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2021.08.07
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「薄桜鬼」・「名探偵コナン」のクロスオーバー二次小説です。

作者・出版社・制作会社などとは一切関係ありません。

捏造設定ありなので、苦手な方はご注意ください。


「いらっしゃいませ~」

歳三が現代へとタイムスリップし、毛利家に居候し、“喫茶ポアロ”で働き始めてから一週間が過ぎた。

「土方さんが来てくれて、本当助かります。今まで食事はわたし一人でやっていたから・・」
「いやぁ、俺も千鶴と所帯を持ってから色々と家事をしていましたから、まだ不慣れなものですよ。」
「それでもすごいですよ。」
「そうですかね・・」
いつものように、歳三が作った朝食をコナン達が食べていると、外から大きな音が聞こえた。
「何、今の?」
「さぁな。」
その後、歳三は学校へと向かうコナンと蘭を見送ると、“ポアロ”へと出勤した。
「おはようございます。」
「土方さん、おはようございます。」
「おはようございます、榎本さん。」
「安室さんは、風邪をひいたそうで、数日休むそうです。」
「風邪、ねぇ・・」
歳三がそんな事を呟きながらモーニングの準備をしていると、店のドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ~」
店に入って来たのは、サングラスをかけ、初夏だというのに厚手のコートを着た男だった。
「ご注文は?」
「この“朝定食”を頼む。」
「かしこまりました。」
歳三がそう言って厨房へ向かった後、 謎の男がサングラスを外した。
彼は、喫茶店巡りをしてはその店の料理の評論をする、グルメブロガーである。
最近、この町にある“喫茶ポアロ”の朝定食が美味いという噂を聞きつけ、やって来たのだった。
(さて、頂きましょうか・・)
男はそう思いなが箸で焼き鮭を一口大に切り分け、それを食べると、彼はその美味さに思わず呻きそうになった。
(良い焼き加減・・しかも、鮭本来のうまみを引き出している!)
いつの間にか、彼は“朝定食”を完食していた。
「ご馳走様でした。」
「ありがとうございました。」
“ポアロ”を出た後、男は帰宅するなり思いの丈をブログに綴った。
「何だか最近、“朝定食”を注文される方が多いですね。」
「あぁ、一昨日うちに来たお客様がブロブに“朝定食”の事を紹介してくれたんですよ、ほら。」
そう言って梓が零に見せたのは、件のグルメブロガーのブログだった。
“奇跡、これは奇跡としか言いようがない!良い焼き加減の鮭と、炊き立ての白米との相性が抜群だ!”
「ちょっと大袈裟過ぎませんか?」
「いいじゃないですか、この店の宣伝になるんだし・・」
「そうですね。それにしても、今日も女性のお客様が多いような気がしませんか?しかも年齢層が少し高めの。」
「多分、土方さん目当てでしょうね。安室さんはほら、気さくな感じでJK達から人気でしょう?でも土方さんは、落ち着いたデキる大人なイメージがありますよねぇ。」
「はは、そうですか。それで、土方さんはどちらに?」
「あ、さっき買い出しを頼んでスーパーに行ってくれたんですが、中々戻って来ないですねぇ。」
「まぁ、そのうち戻って来るんじゃないですかねぇ?」
零はそう言いながら、仕事に戻った。
同じ頃、哀とコナンは少年探偵団と共に米花商店街の中にあるスーパーへと来ていた。
「なぁ、あれ土方の兄ちゃんじゃね?」
「何しているんだろう?」
元太達がそう言いながら見ているのは、自動ドアの前で右往左往している歳三の姿があった。
「土方さん、どうしたの?」
「ああ、お前らか・・助かった、今困っている所なんだ。」
「え?」
コナンと哀が歳三から事情を聞くと、歳三は自動ドアから中々スーパーの中へと入れず、困っていた。
「大丈夫ですよ、僕についてきて下さい!」
何とか光彦と元太に手をひかれながら無事にスーパーの中へと入れた歳三だったが、今度は売り場が広過ぎて目的の物が中々見つからなかった。
「えぇと、これが“あいすくりぃむ”と・・」
「ちょっと、アイスクリームは溶けるから最後に買いなさい。常温保存の物を先に買った方が良いわ。」
「あぁ、そうだな。」
ひと通り買う物をカゴの中に入れて歳三がレジへとカートを押していると、彼はある物の前で止まった。
「ちょっと、どうしたの?」
哀が、歳三が見つめている物を見ると、それは沢庵のパックだった。
「行くわよ。」
「わかったよ・・」
歳三は溜息を吐くと、スーパーから出て“ポアロ”へと戻った。
「只今戻りました。」
「随分遅かったじゃないですか?」
「えぇ、でもこの子達が助けてくれました。」
「へぇ。」
ランチタイムを過ぎた“ポアロ”には、ゆったりとした時間が流れていた。
「はぁ、疲れた・・」
「それもそうよねぇ、色々とあったもの。」
哀はそう言うと、溜息を吐いた。
「土方さん、今日はもう帰ってもいいですよ。」
「わかりました。」
“ポアロ”を出て毛利家の中へと入った歳三は、リビングに入ると着替えもせずそのまま眠ってしまった。
『降谷さん、例の件ですが、犯人が捕まりました。』
「そうか。」
『あの土方という男は、あの探偵の所に?』
「あぁ。彼は完全とまではいかないが、すっかりここに馴染んだようだ。」
『また何か動きがあったら報告致します。』
風見は零との通話を終えた後、自分の前に座っている金髪紅眼の男を見た。
「さてと、あなたには色々と尋ねたい事が山程あります。」
「ふん。」
男―風間千景は、机に足を乗せたまま風見を睨みつけた。
「あなたは、一体何の目的で彼らを・・」
「愚問だ。俺は薄桜鬼を我妻にする為・・」
「もうその話は良い。」
(降谷さん、助けて下さい・・)
「へっくしょい!」
「土方さん、どうかされましたか?」
「いや、何でもない・・」
「風邪ですか?」
「さぁな。ここ最近、誰かに見られているような気がするんだが・・」
「あぁ、土方さんって最近人気がありますからね。ほら、この前だって沢山ラブレターを貰っていたじゃないですか!」
「あぁ、そうでしたね。」
恋文は京に居た頃から山のように貰っていたが、それは現代になっても変わらなかった。
まぁ、昔のように実家に送ったりすることはできないので、それらは全てゴミに出している。
「それにしても、土方さんっておいくつなんですか?」
「三十八ですが・・」
「えぇ、嘘!」
「何もそんなに驚く事ないでしょう。」
「だって安室さん三十二なのに若いんですよ!お二人共一体何処の化粧品を使われているんですか!?」
「何も使っていませんよ。」
「え~、うらやましい!」
「そんな事ないですって。」
梓と歳三がそんな事を話していると、店のドアベルが鳴った。
「すいません、今は準備中で・・」
「漸く会えたな、薄桜鬼よ!」
“ポアロ”に入って来た千景は、そう叫ぶと歳三に抱きついた。
「てめぇ、何しやがる!」
「ふふ、つれないな。」
歳三から頬を張られても、千景は何処か嬉しそうな顔をしていた。
「土方さん、この人は・・」
「こいつは俺のストーカーだ。」
「“朝定食”を頂こうか?」
「準備中だって言ってるだろうが!」
「そんなに怒るな。」
「うるせぇ、さっさとここから出て行け!」
「また来るぞ。」
歳三は“ポアロ”から出て行く千景に向かって塩を撒いた。
「どうしたの、暗い顔をして?」
「いや、最近変な客が来て困っているんだ。」
「変な客?」
歳三が“ポアロ”で仕事をしながら溜息と共に哀に対して愚痴を吐いていると、店に千景が入って来た。
「また来たぞ。」
「帰れ!てめぇに出す茶はねぇぞ!」
「ふん、相変わらず愛想がないのだな。」
「お前、いつからここに居るんだ?」
「貴様に会いにわざわざ薩摩から蝦夷地まで船で行こうとしたら、途中で海に放り出されてな。気がついたらここに居たという訳だ。」
「そうか。それで、今更お前が俺に何の用だ?」
「・・養って欲しいのだ。」
「いつもお前ぇの近くに居るあの二人はどうした?」
「天霧は、お前に会いに行くのを止めようとしたが、その事で奴と喧嘩別れしてしまった。」
「そうか。」

