※BGMと共にお楽しみください。
「薄桜鬼」・「名探偵コナン」のクロスオーバー二次小説です。
作者・出版社・制作会社などとは一切関係ありません。
捏造設定ありなので、苦手な方はご注意ください。
18XX年、北海道・函館。
海を眺めながら、土方歳三は妻・千鶴の墓参りに来ていた。
「今日は良い天気だな、千鶴。」
そう言って微笑む歳三の視線の先には、まだ真新しい御影石の墓石があった。
新選組副長として恐れられ、鳥羽・伏見で戦った後、五稜郭でその命を“落とした”後に、千鶴と夫婦になった。
彼女とは京に居た頃から互いに惹かれ合っていたが、“鬼の副長”と呼ばれている手前、彼女に素直になれなかった。
だが、戦で次々と仲間を失った時、いつしか己の中で千鶴の存在が大きくなっている事に気づいた。
そして、“全て”が終わり、歳三は千鶴と夫婦になった。
彼女と二人きりの、静かだが穏やかな暮らしは、幸せそのものだった。
しかし、その暮らしに突然終止符が打たれたのは、二人が夫婦として暮らし始めて一年目を迎えた、凍えるような冬の日の事だった。
千鶴は、仕事を終えた歳三を待っていたかのように、玄関先で倒れていた。
すぐに医者を呼んだが、間に合わなかった。
「千鶴、どうして俺を置いて逝ったんだ?」
歳三は虚ろな瞳で妻の墓を見ると、愛刀の鯉口を切った。
「俺は、お前ぇが居ない世界では生きていけねぇ。すぐにお前ぇの元へ行くからな。」
歳三は懐から、千鶴が生前愛用していた紫のリボン―自分が贈ったそれを取り出して握り締めると、愛刀の刃を閃かせた。
遠くで、海鳥の声がした。
(千鶴・・)
歳三は、静かに目を閉じた。
「あ、光彦行ったぞ!」
「うわわっ!」
「光彦君、大丈夫?」
「大丈夫です。元太君、いきなりボール飛ばし過ぎですって!」
「へへ、悪い。」
米花児童公園で円谷光彦、吉田歩美、小嶋元太らの少年探偵団は、サッカーをしていた。
「もう、あなた達、気をつけなさいよ。まだ五月とはいえ、熱中症になりやすい季節なんだから。」
そう言ってあきれ顔を浮かべながら三人の元へやって来たのは、少年探偵団のメンバーで、かつて黒の組織で“シェリー”として働いていた灰原哀だった。
「はい、これ。運動した後はちゃんと水分を摂りなさい。」
「ありがとうございます!」
「あ~、うめぇ!」
「あれ、コナン君は?」
「あぁ、江戸川君ならベンチに座ってタブレットで何か調べているわよ。」
哀はそう言うと、ベンチに座っているコナンの方を見た。
コナンは、タブレットで黒の組織について調べていた。
組織が壊滅して、愛があの薬の解毒薬を日夜開発しているが、中々成果は出なかった。
(めぼしい情報はなし、か。まぁ、組織が壊滅して半年も経っているから当たり前だな。)
コナンがそう思いながらタブレットを閉じようとした時、向こうから女性の悲鳴が聞こえて来た。
「何でしょう、今の?」
「行ってみようぜ!」
コナン達が悲鳴が聞こえた方へと向かうと、そこにはハンカチのような物を握り締めている男が気を失い、木の根元に倒れていた。
(まだ息はある。)
「江戸川君、この人頸動脈から出血しているわ!」
「お前ら、早く救急車を呼べ!」
元太達の通報により、勇は病院に搬送され、現場にパトカーが到着した。
「コナン君、あの人を見つけた時、何か変わった事はなかった?」
「ううん。でも、あの人首を怪我していたよ。傷口を見たけど、あの人は自殺だよ。右手は血で汚れていたし、右から左に向かって頸動脈が切られていたし。」
「佐藤さん、ありました!」
高木渉がそう言って佐藤刑事に見せた物は、一振りの懐剣だった。
「これ、随分と古い物ね。それに、これは・・」
「何でしょう、イラストみたいな。」
「それは家紋だよ。ほら、戦国武将の真田幸村や武田信玄とかが使っていた、その家を象徴するものだよ。多分、この懐剣はあの人の物だよ。」
コナンはそう言いながら、懐剣に彫られた家紋を見た。
(左三つ巴・・この家紋は・・)
「ねぇ、この家紋、知っているよ。」
「え、本当なのコナン君!?」
「うん。もしかしたら、さっき運ばれた人の身元がわかるかもしれない。」
コナンは、哀と共に男が運ばれた警察病院へと向かった。
「ねぇ、あの人、もしかして・・」
「俺の推測通りだと、あの人はとっくの昔に死んだ、歴史上の偉人だよ。」
「それって・・」
「やぁコナン君、久しぶりだね。それに、灰原さんも。あぁ、それとも、“工藤新一”君と、“宮野志保”さんと呼んだ方がいいのかな?」
二人が男の病室へと向かおうとした時、一人の青年がタイミングを見計らったかのように彼らの前に現れた。
彼は、喫茶ポアロの店員・安室透、“黒の組織”・バーボン、そして警察庁警備企画課、通称“ゼロ”のトップである降谷零警視正その人だった。
「安室さん、どうして・・」
「君達の正体を知っているのかって?公安を余り舐めない方がいい。もしかして、君達も“彼”に会いに来たのかな?」
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