シャーロットから拒絶された青年は、無言でその場から立ち去った。
『お祖母様、あの人は・・』
『彼はお前とは一切関わり合いのない奴よ。』
『は、はい・・』
シャーロットが中庭から去った後、千はジョンにあの青年の事を尋ねたが、適当にはぐらかされてしまった。
『あぁ、チャールズ様かい?あの方は、とっくにこの家から勘当されたんだよ!』
『どうして勘当されてしまったのですか?』
『あの方は大の博打好きでねぇ、大奥様はそれにお怒りになってねぇ・・』
料理番のチェイスが菜園で野菜を収穫するのを手伝いながら、千は彼女の話に耳を傾けた。
『チヒロ様、こちらにいらっしゃったのですか?』
レイノルズ伯爵家執事・アッシュは、そう言いながら菜園に入って来た。
『大奥様がお呼びですよ。』
『わかりました。』
千がアッシュと共にシャーロットの部屋へと向かうと、彼女は渋面を浮かべながら何かを読んでいた。
『お祖母様、失礼致します。』
『お入り。』
『お話とは何でしょうか、お祖母様?』
『チャールズの事だが、あの者はもうこの家の者ではないから、余り関わらない方がいい。』
『はい、わかりました。』
『あいつの事はチェイスから色々と聞いているだろうから、もうわたしの方からは何も言わないよ。それよりも、今年のクリスマスの事だが・・』
千がレイノルズ伯爵家へやって来てから半年が過ぎ、レイノルズ伯爵家にとって一年で最も賑やかな季節―クリスマスがやって来た。
『チヒロ、メリークリスマス。』
『お祖母様、メリークリスマス。』
『こうして家族揃って食事をするのは久しぶりだね。神に感謝を!』
『神に感謝を!』
乾杯の合図と共に、レイノルズ伯爵家の華やかなクリスマスパーティーが始まった。
『チヒロ、パリからお前宛に小包みが届いているよ。』
『ありがとうございます、お祖母様。』
シャーロットから小包みを受け取った千が自室でそれを解くと、そこには美しい真紅の包装紙に包まれた有名宝飾メーカーの箱があった。
その箱を開けると、そこには美しいアメジストのネックレスが入っていた。
『一足早い誕生日プレゼントだと思って受け取ってくれ。メリークリスマス -T-』
そのメッセージカードを読んだ時、千は誰がこのネックレスを自分に贈ったのかがわかった。
(土方さん、メリークリスマス。)
一方、パリでは、歳三はブリュネと共にある貴族のパーティーに出席していた。
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