車で鬼蝶町から脱出した。
その直後、大規模な土砂崩れが町全体を呑み込み、町民全員が犠牲となった。
因習が根付いた閉鎖的な田舎町は、一夜にして姿を消した。
【東北の山奥で大規模な土砂崩れ、町民全員が犠牲に】
東北地方を襲った暴風雨は、山奥にある鬼蝶町を直撃。
大規模な土砂崩れが町を呑み込み、町民約400人が犠牲となった。
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