「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。
歳三がお色直しの為に席を外した途端、女性達が一斉に勇の方へと集まって来た。
「あなたが、歳三様の背の君様?」
「良い男ねぇ!」
「歳三様とはどのようにお知り合いに?」
「あのぅ、えぇと・・」
女性達から解放されたのも束の間、今度は男性達から酒をしこたま飲まされてしまい、酔い潰れてしまった。
「立てよ、こら!」
「ったく、あれ位で酔っぱらうとは、情けねぇなぁ!」
「人間の男はこれだからよぉ~!」
「てめぇらぁ~!」
「ひぃっ!」
「鬼っ娘だ、逃げろ!」
樽の中に顔を突っ込んでゲェゲェえずいている勇を男性達が囃し立てていると、そこへ鬼のような形相で彼らの元へ歳三がやって来た。
「客人をこんなにするまで飲ませやがって・・」
「俺ぁ悪くねぇ、こいつが先に・・」
「何言うだ、お前ぇが・・」
「こいつに酒飲ませてみっぺって言いだしたのは、お前ぇでねぇか!」
「てめぇら、黙りやがれ!今から全員、俺の部屋へ来い!」
「ひ、ひぃぃ!」
「あんた達、自業自得だよ!」
「助けてくれよ~!」
「やだよ~、そんな事したらあたしらの首が飛んぢまうもの!」
「後生だ、助けてくれたら、おめぇが欲しがっていた黄楊の櫛さやるから・・」
「何していやがる、さっさと来ねぇか!」
「ひぃぃ~!」
「あ~あ、やっちまったなぁ。」
「うんだ、トシ様の“仕置き”はおっかねぇんだもの。」
女中達がそんな事を言いながら洗い物をしていると、歳三の部屋から男達の悲鳴が聞こえた。
「ん・・」
「あれぇ、気づきなすったのねぇ。」
勇が目を開けると、そこには一人の婀娜な女が彼の前に座っていた。
白粉を塗りたくったような、病的なほどに蒼褪めた彼女の生気を失いつつある目元には、深い皺が刻み込まれていた。
「ねぇあんた、あんなじゃじゃ馬なんかと所帯を持つのをやめて、あたしと一緒にならないかい?」
「い、いえ、俺は・・」
「うふふ、可愛いねぇ。」
女はそう言った後、蛇のように長い舌で勇の頬を舐めた。
「さぁ、あたしのものにおなりよ。そうしたら・・」
「失せろ!」
「ぎゃぁ~!」
女が突然両手で顔を覆って叫んだので、勇が振り向くと、そこには塩が入った壺を抱えた歳三が部屋の入り口に立っていた。
「またてめぇか、蛇妃!」
「おのれぇ・・」
「歳三、どうした!?」
「蛇がこの部屋に紛れ込んだ!」
「御免!」
小気味の良い音がして襖が開いた後、月の方が呪を唱えると、蛇妃は悲鳴を上げながら霧散した。
「殺ったか?」
「あぁ。あいつは恐らく、あの洞穴の中に居たのと同じやつだ。」
「そうか。それよりも、とんだ新婚初夜となってしまったなぁ。」
「あぁ・・」
「今夜は遅い故、ゆっくりと休むといい。」
「わかった。」
月の方はちらりと勇の方を見て笑うと、部屋から出て行った。
「あ、あの・・」
「何だ?」
「初夜という事は・・つまり、あなたと、“そういう事”をするんですよね?」
「あ、あぁ・・おい、一応あいつらの手前、俺達が“夫婦”だと、色々面倒な事がなくていいだろう?」
「ま、まぁ、そうだが・・」
「明日は早いから、もう寝るぞ!」
「はい・・お休みなさい。」
その日の深夜、月の方はある場所へと向かっていた。
「元気そうじゃ。」
「兄様は・・歳三兄様は無事なのですか!?」
「安心しろ、あの者は人間の男を連れて妾に挨拶をしに来た。」
「いつになったら、わたしをここから出してくれるのですか!?」
「そなたらは人に仇なす妖、生かしてはおけぬ。」
「そんな・・」
「その涙じゃ、妾が見たかったものは。」
月の方は、千鶴の頬に伝う涙を見て嬉しそうに笑った。
その涙は、美しい金剛石と化した。
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