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2021.07.30
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※BGMと共にお楽しみください。

「薄桜鬼」・「名探偵コナン」のクロスオーバー二次小説です。

作者・出版社・制作会社などとは一切関係ありません。

捏造設定ありなので、苦手な方はご注意ください。


「安室さん、どうして僕達がここに来るってわかったの?」
「公園で君が刑事達と話をしている姿を、見ていたからね。それに好奇心が強い君の事だから、きっと“彼”がもう誰なのか気づいているんじゃないかと思ってね。」
「流石、三つの顔を使い分ける事が出来る訳ね。わたし達がここへ来る事を読んでいたって事ね。」
哀はそう言うと、溜息を吐いて首をすくめた。
「それで、どうするつもりなの?」
「さぁ、それは君次第さ、コナン君。」
零はそう言うと笑った。
「それで江戸川君、“彼”は一体何者なの?」
「土方歳三。幕末の頃新選組の“鬼の副長”と呼ばれて恐れられ、五稜郭の戦いで死んだけれど、遺体が見つかっていないから、一時ロシアで生存しているんじゃないかという話が出ていたみたいだ。」
「新選組といえば、今でも映画やドラマの題材にされる程人気なのよね。幕末を生きた坂本龍馬と同じ位人気があって、彼らが過ごした京都には、色々と彼らにゆかりのある場所を訪ねるファンも居るそうよ。」
「ふぅん。それでコナン君はいつ、“彼”が土方歳三だと気づいたんだい?」
「彼が握っていた懐剣に彫られた家紋だよ。左三つ巴の家紋の事を調べたら、自然とわかったんだ。」
「へぇ。さてと、立ち話はこれ位にして、“彼”に会いに行こうか。」
零はそう言うと、病室のドアをノックした。
「風見、“彼”の様子はどうだ?」
「今は薬で眠っています。」
零の部下である風見裕也は、そう言った後首を軽く傾げた。
「どうした、何かあったのか?」
「えぇ、実は・・」
風見は、数分前に起きた出来事を零達に話した。
今はベッドの中で眠っている男―土方歳三が、意識が戻った時、風見に向かってこう言ったという。
「山南さん、何であんたここに居るんだ!?」
その後、興奮状態になった歳三は看護師によって鎮静剤を打たれたという。
「その“山南さん”って、新選組総長で切腹した山南敬助の事じゃない?」
「彼の友人、でしょうか?」
「それは、後で彼に聞くしかないな。」
コナン達がそんな事を話している間、歳三は懐かしい夢を見ていた。
それは、戊辰の戦を終え、千鶴と夫婦となった頃のものだった。
「今年も綺麗に咲きましたね。」
「あぁ。」
蝦夷地の厳しい冬を越え、二人はあの時と同じように遅咲きの桜を見ていた。
「なぁ千鶴、何か俺に隠している事はねぇか?」
「実は・・」
千鶴はあの時、歳三との間に子を授かっていた。
だが、その子は産声を上げる事無く彼岸へと旅立ってしまった。
千鶴はその頃から体調を崩すようになったが、その事を歳三に隠していた。
そして―

(俺が、もっと気遣ってやっていれば・・)

“歳三さん。”

自分の名を呼び、優しい笑顔を浮かべてくれた千鶴は、もう居ない。

千鶴を喪った歳三は、魂の抜け殻となっていた。

(千鶴、お前に、もう一度会えたら・・)

