「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
(ここが、島原か・・)
道場の仲間達と島原へと繰り出した膝丸は、初めて足を踏み入れる島原の賑やかさに圧倒されていた。
「おい、何を突っ立っているんだよ、膝丸!」
「さっさと行こうぜ!」
「ああ、わかった・・」
暫く大門の前で呆けていた膝丸だったが、仲間達の声を聞いて我に返ると、髭切太夫が居る女郎屋「鈴振楼(すずふりろう)」へと向かった。
「いらっしゃいませ。お腰の物を御預かり致します。」
膝丸達が鈴振楼の中へと入ると、奥から楼主と思しき白髪の男が彼らを出迎えた。
「其方に聞きたいことがある。」
「なんでございましょうか、お武家様?」
「髭切太夫は何処に居る?」
「ああ、髭切でしたら奥の座敷で大黒屋様の接待をしております。」
「大黒屋だと?最近異国との貿易で儲けているという薩摩の商人か?」
「へぇ、そうどす。お武家様は髭切と一体どのような関係で・・」
「髭切の居る座敷へと案内しろ。」
膝丸はそう言って男を睨みつけると、鈴振楼の楼主・弥助は恐怖に顔を引き攣らせながら膝丸を奥座敷へと案内した。
「何だあいつ、おっかない顔をしていたな。」
「ああ・・まるで鬼のようだったぞ。」
膝丸の全身から発せられる殺気に気づいた仲間達は、そんな事をひそひそと囁き合いながら慌てて彼の後を追った。
「そこの廊下を曲がったら、奥座敷です。」
「楼主、先程は済まなかった。これは礼として受け取ってくれ。」
「おおきに。」
弥助は膝丸から小判を受け取り、それを懐にしまうとそそくさと彼に背を向けて元来た道を戻っていった。
(あそこに、兄者が・・)
膝丸が奥座敷の前に立つと、中から賑やかな笑い声が聞こえて来た。
彼は深呼吸した後、勢いよく襖を開けた。
「兄者、迎えに来たぞ!」
突然の闖入者(ちんにゅうしゃ)に、大黒屋は不快感を露わにした顔を膝丸に向けた。
「何じゃ、随分とうるさい奴が来たのう。」
「貴様が大黒屋か。兄者は何処に居る?」
「お前の兄なぞここには居らんわ、去ね!」
「兄者と会うまでここを動かんぞ!」
大黒屋と膝丸が睨み合っていると、廊下の方から衣擦れの音が聞こえた。
「ありゃ、こっちだったか。」
頭上から振って来た声を聞いた膝丸が背後を振り向くと、そこには黄金色の髪を簪や櫛で美しく飾り、華やかな衣を纏っている兄の姿があった。
「兄者~!」
膝丸が髭切に抱きつくと、彼はきょとんとした顔をしていた。
「髭切、そん男はおまんの知り合いか?」
「へぇ、これはうちの弟の・・」
「膝丸だ、兄者!」
涙で潤んだ瞳で膝丸が髭切を睨むと、髭切は口元を袖口で覆ってクスリと笑った。
「久しぶりだね、膝丸。」
「兄者ぁ~!」
長い間生き別れていた兄との再会を果たした膝丸は感極まって涙を流し、髭切にしがみついたまま離れようとしなかった。
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