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コチラからお借りいたしました。
「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。
作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
有匡は火月に、“呪われた血”の事を話した。
「じゃぁ、有匡様も、僕と同じ・・」
「火月、それは一体・・」
「土方さん、大変だ!」
平助の叫び声を聞いた二人が部屋から出ると、中庭には何処か慌てふためいた表情を浮かべている平助と原田、永倉の姿があった。
「皆さん、どうかされたのですか?」
「どうした、何があった?」
「蔵に居た羅刹が、脱走した!」
「何だと!?日が暮れる前に俺達で羅刹を捜し出すぞ!」
「おぅ!」
土方達が羅刹捜索へ向けて慌しく動き始める中、山南は自室である“薬”の研究に勤しんでいた。
「これで、完成ですかね・・」
そう言った山南の瞳は、妖しく煌めいていた。
「居たか!?」
「畜生、あいつら何処に行きやがった!」
羅刹が蔵から脱走して、数刻が経った。
すっかり日が暮れ、辺りは闇に包まれていた。
(羅刹が人を襲う前に、早く見つけねぇと・・)
土方がそんな事を思いながら有匡と共に羅刹を捜していると、路地の向こうから女の悲鳴が聞こえて来た。
「行くぞ!」
二人が悲鳴が聞こえた方へ向かうと、そこには蔵から脱走した羅刹が、今まさに女の生き血を啜ろうとしているところであった。
「逃げろ!」
「ありがとうございます!」
女は礼を言うと、そのまま土方と有匡に頭を下げた後、闇の中へと消えた。
「血ヲ・・寄越セ!」
「生け捕りにしたいところだが、仕方ねぇ。」
土方はそう言うと、愛刀の鯉口を切った。
有匡も、それに倣った。
「血ヲ~!」
「くどい!」
有匡はそう叫ぶと、羅刹の首を一閃した。
「土方さん、見つかったか!?」
「あぁ。後始末を頼む。」
土方は原田達に指示を出していると、彼の背後に怪しい影が揺らめいた。
「土方さん、後ろ!」
「血ヲ寄越セ~!」
土方は背後に迫って来る羅刹の気配に全く気付けず、刀を振うのが遅れた。
有匡は、己の身体を盾にしながら、羅刹の首に刃を食い込ませた。
「お怪我はありませんか?」
「あぁ。」
有匡の首筋に、羅刹が残した引っ掻き傷があった。
かなり深いものであったが、それはすぐに塞がった。
「有匡・・お前ぇは一体何者だ?」
「隠しても、いつかはバレるだろうと思うから、屯所でお話します・・全てを。」
一方、火月は山南と共に蔵の中へと入った。
「あの、ここは・・」
「ここは、羅刹の実検を行う場所ですよ。」
「羅刹?」
「えぇ。彼らはわたし達新選組が作り上げた“化物”ですよ。」
「ひっ!」
蔵の中に居た白髪紅眼の男達に睨まれ、火月は思わず後ずさった。
「あなたは、彼らの力になってくれると、わたしは思っています。」
「一体、何を言って・・」
「火月さん、あなたの血を少しだけ、頂けませんかね?」
山南はそう言うと、脇差の鯉口を切り、火月ににじり寄って来た。
「山南さん、あんた何してんだ!?」
「土方君、あなたは、彼女が鬼だという事を知っているのですか?」
「あぁ。だからと言って、こいつを傷つけるのは許さねぇ!」
土方と山南の間に、静かな火花が散った。
「火月、怪我は無いか?」
「はい。」
「火月君、あなたを怖がらせてしまって、申し訳ありませんでした。」
「いいえ・・」
「戻るぞ、ここには用はねぇ。」
歳三は牢の中にいる羅刹に一瞥をくれた後、蔵から出て行った。
「それで、俺達に話しておきたい事というのは何だ?」
「実は、わたしと妻は、“呪われた血”を持った一族なのです。」
「“呪われた血”?」
「わたし達は吸血鬼・・人の生き血を啜る化物なのです。」
「吸血鬼・・つまり、あなたは“鬼”という事ですか。」
「はい。」
「先程あなたの奥方を蔵へ連れて行ったのは、羅刹のある“欠陥”をあなた方の“血”でなくせないかと思いましてね。」
「“欠陥”だと?」
「えぇ。それは・・」
山南が次の言葉を継ごうとした時、外から隊士達の怒号が聞こえた。
「今度は一体何があった!?」
「副長、この方が土御門殿に会わせろと・・」
「ええい、離せ!」
そう叫びながら隊士達の腕を払い除けたのは、匡俊だった。
「お久しぶりです、叔父上・・」
「お前に、話がある。」
「今日はもう遅いので、日を改めてくれませんか?」
「では用件だけを伝えておく。お前に土御門家の家督は継がせん。」
「そうですか。」
有匡は匡俊に背を向け、屯所の中へと戻っていった。
「その様子だと、説得は失敗に終わったようだな?」
「も、申し訳ありません!」
「まぁよい、お前の甥とはすぐに会う事になるだろうよ。」
そう言った男は、氷のような視線を匡俊に向けた。
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