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コチラからお借りいたしました。
「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。
作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「羅刹の研究は進んでいるか?」
「はい。蛍を新選組に入隊させたのは、その為です。あの雪村という蘭方医が作った変若水とやらの効果も、確めたいですし。」
「そなたには期待しているぞ、匡俊。」
「ありがたきお言葉・・そのご期待に沿えるよう、精進致します。」
“主”は、匡俊の言葉を聞いた後、満足そうに笑って扇子をパチンと閉じた。
「福子、居るか?」
「へぇ。」
「硯と筆を持ってきてくれないか?」
「わかりました。」
福子は、夫の言葉を聞いた後、何も言わずに部屋から出た。
一方、江戸の土御門邸では、匡俊の文を読んだ有仁が渋面を浮かべていた。
「どうかなさったのですか、旦那様?」
「全く、匡俊には困ったものだ。有匡には決して家督を譲るなと書いてある。」
「その文に、でございますか?」
「あぁ。」
有仁はそう言うと、匡俊の文を火鉢にくべた。
「最近、寒くなってきましたね。」
「あぁ。だが、江戸よりも京の方がもっと寒いだろう。有匡は少し寒さに弱い故、風邪をひいていなければいいが・・」
有仁は遠く京に居る有匡の身を案じながら、降り始めた雪を眺めた。
「有匡様、大丈夫ですか?」
「あぁ。少し油断していたな。」
京では、有匡が熱を出して寝込んでいた。
「濡れた髪をそのままにして寝てしまうなんて、自業自得だな。」
「ゆっくり休んで下さいね。」
「あぁ、そうする。」
「土御門さん、いらっしゃいますか?」
「山南さん、どうかされたのですか?そんなに慌てて・・」
「巡察に出た羅刹二人が、行方知れずとなりました。」
「そんな・・」
「この事は既に、土方君には報告済みです。あなたも羅刹捜索に加わって頂きたいのです。」
「申し訳ありませんが山南さん、有匡様は体調を崩してしまいまして・・代わりに僕が行きます。」
「いいえ、それには及びません。」
山南はそう言うと、襖を静かに閉めた。
「有匡さん、無理だって?」
「はい。」
「そうか。じゃぁ俺達で、羅刹を捜すしかないな。」
「早く見つけ出して、“始末”しないといけませんね。」
「あぁ。」
こうして土方達は、羅刹捜索へと向かった。
京の町に、しんしんと冷たい雪が降り始めた。
その中を、一人の少女が息を切らしながら走っていた。
「待て、小僧~!」
背後から、男達の怒号が聞こえて来て、少女―雪村千鶴はとっさに路地裏に隠れた。
「畜生、何処行きやがった!」
「何じゃ、貴様ら!?うわぁぁ~!」
突然男の悲鳴が聞こえたので、千鶴がそっと物陰から少し顔を出して様子を窺うと、男達は“何か”に襲われていた。
「ぎぁぁ~!」
「何じゃこいつは1」
けたたましく、おぞましい白髪紅眼の化物の哄笑が、夜の闇にこだました。
「ひっ」
涎を垂らしながら、化物は千鶴に襲って来た。
「血ヲ、血ヲ寄越セ~!」
「きゃぁ~!」
両手で顔を覆い、千鶴は目を閉じたが、痛みは襲って来なかった。
恐る恐る目を開けると、そこには浅葱色の羽織を着た二人の青年の姿があった。
「あ~あ、僕が先に仕留めようと思ったのに。はじめ君、相変わらず仕事早いよね。」
「俺は勤めを果たしたまでだ。」
そう言って総司が斎藤を見ると、彼は屠った羅刹の血で汚れた刀を懐紙で拭っていた。
「この子、どうするの?“あれ”、見ちゃったんでしょう?」
少し癖のある、栗色の髪を夜風になびかせた青年は、そう言いながら翡翠の瞳を千鶴に向けた。
「それは、俺達が決める事ではない。」
“はじめ君”と呼ばれた黒髪の男は、そう言うと千鶴の背後を見た。
砂を踏む音と同時に、刀の鯉口を切る音がした。
「逃げるなよ、背を向ければ斬る。」
なびく美しい漆黒の髪に、千鶴は目を奪われた。
その時、雲に隠れていた月が、男の美しい顔を照らした。
すっきりとした鼻筋に、血のように紅く美しい唇。
そして、宝石のような美しい紫の切れ長の瞳と目が合った瞬間、千鶴は気を失った。
「土方さん、この子、どうします?」
「屯所に連れて行け。そいつをどうするのかは、明日決める。」
歳三はそう言うと、刀を鞘におさめ、気絶している少女を優しく抱き上げた。
翌朝、千鶴が目を覚ますと、彼女は手足を縛られている事に気づいた。
「やぁ、起きたんだね?済まないねぇ、こんなに強く縛ってしまって。」
そう言いながら部屋に入って来た男は、千鶴のいましめを解いてくれた。
「あの、わたし、これからどうなるんでしょうか?」
「それは、これからみんなで、というよりトシさん達が決める事だから、わたしと一緒に来てくれ。」
「わかりました。」
千鶴が大広間に男と共に入ると、そこには昨夜会った黒髪の男が、眉間に皺を寄せて自分を睨みつけている事に気づいた千鶴は思わず俯いてしまった。
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