素材は
コチラからお借りしました。
「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
(何で、俊郎さんがここに?)
「全員、整列!」
「トシ?」
「いや、何でもない・・」
「・・久しぶりだね、歳三君。元気そうで良かった。」
「ト、トシ!?警視総監と知り合いなのか!?」
「ま、まぁ・・」
「な、なんだって!?」
「そこ、騒ぐな!」
「すいません!」
「いや、いい。土方君は、わたしの友人の子供でね。彼が子供の頃からの知り合いだ。」
「は、はぁ・・」
―おい、今の聞いたか?
―土方が、警視総監と知り合いだってよ!
―すげぇ人脈だな・・
この事で、歳三は暫くの間同期達の間で気まずくなった。
「やぁ、良く来てくれたね!」
「お、お邪魔しま~す。」
「何だここ、すごいな・・」
週末、歳三達は八郎に招待されて伊庭家の別荘に来ていた。
「今日は、ゆっくりしていってね!」
「は、はぁい・・」
(そんな事言われても、寛げるわけねぇだろ・・)
歳三は、勇とは本当は彼の実家に遊びに行きたかったのだが、伊庭家の別荘に招待された事を知った由紀子が、“そちらの方を優先しろ”と言ってきたので、仕方なく同期達と伊庭家の別荘へとやって来たのだった。
「おや八郎、来たのか?」
「パパ~!」
「け、警視総監!」
「お邪魔しております!」
「いや、そんなにかしこまらなくてもいいよ。ゆっくりしていきなさい。」
(いやいや、それは出来ねぇよ・・)
警察組織のキャリア“雲の上の存在”である伊庭父子相手に“ゆっくりしていけ”と言われても、己の一挙手一投足でその後の警察官としてのキャリアが決まるのだからゆっくり出来る訳がない。
悲しいかな、それが警察官というものなのだ。
「トシさん、みんなでバドミントンやろう!」
「わ、わかった・・」
「あ、俺もやります!」
「俺も!」
こうして歳三達は伊庭家の広大な別荘の庭でバドミントンをする事になったが、皆八郎に忖度して本気を出そうとしなかった。
「つまんないなぁ、もぅ。」
(まぁ、そうなるよなぁ・・)
「トシさん、行くよ~!」
「あ、おい、待て・・」
八郎が飛ばしたシャトルは、茂みの中へと消えていった。
「あ、ごめん~!
「俺が取って来るから、八郎達は先に別荘の中へ戻っていろよ。」
「うん、わかった。」
八郎達が別荘の中へ戻ると、俊郎の書斎から彼が好きなオペラのメドレーが聴こえて来た。
「何か飲む?」
「じゃぁ、俺アイスコーヒーで。」
「オッケー!」
八郎達は、別荘の居間でアイスコーヒーを飲みながら歳三が戻るのを待っていた。
「どうしたんだろう?トシさん、遅いねぇ。」
「俺があいつの携帯にかけてみようか?」
「勇さん、トシさんの携帯の番号、何で知っているの?」
「いや、警察学校に入学する前、連絡を取り合う為にお互いの連絡先を交換したんだ。」
「へぇ、そうなの・・」
「何だろう、さっきからかけているんだが繋がらないな。」
「ねぇ、もしかして何か大変な事に巻き込まれているんじゃないのか!」
「そうかもしれない!」
八郎達が別荘の中庭へ向かうと、そこにはバドミントンのシャトルと歳三の携帯電話が茂みの中に落ちていたが、歳三本人の姿はなかった。
「どうしよう、トシさんが・・」
「八郎、何かあったのか?」
「パパ、トシさんが居ないんだ!」
「慌てるな。すぐに近くの警察に通報しろ。おそらく、まだ彼と、彼を拉致した犯人は遠くには行っていない。」
「わかった!」
八郎達が地元警察と協力して歳三の消息を探している頃、その本人は見知らぬ車のトランクに閉じ込められていた。
(畜生、早くここから出ねぇと!)
歳三はトランクの蓋に手を掛けると、そこはロックされておらず難なく開いた。
一か八か、彼はトランクから身を乗り出してそこから脱出した。
地面を転がり、何とか立ち上がった歳三は、全身傷だらけになりながらも伊庭家の別荘へと戻った。
「トシさん!」
「トシ、大丈夫か!?一体何があったんだ!?」
「それは後で話す。それよりも、救急車呼んでくれ。」
歳三はそう言った後、気を失った。
「トシさん、しっかりして!」
「トシ~!」
歳三が病院に運ばれた後、彼を拉致しようとした犯人二人組が警察に逮捕された。
彼らは、身代金欲しさに八郎を誘拐しようとしたが、“人違い”で歳三を誘拐してしまったのだった。
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