「気が付いたみたいですね?」

歳三が目を覚ますと、そこには金色の髪に褐色の肌をした青年が自分の前に立っていた。

「てめぇ、何者だ?」
「はじめまして、“土方歳三”さん。僕は、降谷零といいます。さてと、色々と質問したい事は山ほどありますが、何故あなたが自殺をしようと思ったのか、その理由をお聞かせ願えませんかね?」
「・・お前ぇに話す事なんざ、何もねぇ。」
「あなたにはなくても、僕にはあるんですよね、聞きたい事が沢山。だから、協力してくれませんかねぇ?」
「嫌だ、と言ったら?」
歳三の言葉を聞いた零は、口元に笑みを浮かべると、スーツの胸ポケットから、“ある物”を取り出した。
「これ、ご存知ですよね?」
「てめぇ、それは・・」
「そう、あなたが若い頃に詠んだ、“豊玉発句集”の複写本です。」
「何だと・・」
「早速ですが、この複写本を英訳して、全世界にあなたの黒歴史を拡散させても良いんですよ?」
(うわぁ、えげつねぇ~!)
(流石公安ってところね・・)
二人のやり取りを傍で聞いていたコナンと哀は、そんな事を思いながら慌てふためく歳三の姿を見ていた。
「ちょっと、怪我人をいじめるのはそこまでにしておきなさいよ。あなた、この人に自殺しようとした理由を聞こうとしていたんじゃないの?」
「あぁ、そうでしたねぇ。」
(わざとね。)
(わざとだな。)
「ねぇ安室さん、どうしてこの人の事を調べているの?」
「それは、まだ君達には言えないなぁ。」
そう言ってコナン達に微笑んだ零だったが、その目は全く笑っていなかった。
「わたし、あなたみたいな完璧主義な人が自殺を図ろうとした理由が何となくわかったような気がするわ。そうね、最愛の奥さんの後を追おうとしたって事かしら?」
「何で、そんな事が・・」
「わかったかって?あなたが今もその手に握り締めているそのリボン、きっと亡くなった奥さんが最期まで身に着けていた物ね。あなたは京都で色々と浮名を流していたんでしょうけれど、奥さんの事を心底愛していたのね。」
「あぁ、そうだ。俺は千鶴の後を追おうとしていた。それなのにどうして・・」
「だったら、一度は捨てようとしていたその命、僕達の為に使ってくれませんかねぇ?」
「それは一体、どういう意味だ?」
「実は最近、この町で変質者が出没しているんですよ。目撃者からの情報によると、変質者の特徴は背丈があなたと同じ位で、金髪紅眼、そのターゲットは必ず女子高生かあなたと同じ年の成人男性・・」
歳三の脳裏に、ある男の顔が浮かんだ。
「その顔、どうやら犯人に心当たりがありそうですね。」
「まぁな。」
「さてと、これからあなたの処遇について色々と考えなければなりませんが、いくら公安の僕でも百五十年以上前に死んだ人間の戸籍を取り寄せるなんて神業は出来ませんから、新しくあなたの戸籍を作る事にして、さしあたっての問題は、仕事と住居ですね。コナン君、少し相談したい事があるから、ちょっといいかな?」
「うん。」
歳三の病室から出た零は、コナンにある提案をした。
「彼を工藤邸に住まわせたらどうだろう?」
「あ~、それは難しいかも。だって赤井さんとあの人、上手くいかなそうだし。」
「そうだったね・・」
FBI捜査官・赤井秀一は、“黒の組織”の目を欺く為、大学院生・沖矢昴として変装して生きてきたが、現在“黒の組織”の残党狩りの為に“赤井秀一”として工藤邸で暮らしていた。
「あの男と彼は、顔を合わせれば喧嘩しそうだ。」
「じゃぁ、小五郎のおっちゃんに頼んで、僕達と住めるようにするよ!あ、仕事は・・」
「僕が、“ポアロ”のマスターに頼んで、彼を雇って貰えるようにするよ。」
「決まりだな!」
「で、こいつが今日から居候する事になった・・」
「土方歳三だ。今日からよろしく頼む。」
病院を退院した歳三は、暫く毛利家に居候する事になった。
「俺は毛利小五郎、ここでは探偵事務所をやっている。それと、こっちに居るのが娘の蘭だ。」
「はじめまして。」
そう言って歳三を見ている蘭は、何処か嬉しそうだった。
「コナン、とかいったか?これから世話になるから、礼として料理を振る舞いてぇんだが、台所は何処だ?」
「あ、台所はここですよ。」
「そうか・・」
毛利家の台所に初めて足を踏み入れた歳三は、奇妙な道具が並んでいる事に驚いた。
「これは・・竈か?」
「あぁ、炊飯器といって、この丸いボタンを押したらご飯が炊けるんですよ。」
蘭から家電の使い方を説明されながら、歳三は自分達が生きた時代とは道具や生活様式が様変わりしている事に驚いた。
特に驚いたのは、重労働で会った炊事や洗濯などの家事が、“家電”というものによって簡略化された事だった。
(こんなにも家事が楽になる時代に千鶴と生きていたら、あいつも少しは長生きできたんだろうな・・)
米を研ぎながら、歳三はふと千鶴の事を思い出しては感傷的になってしまった。
「何だ、これは?」
「カレーですよ?」
「この泥水みてぇな汁の中には、何が入っているんだ?」
「牛肉と炒めた玉ネギと人参、ジャガイモと、カレー粉ですよ。」
「食えるのか?」
「大丈夫ですよ。」
その日の夜、歳三はカレーライスを食べて、その美味さに思わず唸った。
「美味ぇ!」
「だろう?蘭が作るカレーは絶品だからな!」
こうして、歳三の現代での生活が始まった。
「おはようございます。」
「あれぇ、土方さん、朝ご飯作ってくれたんですか!?別に良いのに。」
「いえ、これ位させて下さい。はい、どうぞ。」
そう言って歳三が食卓に並べたのは、焼鮭と味噌汁、白米の和定食だった。
「頂きま~す!」
「美味ぇな!いつも朝は洋食だが、偶には和食もいいな!」
小五郎はその日、朝から上機嫌だった。
「ねぇ土方さん、その格好だと目立つから、安室の兄ちゃんが服を買いに行こうって。」
「わかった。」
コナンと共に歳三が待ち合わせの場所へと向かうと、そこには零ではなく風見の姿があった。
「何でてめぇがここに居る!?」
「降谷さんは別件で手が放せないようなので、今日はわたしがお供致します。」
「ったく・・」
こうして三人は近くの大手衣料品店へと向かったのだが―
「キャ~!」
「何あの人、凄いイケメン!」
「モデル?それとも俳優さん?」
歳三が店に入ると、彼の姿を見た女性達が急に色めき立った。
結局、服を買うのに一時間もかかってしまった。
「洋装ってのは、何だか窮屈で仕方ねぇな。」
歳三は薄手のジャケットを羽織った後、そう言ってサングラスをかけた。
スキニーのデニムは彼のスタイルの良さを際立たせ、道を歩いているだけでも女性達から熱い視線を注がれていた。
その事に、本人はまんざらでもないようだった。
(あ~、何だか嫌な予感がする・・)
「では、わたしはこれで。」
風見と“ポアロ”の前で別れたコナン達が店の中に入ると、店内に居た女性客達は歳三に熱い視線を向けた。
「いらっしゃいませ。安室さんから聞いていますよ。わたし、榎本梓といいます。よろしくお願いします。」
「土方歳三だ。今日から宜しく頼む。」

歳三の姿に、“ポアロ”の常連客達は、“ポスト・アムピ登場か!?”とSNSで盛り上がっていた。

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Last updated  2021.07.31 07:37:18
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