「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。
「ここなら、助産師や看護師が多胎児育児の相談に乗ってくれる。双子の育児はかなり辛いと聞く。俺は仕事で殆ど家に居ないし、お前が一人で三歳児と双子の育児をしながら家事やママ友との付き合いを完璧にこなすのは難しい。」
「そうか?そんなの・・」
「お前は何でも自分一人で抱え込む。お前はこれから誰かに頼る癖を身につければいい。」
「あぁ。」
今まで歳三は、誰にも頼れぬ状況で、必死に歯を食い縛って生きて来た。
誰かを頼るよりも、頼られる存在だった。
だから、いつも弱音を吐かず、己の“弱さ”を見せないようにしていた。
だが、千景の言葉を聞いた歳三は、長年纏っていた、“心の鎧”を脱ぎ捨てた。
「なぁ千景、俺はお前ぇと結婚して良かったのかもしれねぇ。」
「何だ、惚気か?」
「ま、まぁな・・」
「あらぁ、千景さんも来てたのねぇ。」
「信子さん、お久しぶりです。」
「可愛い双子ちゃんねぇ。」
信子はそう言うと、誠と千歳の寝顔を見た。
「これからが大変ね。」
「産後ケア施設で暫く世話になる事にした。初めての事ばかりだから、プロに相談した方が良いと思ってな。」
「そうね。」
「姉貴、勇太の事なんだが・・」
「勇太なら俺が面倒を見よう。」
「大丈夫か?」
「あぁ。」
千景はこの時、育児を完全に嘗めていた。
「母様~!」
歳三が産後ケア施設に入所した後、勇太は四六時中歳三を恋しがって泣いた。
「母様は今忙しいから、父様が・・」
「やだ~、母様がいいっ!」
朝食を何とか食べさせ、着替えさせたりするまで二時間もかかってしまった。
世の男性達は、家事育児をしている女性をもっと尊重した方が良いのではないか。
専業主婦を、“三食昼寝付き”の贅沢な職業だと誰が決めたのか。
家族の健康管理や家計の管理など、家事はトイレットペッパーの補充やトイレ掃除に至るまで、多岐にわたるものだ。
それを年中無休で、見返りもなくやっているのだ。
SNSを開けば、彼女達の日常生活―特に夫への不満が溢れている。
(全く、こんな大変な事を歳三は一人でやっていたのか・・)
勇太を幼稚園へと送った後、千景はそう思いながら駐車場へと向かっていると、自分の車の前には意外な人物の姿があった。
「千景さん、お久しぶりね。」
「義母上・・」
「ちょっと、お茶でも飲みながら話さない?」
「・・はい。」
千景はそう言うと、継母・富貴子と共に都内にあるオーガニック・カフェへと向かった。
「お話とは一体なんでしょう?」
「これを、歳三さんに渡して頂戴。初めて双子ちゃんが産まれた時に立ち会えなかったから。」
「ありがとうございます。」
「ねぇ、今度食事会でも開きましょうよ。結婚式の相談もしたいし。」
「えぇ、考えておきます。」
「千景さん、こんな事を言うのも何なのだけれど、四人目の予定は無いのかしら?」
「ありませんね。今は勇太が反抗期真っ只中で双子育児が忙しいので・・」
「そう?歳三さんは、今どちらに?」
「産後ケア施設に居ます。」
「それじゃぁ、あなたが今家事と育児をしているの?嫁の癖に夫に家事をさせるなんて・・」
「今は性別など、関係ありませんよ。」
「大体、そんな所に頼るなんて・・うちへ来ればいいのに。」
口を開けば、歳三への不満ばかり。
「ねぇ、そうしなさいよ。」
「申し訳ありませんが、我妻とその子供達は、あなたの所有物ではないので。」
「まぁ・・」
「先約がありますので、これで。」
気色ばんだ富貴子を残し、千景は足早にその場から去った。
ストレスが溜まる相手と同居する物好きなどいるものか。
「社長、おはようございます。」
「天霧、今から会議を始める。」
「わかりました。」
数分後、千景は社内の空きスペースを社内託児所として利用した上で、子供の育児や親の介護などを抱えている社員には在宅勤務を許可する旨を全社員に伝えた。
「風間、本気なのですか?」
「あぁ。」
「このような事をしたら・・」
「会社の利益が落ちるとでも?社員一人一人の幸せよりも会社の利益ばかり求めている会社の方が、生産性が落ちるとは思わぬか?」
「そうですか、ではそのように致します。」
千景の試みは、たちまちネット上で話題となった。
『千景さん、あなた何勝手な事を・・』
「失礼。」
千景はそう言って携帯の電源を切ると、仕事を早く切り上げて帰宅した。
「お帰りなさいませ、千景様。」
玄関先でそう言って千景を出迎えたのは、土方家の家政夫・清だった。
「貴様は・・」
「千景、暫くうちで預かる事になった清だ。」
「はじめまして、清です。」
「そんなに俺の家事能力は低いのか、歳三?」
「いや、そういうつもりじゃねぇ。お前ぇ一人だと何かと大変だし、家事を三人で分担した方が楽だろう?」
「そうだな。貴様、清といったな?俺はまだ、貴様を認めた訳ではないぞ。」
「あれ、いいんですか?」
「まぁ、あいつ天邪鬼な所あるからな。気にするな。」
こうして、大人三人の奇妙な同居生活が始まった。
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