「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。
「ぎゃぁぁ~!」
「怯むな、矢を放て!」
歳三は氷の膜で己を包むと、人間達の攻撃から己の身を守った。
「な、なんだあれは!?」
兵士の一人がそう言って上空を指すと、そこには大きな白虎の姿があった。
「殺れ。」
歳三の声に応えるかのように白虎はひと声吼えると、氷の嵐を巻き起こした。
「うわぁ~!」
人間達はその嵐をまともに喰らい、皆雪像と化した。
「おいおい、いくら何でもあれはやり過ぎじゃねぇのか?」
「こいつらにした事と比べればマシだろうが。」
歳三はそう言うと、跡形もなく破壊された里を後にした。
「土方さん・・」
「あいつは、死んじゃいねぇ。きっと、何処かで生きてる・・」
「あぁ、俺もそう信じているよ。」
左之助と共に帰宅した歳三が家の戸を開けると、台所には美味そうな匂いが漂っていた。
「これは・・」
「おう、お帰り。」
「あれ、土方さん、そいつ誰だ?」
「はじめまして、近藤勇と申します。」
「お前、何をしている?」
「夜食を作っている。ここに置いてある食材で作ってみたんだが、口に合うかどうか・・」
そう言いながら食卓の上に広げられた料理は、美味しそうだった。
「頂くぜ・・うぉ、すげぇ美味い!」
左之助がそっと一口勇が作ったフライドポテトをつまむと、彼は余りの美味さに感動してしまった。
「そ、そうですか?」
「何だこの、面妖な物は?」
「確かに、今まで一度も見た事がねぇものばかりだな?」
「ハンバーガーと、フライドポテトです。」
「俺ぁ、こんな物は好きじゃねぇ。」
「まぁまぁ土方さん、一口位食べてもいいんじゃねぇのか?」
「そうだな・・」
左之助に勧められ、歳三は生まれて初めて“ハンバーガー”を食べた。
「悪くはねぇな。」
「だろう?」
「だが、俺は和食が好きだ。」
「そうか。じゃぁ、これから頑張る!」
「あぁ、そうしろ・・」
さり気なく嫌味を言ったつもりだったのだが、それを全く気にしていない勇を見た歳三は少し落ち込んだ。
それを見た左之助は少し笑った。
「・・風呂に入って来る。」
歳三がそう言って浴室へと消えた後、左之助は勇の隣にどかりと腰を下ろした。
「なぁ、土方さんとは何処で会ったんだ?」
「登山中に遭難して、気づいたらここに居たんです。」
「そうか。しかし珍しいな、人間嫌いな土方さんがあんたを助けるなんて。」
「え、そうなんですか?」
「あの人、雪女一族の中で唯一、半妖として生まれたんだよ。人間の父親の血を濃く受け継いで生まれたから、同胞達や人間達から色々と迫害されてな。その所為で人間嫌いになっちまったんだ。だから、こんな山奥の家にひっそりと暮らしているんだ。」
「そうか。でも、寂しくはないのか?」
「う~ん、それはどうかな。あの人、余り感情を表に出さねぇから。」
「あの、原田さんは土方さんが好きな食べ物をご存知ですか?」
「あの人は、自分でも言っていたけれど、和食が好きかな。特に、沢庵が一番好きなんだ。」
「そうなんですか・・」
「あんたが家事出来るなんて驚いたぜ。」
「今は性別関係なく、家事が出来る人がやればいいんです。」
「へぇ、そうか。」
「あの、土方さん中々お風呂から戻って来ませんね。」
「あぁ、放っておけばいいさ。あの人、少し“力”を使い過ぎちまったからな。暫く風呂から出てこねぇよ。」
「そうなんですか・・」
「まぁ、今日はもう日が暮れたから、今夜は山から下りない方がいいぜ。」
「わかりました。」
「山には、得体の知れない奴らが潜んでいるからな。」
「えぇ。」
山岳部の先輩達から色々と山にまつわる怖い話を聞いた事があったので、勇はさほど驚かなかった。
左之助と勇が母屋で寝床の準備をしていると、浴室から歳三が戻って来た。
その顔は、病的なほど蒼褪めていた。
「土方さん、どうしたんだ?」
「あぁ、ちょっとな・・」
歳三はそう言うと、布団の上に倒れこんだ。
「病院へ連れて行かないと!」
「いや、今から山から下りたら、土方さんの命を狙う奴らが襲って来るし、それに“びょういん”なんてものはねぇよ。」
「そんな・・」
「左之、あれをくれ。」
「はいよ。」
そう言った左之助が懐から取り出した物は、紅い丸薬だった。
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