素材は
NEO HIMEISM 様からお借りしております。
「火宵の月」二次小説です。
作者様・出版者様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「王様が宮殿にいらっしゃらないとは、どういう事だ!」
「それは、わたくし達にもわかりかねます・・」
「ええい、この役立たず共め!」
クオク王妃はそう叫ぶと、膳をひっくり返した。
「何の騒ぎだ?」
「大妃様・・」
「お前達、もう下がりなさい。」
女官達は王妃がひっくり返した膳を素早く片付けると、そそくさと部屋から出て行った。
「そんなに怒ると、腹の子に障りますよ。」
「王様は、わたくしの事を気遣って下さらない!わたくしは、あの方の妻なのに!」
王妃はそう叫んだ後、わっと泣き崩れた。
「王妃様は、懐妊された事により気鬱の病に罹っておられるようです。」
「気鬱の病だと?」
「えぇ。出産されるまでの辛抱かと。」
「そうか。」
「大妃様、スノク様がお見えです。」
「スノクが?」
「はい、王妃様の事で・・」
「通せ。」
「失礼致します、大妃様。」
そう言って大妃の前に現れたのは、有匡の双子の弟・スノクだった。
「王妃の事で、話がしたいようだな?」
「はい。王妃様の御子の父親は・・」
「お前だと、もう知っておる。お前は、どうしたいのだ?」
「出来る事ならば、わたしがこの国の王になりたいと・・」
「ならば、そうすれば良い。」
「良いのですか?」
「良いも何も、そなたは王に向いておる。そなたは、きっとこの国を良い国へと導いてくれる事であろう。」
「ありがとうございます。」
スノクはそう言うと、深く頭を垂れた。
「兄上は今どちらに?」
「さぁな。」
今頃、愛しい女と共に眠っているのであろうな―大妃はそんな事を思いながら、盃を酒で満たした。
同じ頃、妓楼の部屋で結ばれた有匡と火月は、一つの布団にくるまって、眠っていた。
何だか、信じられない。
今まで会うどころか、擦れ違う事さえなかった人と恋に落ち、結ばれるなんて。
「ん・・」
有匡が寝返りを打った後、火月に抱き着いてきた。
「王様・・」
「名前。」
「え?」
「こんな時には、名前で呼べ。」
「有匡・・様・・」
「そうだ、それでいい。」
有匡はそう言うと、火月に優しく微笑んだ。
(何だろうな・・今、とても幸せ。)
幸福な気持ちに浸りながら、火月はそう思い、眠った。
「では、また。」
「あぁ。」
妓楼の前で有匡と別れた火月は、寒さに震えながら、妓楼の中へと戻っていった。
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