JEWEL

2022/03/21(月)16:28

幸せを呼ぶクッキー第5話

薄桜鬼 現代妖パラレル二次創作小説:幸せを呼ぶクッキー(8)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。 制作会社様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 「まぁ、初対面の方にそんな事言われるなんて、初めてですわ。」 歳三はそう言って自分に話し掛けて来た仲居を見た。 「ここは、訳有りな人達が集まっている宿なんだよ。板長の友さんは、元ヤクザだし。」 「へぇ、そうなんですか。最近、ここで働いている人達が次々と消えていっているのは・・」 「それは、わからないね。人事は、女将さんが仕切っているからね。」 「へぇ~」 「あんたは見た所、素人でもなさそうだから・・ここからすぐに追い出されないだろうね。」 旅館の仕事は、歳三が思っていたよりも重労働だった。 「あ~、疲れた。」 『あなた、お仕事お疲れ様です。』 「千鶴、一人で店番させて済まねぇな。」 『いいえ。それよりもあなた、浮気していませんよね?』 「あぁ・・」 『浮気したら、どうなるかおわかりですね?』 スマホの画面越しでも、千鶴の妖気が歳三にはわかった。 「わかっているよ・・」 『お仕事、頑張ってくださいね。』 (おっかねぇな・・まぁ、そういうところが好きなんだがな。) これが惚れた弱みか、歳三がスマートフォンを自分のロッカーにしまっていると、そこへ仲居の桂子さんがやって来た。 「ねぇ豊さん、今夜カラオケにでも行かない?」 「え~、いいんですか?」 「いいのよ~、今日は、あんたの歓迎会なんだからさ。」 「うわぁ~、嬉しい!」 歳三が旅館に潜入してから数日後の夜、彼の歓迎会が旅館内のカラオケラウンジで行われた。 「あ~、美味しい!」 「豊さん、あんたはここへ来る前、何をしていたんだい?」 「う~ん、わたし実は、付き合っていた男に騙されて、借金取りから逃げて来たんです。」 「そりゃ、大変だったね。」 「ええ・・」 「さ、飲みな!」 「ありがとうございます~!」 歓迎会の後、歳三は恵美の部屋へと向かった。 そこには、誰も居なかった。 歳三は、恵美のパソコンを起動させたが、従業員名簿を見る為にはパスワードが必要だった。 (クソ、用心深い女だな。) 歳三が部屋から出ると、廊下から彼女がやって来るのが見えたので、彼はとっさに狐へと姿を変え、近くの縁の下へと逃げ込んだ。 「女将、桂子です。」 「どうした?」 「実は、折り入って話したい事が・・」 「入りな。」 恵美がそう言って桂子を睨みつけ、自分の部屋へと招き入れた。 「“例の娘”ですが・・」 「見つかったのかい?」 「いいえ・・」 「そう。下がりな。」 恵美はそう言って舌打ちすると、誰かに電話を掛けていた。 『“あの娘”は見つかったのか?』 「いいえ、まだ・・」 『早く見つけ出せ。もう時間はないぞ。』 「かしこまりました・・様。」 (女将の裏には、黒幕が居るって事か。暫く、女将の周りを探ってみるか。) 数日後、歳三は恵美が車で、一人で出掛ける姿を見た後、彼女を尾行した。 彼女が車を停めたのは、“自殺の名所”とされるダムの近くだった。 「申し訳ございません・・」 「全く、お前には失望したよ。」 冷たい男の声が聞こえた後、恵美の絶叫がダムの方から聞こえて来た。 そして、ダムは不気味な静寂に包まれた。 「隠れていないで出て来い。」 「その声・・やはりてめぇか。」 「九美の狐か、千年振りだな。」 そう言って口元に笑みを浮かべた男は、かつて千鶴とその腹の子の命を奪った天敵だった。 「お前ぇは・・」 「ここへ来た事だけは、褒めてやろう。」 「てめぇだけは、許せねぇ!」 歳三はそう叫ぶと、巨大な“気”を男にぶつけた。 「くっ・・」 男は、顔に傷を受けるとそのまま姿を消した。 (これから、楽しくなりそうだ。) にほんブログ村

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