(天霧さえいてくれれば助かるんだがな・・)

いつも自分達にちょっかいをかけてくる千景をたしなめくれる天霧が居ないとなると、かなり困った事になる。

「あのな、養えって急に言われてもな、はいそうですかって言えるか!」
「今日から世話になる。」
「人の話を聞け。」
「何だか、大変な事になりそうね。」
「はは、そうだな・・」

こうして、千景は毛利家に居候する事になったのだが―

「こら風間、洗った食器はすぐ水につけろと言っただろう!」
「てめぇ、何で俺が掃除した端から汚すんだ!」

(まぁ、こういうことは予想していたが‥何かもう、土方さん血圧上がって倒れそうだなぁ。)

千景が毛利家に居候してからというものの、毛利家の朝は歳三の怒声から始まるようになった。

「いつまで続くんだろ?」
「さぁな。」
「風間さん、家事をしてくれれば助かるのになぁ。」
「あいつには無理だろ。」

いつしかコナン達は、歳三の怒声に慣れっこになっていた。
それと比例するかのように、歳三は徐々にやつれていった。

「土方さん、大丈夫ですか?」
「すいません、最近疲れてしまって・・」
「あぁ・・そういえば、最近毛利家に新しい下宿人が来たとか。」
「下宿人じゃなくて居候ですよ。しかも、家事を全くしないタダ飯喰らい・・」

歳三がそんな事を梓に愚痴っていると、一人の客が入って来た。

「キャ~、何あの人!」
「イケメン!」

女性客は、彼が店に入って来た途端、黄色い悲鳴を上げた。

(何だ、こいつ?)

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Last updated  2021.08.08 18:07:16
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