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コチラからお借りいたしました。
「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。
作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「例の“計画”は進んでいるのか?」
「はい。」
「そうか。それで、新選組とあの“化物”とは、どういった関係が・・」
「それはまだ、わかりませぬ。」
「フン、役立たずめ。」
匡俊を睨みつけていた男は、そう言った後部屋から出て行った。
「旦那様、お茶を持ってきました。」
「入れ。」
「失礼致します。」
すっと襖を開けて中に入ったのは、土御門家から突然姿を消した雪之丞の双子の弟・蛍だった。
雪之丞は有匡が行方知れずとなった同時期に、姿を消したのだった。
「蛍、まだ雪之丞の行方はわからぬのか?」
「はい。」
「お前も何かと気苦労が多いな。」
「えぇ。」
「さ、気晴らしに一杯やれ。」
「ありがとうございます。」
匡俊から酒を受け取った蛍は、それを一気に飲み干した。
「はぁ、久しぶりに飲む酒は美味いです。」
「そうであろう。まぁ、お前に酒を馳走したのだから、今度は儂の頼みを聞いてくれないか?」
「えぇ、何でも。」
「そうか。お前は、兄とは違って賢いようだ。」
「お褒め頂き、光栄です。」
(狸爺めが。)
蛍は匡俊にしなだれかかりながらも、彼を心底軽蔑していた。
「それで?わたくしに頼みたい事とは何です?」
「新選組に、潜入して欲しい。」
「わかりました。」
こうして、蛍は匡俊の命を受け、新選組に潜入する事になった。
「へぇ、新選組に入隊希望ねぇ・・何だか、嬉しくないなぁ。」
「何でだよ、隊士の数が増えれば新選組の名が広まるんじゃ・・」
「馬鹿、ただでさえ狭い所が更に狭くなるだろうが。」
「あ~、そうだったぁ!」
「てめぇら、朝からうるせぇぞ!」
「ひ、土方さん!」
「こんな所で油を売っている暇があったら、稽古でもしやがれ!」
「ひぃぃ~!」
原田達は、そそくさと大広間から出て行った。
「ったく、あいつら気が緩み過ぎだ。」
「まぁトシ、そんなにカリカリするなって。」
「勝っちゃん・・」
「土方さん、こんな所に居たんですか。入隊希望者の面接、やってくださいよ。」
「わかったよ。」
歳三が大広間から出て入隊希望者が居る道場へと向かうと、そこには有匡と打ち合っている少年の姿があった。
「頼もう、頼もう!」
「何だ、こんな朝っぱらから、道場破りか?」
「そうみたいだな。」
道場で朝稽古をしていた有匡達は、屯所の方から甲高い少年の声がして、その手を止めた。
「わたしが見て参ります。」
有匡がそう言って道場から外へと出ると、屯所の前には雪之丞と瓜二つの顔をした少年が立っていた。
「お前は・・」
「お初にお目にかかります、有匡様。わたくしは雪之丞の双子の弟の、蛍と申します。」
「それで?叔父上の差し金でここへ来たのか?」
「えぇ。それに、単にここへ来たのは興味本位です。」
「興味本位、だと?」
「ですから・・」
「ここは、壬生狼の巣だ。お前のような子供が来るような所ではない、帰れ。」
「・・そうですか。では、わたくしの剣の腕をその目で確かめて頂きたい。」
蛍はそう言うと、有匡を見た。
「ほぉ?」
同じ顔をしていても、蛍は兄とは違うらしい。
口でわからぬのならば、その身体で壬生狼の巣に入ろうとした事を後悔させてやるしかない。
「どうした、もう終わりか?」
「参りました。兄には時折有匡様がお強いと聞きましたが、お強い。」
「実戦では、お前は三度死んだ事になっていた。ここはでは、剣すらもまとも振えぬ童は不要。」
「手厳しいですね。」
蛍はそう言って笑うと、少し嬉しそうに笑った。
「有匡様、こちらにいらっしゃったのですか。」
「火月、お前その姿はどうした?」
有匡は、小袖に袴姿の妻を見て驚愕の表情を浮かべた。
「最近薙刀の稽古をしていないなと思って。」
「そうか。」
「おや、そちらが有匡様の細君でしょうか?ならば彼女と手合わせ願いたいものですね。」
「女だから、僕に勝てるとでも?甘い考えですね。」
火月は蛍を睨みつけると、そう言って稽古用の木刀を彼に向けた。
「では、はじめ!」
火月と蛍の試合は、互いに一歩も引かず打ち合っていた。
「強いですね、あの二人。」
「女であっても、守れる術を持たなきゃ、生きてられねぇ。」
「随分と厳しいですね、土方さん。」
「まぁ、“あいつ”とは違う。」
土方はそう言うと、かつて屯所に居た少年の事を思い出していた。
今は亡き芹沢に拾われ、彼の死と共に濁流に呑み込まれ姿を消した少年―井吹龍之介の事を。
「“彼”の事なら心配しなくても大丈夫ですよ。それよりもあの子、どうします?」
「・・暫く泳がせておくか。」
こうして、蛍は新選組に“入隊”した。
「首尾は上々だな。」
「えぇ。」
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