「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。
「まさかあの風間様がご結婚されるなんて、喜ばしい事ですわね。」
「お相手は、どんな方なのかしら?」
「さぁ・・」
「何でも、老舗料亭の娘さんみたいですって。」
「料亭ですって?議員の先生や旧華族のお嬢様ならともかく、飯屋の娘なんて・・」
「あらあなた、『石田屋』をご存知ないの?あそこは昨年、フランスで三ツ星を獲得された事がある名店なのよ。」
「それに、土方様のお祖父様は元警察庁長官でいらっしゃったのよ。」
「まぁ・・」
「土方?今土方とおっしゃったわよね?」
パーティー会場で上流階級に属する女性達が主役の登場を待ちながらそんな話をしていると、そこへ一人の女性がやって来た。
彼女は、キッズカフェの授乳室で歳三に声を掛けて来た女性だった。
「あら、あなた見ない顔ね?」
「はじめまして、わたくしこういう者です。」
女性はそう言うと、彼女達に自分の名刺を手渡した。
「“ネイルサロン・ジュリー 社長 山本有紗”?まぁ、あなたあの“ARISA”なの!?」
「まぁ、こんな所に有名人がいらっしゃるなんて嘘みたい!」
「後でサイン頂けないかしら?」
「えぇ、勿論ですわ。」
(注目されるって、やっぱり気持ちが良い!)
一方、歳三は風間家専属のヘアメイクアーティスト達によって朝からエステの全身コースや脱毛などを施され、苛々していた。
「なぁ、俺はもうクタクタなんだよ!たかがパーティーにこんな大掛かりな準備なんざしなくてもいいだろうが!」
「まぁ歳三様、そんな心構えではこの先社交界を生きていけませんわ。」
歳三の言葉を聞いてそう言った後柳眉を吊り上げたのは、かの国民的アニメに登場する家庭教師を連想させるかのような風間家の執事長・大江敏子だった。
「はぁ!?」
「社交界は常に嫉妬と欺瞞に満ちた世界ですわ。女達はそこで常に笑顔で殴り合いをし、策を巡らし、足を引っ張り合うのです。あなた様は風間様の婚約者。彼女達にとってあなた様は新しい生贄の子羊なのです。」
「良くわからねぇが、はじめが肝心だって事だな?」
「えぇ。」
「何を女同士でコソコソと話している?」
「風間様・・」
「大江、下がれ。」
「失礼致します。」
大江が部屋から出た後、彼女と入れ違いに千景が入って来た。
「何の用だ?」
「別に。これから俺達は夫婦になるのだから、互いに遠慮など要らぬだろう。」
「それもそうだけど・・」
「今夜は俺達が夫婦として社交界にお披露目される日だ。その記念として、お前にこれを贈ってやろう。」
千景はそう言うと、大人の握り拳大位の大きさがあるエメラルドの首飾りを歳三の白い首につけた。
「良く似合っている。」
「こんな高ぇ物、要らねぇ。」
「お前は、俺の妻となるのだ。俺の妻になるのだから、これ位の宝石が似合ってもらわねば困る。」
「風間・・」
「歳三、俺にあってお前にないものは何だ?」
「さぁな。」
「力だ。他者を圧倒させ、ねじ伏せ、君臨する程の力。それさえあれば、誰にも負けぬ。」
千景はそう言うと、歳三のうなじに軽く口づけた。
「歳三、今夜お前は生まれ変わるのだ。」
「生まれ変わる・・」
「そうだ。今までお前は、力ある者に虐げられて来た。だが今夜、お前は俺と共に力ある者となる。力を欲しろ、歳三。」
「力が欲しい・・」
「そうだ。」
歳三は、鏡に映る己の顔を見た。
その顔は、三年前に西口家の半分割れた鏡で見た時のそれとは違い、自信に満ち溢れたものだった。
「さぁ行くぞ、準備は良いか?」
「あぁ。」
「待て、戦化粧を施してやる。」
千景はそう言うと、ドレッサーの上に置かれている口紅を手に取り、それを優しく歳三の唇に塗った。
「行こうか?」
歳三は自分に差し出された千景の手を、しっかりと握った。
「恐れるな、堂々と前を向け。」
今まで俺は、強い者から虐げられ、自由を奪われて、半ば死んだように生きてきた。
だが、これからは力を持って強くなる。
勇太を守る為に、俺は強くなる―
「いらっしゃったわ!」
「あれが、風間様の・・」
「とても素敵な方ね・・」
(嘘、あれがあの土方君・・)
有紗は自分の前に現れた歳三の変わりように驚いた。
真紅のワンピースを纏い、美しいエメラルドの首飾りをつけた歳三は、全身から強いオーラに満ち溢れていた。
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