「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
膝丸が道場へと向かうと、彼と島原へ行った仲間達が駆け寄って来た。
「膝丸、聞いたぞ。お前髭切太夫と閨を共にしたんだってな!」
「ど、何処からそのような話が出たんだ!?」
「今更とぼけたって無駄だぜ?奥の座敷で髭切太夫にしがみついて離れなかったんだってな?」
「あ、あれは・・」
「後で話、聞かせろよ。」
完全に仲間達に誤解されたまま、膝丸はその日の稽古を終えて帰宅した。
道場から出ようとした時、土砂降りの雨が降っていることに気づいた膝丸は舌打ちしながら雨の中を走り出した。
「そこの方、どうぞ。」
目の前に突き出された紅い傘に戸惑いながら、膝丸はその傘を差し出した町娘の顔を見た。
彼女は、今朝助けた町娘だった。
「まさか、こんな所で再会するとはな。」
「家が近くにありますので・・わたくしの方も、貴方と再び会えるなんて思ってもみませんでした。」
雨宿りの為に近くの甘味処に入った膝丸は、兄に似た町娘・小烏(こがらす)と団子を食べながら再会したことを彼女と互いに喜び合った。
「家が近くにあると言ったが、何処にあるのだ?」
「祇園です。わたくしは“鈴屋”という屋形に籍を置いている舞妓なのです。」
「舞妓か・・そうか。京言葉を話さない舞妓は珍しいな?」
「生まれが江戸なので、余り上手く話せないのです。あの、わたくしの顔がそんなに珍しいですか?」
じっと自分を見つめる膝丸に気づいた小烏がそう彼に尋ねると、彼は突然破願してこう言った。
「済まん、俺には君によく似た兄者が居てな。君の顔を見て、兄者を思い出してしまったのだ。」
「お兄様、ですか?」
「ああ。幼い頃離れ離れになっていたが、今は島原で太夫として暮らしている。昨夜兄者と会ったが、元気そうで良かった。」
「そう・・なのですか。」
膝丸から彼の兄の話を聞いた小烏の胸が、チクリと嫉妬で痛んだ。
「今日は会えて良かった。傘を有難う。」
「いいえ、ではお気をつけてお帰り下さいませ。」
紅い傘を差した膝丸の姿が徐々に小さくなってゆくのを、小烏は涙を堪えながら見ていた。
「雨、か・・鬱陶しくて嫌だな。」
「天下の髭切太夫がそんな顔をすることもあるんだねぇ。何か嫌な思い出でもあるのかい?」
「まぁね・・」
自分の髪を櫛で梳いている次郎太夫の方を見た髭切は、そう言って笑った。
「そういえば、あんたによく似た舞妓が居るって噂を最近聞いたことがあるね。」
「僕とよく似た舞妓?」
「何でも、名前を小烏っていうんだってさ。可愛い娘に烏なんて、酷い名前をつける親が居るものだね。」
次郎太夫がそう言って髭切の方を見ると、彼は険しい表情を浮かべて何かを呟いていた。
その横顔は、いつも飄々としていて何処か儚げな太夫としての顔ではなく、嫉妬に狂う鬼の顔だった。
「髭切、どうしたの?」
「あ、ごめん。ちょっと、昔の事を思い出しちゃってね。」
そう言った髭切の瞳が、真紅に染まっている事に次郎太夫は気づいた。
にほんブログ村