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コチラからお借りいたしました。
「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。
作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「おいトシ、そんなに睨んでいたら、この子はますます怯えてしまうだろう。」
「そうだよ土方さん、昨夜あんな怖い思いをさせちまったのに、そんなに睨んだらますます怯えちまうじゃん。」
そう言って千鶴に助け舟を出したのは、近藤と平助だった。
「別に睨んでいる訳じゃねぇ、今後の事を色々と考えていたんだよ。」
土方はそう言って軽く咳払いした後、千鶴にこう尋ねた。
「お前、名前は?」
「雪村千鶴と申します。江戸から、京で行方不明になった父を捜しに参りました。」
「おい待て、今雪村とか言ったな?まさか、お前綱道さんと関係があるのか!?」
「雪村綱道は、わたしの父です。」
「そうか。実は俺達も、綱道さんの行方を捜している所なんだ。あ、自己紹介が遅れたな、俺は近藤勇、新選組局長だ。そして俺の隣に座っているのはトシ、副長の土方歳三だ。」
「わたしは新選組副長の山南敬助です。さて、自己紹介を終えたところで、貴女の処遇をこれから決めたいと思います。土方君、何かいい案はありませんか?」
「女が新選組に居ると知ったら、隊内の風紀が乱れるし、かといって隊士にする訳にもいかねぇし・・誰かの小姓にした方がいいだろう。」
「じゃぁ、土方さん、お願いしますね。」
「はぁ!?何でそうなる!?」
「言い出しっぺの法則ですよ、土方君。」
歳三は舌打ちした後、溜息を吐いた。
「俺の隣の部屋を使え。」
「はい・・」
「食事は部屋に運んでおくから・・」
「ここでいつも食べればいいじゃん。」
「あの・・」
「あ、俺は藤堂平助。よろしくな、千鶴。」
「平助でいいよ、年も近そうだし。それに、堅苦しいのは余り好きじゃないんだよな。」
平助はそう言うと、屈託の無い笑みを浮かべた。
大広間の様子を密かに見ていた蛍は、そっと屯所の裏口から外へと出た。
「何か、動きはあったか?」
「雪村の娘が、屯所へ来ました。何か事情があるようです。」
「そうか。何か動きがあったら知らせろ。」
「はい。」
蛍が屯所へと戻った時、丁度有匡が縁側から出て来る所だった。
「お前、今まで何処に行っていた?」
「わたくしは、何も企んでおりません。」
「さぁ、どうだか。」
暫く二人は睨み合っていたが、有匡の方が先に視線を外して去っていった。
「有匡様、どうかされたのですか?」
「いや、何でもない。それよりも、広間の方が妙に騒がしいな?」
「あぁ、確か昨夜羅刹に襲われそうになった所を保護された娘さんが・・」
「そうか。」
「まぁ、暫くここに居るみたいですし、僕達も彼女に会えると思いますよ。」
火月の言葉通り、有匡は千鶴と屯所の厨で顔を合わせた。
「初めまして、雪村千鶴と申します。暫くこちらでお世話になります。」
「土御門有匡だ。こちらは、妻の火月だ。」
「よろしくお願いしますね。」
「はい。」
年が近く、同性同士という事もあってか、火月と千鶴はすぐに仲良くなった。
「火月さんも、江戸から来たのですか?」
「えぇ、有匡様を捜しに。」
「でもすぐにお会い出来て良かったですね。」
「大丈夫、千鶴さんのお父様もすぐに見つかりますよ。」
「そうだといいんですが・・」
二人の会話を聞きながら、有匡は一冊の書物に目を通していた。
それは江戸を発つ前、有仁から渡された物だった。
『父上、これは?』
『これは、ある人物の日記だ。読んでいけば、誰が書いたのかわかるだろう。』
有匡は書物を見ると、そこにはスウリヤの字で英語でこう書かれていた。
“愛しい我が子へ”
英語を独学で学んでいたので、その書物がスウリヤの日記であるという事がすぐにわかった。
そこには、有匡を有仁に託して去らざるおえなかった事情などが書かれていた。
(母上は、勝手にわたしを捨てたのではないのだな。)
だから、再開した時母は、“妻を大切にしろ”と自分に伝えてくれたのだ。
自分と同じ過ちを犯すなと。
今、母が何処に居るのかはわからない。
だが彼女と、また会いたいと有匡は思い始めていた。
長年抱いていた母への憎しみは、彼女と再会した事によって徐々に薄れていった。
「有匡様、お茶が入りました。」
「ありがとう。」
「それは?」
「これは、母の日記だ。江戸を発つ前、父がわたしに渡してくれた。」
「そうですか。それよりも、さっき山南さんが何処か深刻そうな顔をして自分のお部屋に入っていかれましたよ。」
「何だか、嫌な予感がするな。」
「えぇ。」
有匡の予想は的中し、大坂へ出張に行っていた山南が左腕を負傷した。
「土御門君、今よろしいですか?」
「はい。」
「あなたは、わたしの怪我の事を知っていますね?」
「はい。」
「そこで提案なのですが、あなたの血を頂けませんか?」
山南の言葉を受け、有匡は思わず腰に差してある愛刀へと手を伸ばしそうになった。
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