素材は
コチラからお借りしました。
「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「トシ、髪に桜の花弁がついているぞ。」
「あぁ、悪い。」
あれは、京に来てもうすぐ一年目を迎えようとしている時だった。
突然勇が、“花見をしよう!”と言い出し、監察方の山崎烝が京の花見に最適な場所を見つけ、急遽花見をする事になったのだった。
「トシは桜が似合うなぁ。」
「そんな事言うなよ、恥ずかしい。」
「あ~あ、土方さんばかりずるい。」
総司がまるで拗ねた子供のように頬を膨らませながらそう言うと、勇に抱きついた。
「はは、総司はいくつになっても甘えん坊だなぁ~!」
「でしょ~!」
まるで自分に張り合うかのように総司は勇に抱きつき、そのまま離れようとしなかった。
「こうしてみんなと花見をするのは、今度いつになるかわからないなぁ。」
「いつでも出来るじゃねぇか。」
「はは、そうだな。」
勇はそう言うと、豪快に笑った。
幸せな、とても幸せな時間だった。
ずっとこのままでいいと思っていた。
だが時の流れは残酷だった。
一人、また一人と、仲間達が歳三の前から居なくなってしまった。
“土方さん・・”
愛する女も、居なくなってしまった。
それなのに、まだ自分は生きている。
生きている・・
はっと、また夜中に歳三は目を覚ました。
(またあの夢か・・)
この時期―四月下旬から五月上旬まで、毎日のように“あの夢”を見ている。
それは、前世が原因であると、わかっている。
幕末の事を引き摺る程、自分は女々しくないと思っていたのに、それなのに―
「トシちゃん、どうしたの?何処か身体の調子でも悪いの?」
「ううん・・」
「嘘吐いちゃ駄目!」
歳三の母・由紀子は、そう言うなり歳三の額に手を当てた。
「熱があるじゃないの!」
「こんなの、大した事じゃ・・」
「駄目よ!」
由紀子はヒステリックにそう叫んだ後、運転手の大田にすぐさま車を出すよう命じた。
病院に運ばれた歳三は、医師から“ただの風邪”と言われた。
だが心配性な由紀子は、彼を入院させる事にした。
(入院なんて、大げさなんだよなぁ・・)
「ゴホッ、ゴホッ・・」
唯の風邪だったのだが、歳三は入院してから高熱と咳に苦しめられた。
(総司も、こんなに苦しかったのか・・)
ベッドで寝返りを打ちながら、歳三はかつての仲間でもあり、弟分であった沖田総司の事を思い出していた。
『僕も連れて行って下さい、僕はまだ、戦える!』
そう言いながら、病を抱えた身でありながらも最期まで戦おうとしていた。
『どうして、近藤さんを守ってくれなかったんだ!あなたなら出来た筈だ!』
―俺は、あの人を守りたかった!でも、出来なかったんだ!
『トシ、もうそろそろ楽にさせてくれ・・俺はもう、充分に生きた。』
流山で勇と別れた時、彼はこれから新政府軍に投降するというのに、晴れやかな笑みを浮かべていた。
―何で、俺は何も守れねぇんだ?一番大切なもんを見捨てて、てめぇだけ生き残って!
ずっと、仲間を見送って来た。
山南、平助、近藤、総司、野村、そして・・
“トシさん・・”
“土方さん。”
自分が最も愛した女と、魂で結ばれた友。
二人は今、どうしているのだろうか。
会いたい―歳三がそう思っていた時、病室に誰かが入って来る気配がした。
誰だと思いながら歳三が身構えていると、突然カーテンが勢いよく開けられ、白衣姿の青年が翡翠の瞳で自分を見つめていた。
「やっと会えたね。“はじめまして”かな?それとも、“お久しぶりです”の方が合っているのかな、土方さん?」
「総司、お前、総司なのか?」
「そうですよ。」
青年―沖田総司はそう言うと、歳三に微笑んだ。
「まさか、てめぇが医者になるなんてな・・」
「それはこっちの台詞ですよ。まさかあの鬼副長が、ランドセル背負った小学生なんて・・一瞬嫌らしい想像をしてしまいましたよ。」
「他の奴らとは、会ったのか?」
「えぇ。千鶴ちゃんは、この病院で医師として働いていますよ。」
「そうか・・」
「まぁ、彼女は僕の妻になりましたから、残念でしたね。」
「くそ、てめぇ・・」
歳三は自分に向かって得意気な様子で左手薬指にはめられている結婚指輪を見せつけている総司を睨んだ。
「ねぇ土方さん、もしかして労咳とかじゃないですよね?」
「ただの風邪だ、気にするな。」
「そうですか、それは良かった。」
総司はそう言うと破顔した。
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