JEWEL

2022/02/17(木)17:06

太陽と月 (十二)

薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て(20)

画像はコチラからお借りいたしました。 「薔薇王の葬列」二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 帝―ヘンリーが息を引き取った後、雨は一月も振り続けた。 「一体、リチャードは何処に?」 「申し訳ありません、使用人総出で、リチャード様の行方を捜しているのですが、見つからず・・」 「もう良い、さがれ。」 「は・・」 ヨーク公は、使用人を下がらせると、大きな溜息を吐いた。 「父上、ジョージです。入ってもよろしいでしょうか?」 「あぁ。」 「リチャードの行方を、バッキンガム公が密かに探っているようです。」 「帝の乳兄弟であるバッキンガムが何故リチャードを?」 「それはわかりませんが・・やはり許婚の安否が気になるのでしょうね。」 「許婚といえば、ネヴィル家のイザベル様とは上手くいっているか、ジョージ?」 「父上、それは・・」 「ジョージ、運命の相手を見つけたのなら、その相手の手を離してはならないよ、わかったね?」 「はい、父上・・」 一月も都に振り続けた雨は、疫病をもたらした。 「これは、鬼の祟りですわ!弘徽殿女御様、わたくしに良い考えがございます。」 「それは何だ?」 エリザベスは口端を上げて笑うと、弘徽殿女御の耳元に何かを囁いた。 「それは良い事だ。」 弘徽殿女御は、すぐさまリチャードを討つよう命じた。 「父上・・」 「ケイツビー、ひとつ頼まれてくれるか?」 「はい。」 リチャードは、あの酒呑童子が棲んでいたとされる大江山の近くにある洞窟の中に居た。 ―姫様、誰かに苛められたの? ―可哀想。 全身傷だらけになったリチャードが疲れて寝ていると、そこへ小鬼達がやって来た。 暫くすると、洞窟の入口の方から微かな物音が聞こえて来た。 「こんな所に居たのか・・月読の君。」 「バッキンガム、どうしてここがわかった?」 「あんたが、鬼の気―陰の気が強いこの山に居る事位わかっている。どうして、こんな所で引き籠もっているんだ?」 「お前には関係の無い事だ。」 リチャードはそう言ってバッキンガムに背を向けると、バッキンガムはその華奢な身体を抱き締めた。 「何をする!」 「あんたに、こんなに暗くて寂しい所は似合わない。俺と一緒に戻ろう。」 「うせろ!」 「・・仕方無い、あんたの気が変わるのを待っている。」 バッキンガムが去った後、リチャードは冷たい岩の上に横になって眠った。 ―ここに居たのか。 生ぬるい風が吹き、洞窟の中に後宮で会った鬼が入って来た。 ―俺と共に行こう、姫よ。 鬼はそう言うと、そっとリチャードの身体を横抱きにし、洞窟から去っていった。 「ん・・」 リチャードが目を覚ますと、そこは冷たくて暗い洞窟の中ではなく、寝心地の良い御帳台の中だった。 「目が覚めたか?」 「お前は・・」 「酷い顔をしているな。食事の前に湯浴みを済ませよ。」 鬼に言われるがままに、リチャードは汚れた髪と肌を清めた。 「何故、俺を助けた?同族の誼でか?」 「それもあるが、そなたを妻として迎える為だ。」 「俺は、誰も愛さない。」 リチャードはそう言うと、鬼にそっぽを向いた。 「若様、お館様がお呼びです。」 「わかった、すぐ行く。」 鬼はそう言うと父が待つ寝殿へと向かった。 「父上、お呼びでしょうか?」 「都で疫病騒ぎを起こしている鬼姫を匿っているそうだな?」 「はい。それは彼女を妻として迎え入れたいと思います。」 「それは出来ぬ。そなたと鬼姫は血が繋がった兄と妹。」 「何と・・」 「あの娘・・安子には酷な事をした。人との間に子を成し、一人で苦しませた末に死なせてしまった。」 「安子様・・わたしの母上ですね。」 「鬼姫は何処に?」 「わたしが用意した局で休んでおります。」 「そうか。では、後で鬼姫をこの局に呼べ。」 「はい・・」 リチャードが眠っていると、外から微かな物音がした。 「漸く見つけたぞ、月読の君・・リチャード。」 「どうして、こんな所に・・」 「あんたを迎えに来た・・妻として。」 「妻ならば、あの娘が居るだろう?俺に構うな。」 「わかっていないな、あんたは。」 バッキンガムはそう言うと、リチャードの唇を塞いだ。 「俺は、あんたみたいな高貴な女が好きだ。」 「それはガキの頃に一度お前から聞いた。」 リチャードはそう言うと、バッキンガムを睨んだ。 「離せ!」 「離さない。俺は、ずっとあんたが好きだった。」 「貴様、そこで何をしておる?」 鬼―安高はそう言うと、バッキンガムを睨んだ。 「俺は妻を迎えに来ただけだ。」 「ほぉ?」 安高の紅い瞳が、剣呑な光を宿した。 「我が妹を妻として迎えるだと?人間風情が、ふざけた事を・・」 「俺は本気だ。」 「ならば、この兄の前で我が妹を抱いてみよ。」 バッキンガムは、リチャードの耳元でこう囁いた。 「今からあんたを抱く、いいな?」 「・・好きにしろ。」 リチャードが都から姿を消して、半月が経った。 「父上、父上!」 「どうした、ジョージ?」 「リチャードが、リチャードが・・」 「お館様、リチャード様がお戻りになられました!」 「何だと!?」 ヨーク公が寝殿から渡殿へと出ると、丁度リチャードがバッキンガムに身体を支えられながら姿を現したところだった。 「父上・・」 「リチャード、息災で何よりだ。」 「長らく文も寄越さず、申し訳ありませんでした。」 「早く中へ入りなさい、身体を冷やしてはいけない。大切な身体なのだから。」 「はい・・」 そう言ったリチャードの下腹は、大きく迫り上がっていた。 程なくして、リチャードは元気な男児を産んだ。 「可愛い子だ。」 「父上、この子を抱いてやってください。」 ヨーク公がリチャードから赤子を受け取ると、赤子は金と銀の瞳で彼を見つめて来た。 「鬼姫が戻って来ただと?それはまことか!?」 「はい・・それが・・」 女房からリチャードが出産した事をしった弘徽殿女御は、烈火の如く怒り狂った。 「ただちに兵をヨーク邸へ向かわせろ!」 「はっ!」

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