JEWEL

2020/07/26(日)15:53

双つの鏡 第214話

連載小説:双つの鏡(219)

シャーロットから拒絶された青年は、無言でその場から立ち去った。 『お祖母様、あの人は・・』 『彼はお前とは一切関わり合いのない奴よ。』 『は、はい・・』 シャーロットが中庭から去った後、千はジョンにあの青年の事を尋ねたが、適当にはぐらかされてしまった。 『あぁ、チャールズ様かい?あの方は、とっくにこの家から勘当されたんだよ!』 『どうして勘当されてしまったのですか?』 『あの方は大の博打好きでねぇ、大奥様はそれにお怒りになってねぇ・・』 料理番のチェイスが菜園で野菜を収穫するのを手伝いながら、千は彼女の話に耳を傾けた。 『チヒロ様、こちらにいらっしゃったのですか?』 レイノルズ伯爵家執事・アッシュは、そう言いながら菜園に入って来た。 『大奥様がお呼びですよ。』 『わかりました。』 千がアッシュと共にシャーロットの部屋へと向かうと、彼女は渋面を浮かべながら何かを読んでいた。 『お祖母様、失礼致します。』 『お入り。』 『お話とは何でしょうか、お祖母様?』 『チャールズの事だが、あの者はもうこの家の者ではないから、余り関わらない方がいい。』 『はい、わかりました。』 『あいつの事はチェイスから色々と聞いているだろうから、もうわたしの方からは何も言わないよ。それよりも、今年のクリスマスの事だが・・』 千がレイノルズ伯爵家へやって来てから半年が過ぎ、レイノルズ伯爵家にとって一年で最も賑やかな季節―クリスマスがやって来た。 『チヒロ、メリークリスマス。』 『お祖母様、メリークリスマス。』 『こうして家族揃って食事をするのは久しぶりだね。神に感謝を!』 『神に感謝を!』 乾杯の合図と共に、レイノルズ伯爵家の華やかなクリスマスパーティーが始まった。 『チヒロ、パリからお前宛に小包みが届いているよ。』 『ありがとうございます、お祖母様。』 シャーロットから小包みを受け取った千が自室でそれを解くと、そこには美しい真紅の包装紙に包まれた有名宝飾メーカーの箱があった。 その箱を開けると、そこには美しいアメジストのネックレスが入っていた。 『一足早い誕生日プレゼントだと思って受け取ってくれ。メリークリスマス -T-』 そのメッセージカードを読んだ時、千は誰がこのネックレスを自分に贈ったのかがわかった。 (土方さん、メリークリスマス。) 一方、パリでは、歳三はブリュネと共にある貴族のパーティーに出席していた。 この作品の目次はコチラです。 にほんブログ村

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る