2024/10/28(月)16:40
蒼き血の契り 第1話
「火宵の月」二次小説です。
作者様・出版社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「姫様、どちらにおられますか~?」
「姫様~!」
海底の、人魚達が住む王国では、金髪紅眼の人魚達が何やら慌てふためいた様子で“誰か”を捜していた。
その“誰か”とは、この王国の第一王女・火月だった。
この日18歳の誕生日を迎える彼女は、結婚相手を見つめる為の宴に出席する事になっていたが、火月は結婚するのが嫌で、宴が開かれている王宮から抜け出し、“ある場所”へと向かった。
そこは、彼女が見つけた、秘密の場所だった。
難破船から海の底へと沈んでいった、様々な人間の物が、そこには集められていた。
食器類、装身具類、そして地球儀・・火月が初めて目にする物ばかりだった。
(いつか、人間の世界で暮らしてみたいな・・)
そんな叶わぬ願いを抱えながら、火月は紅玉と真珠のティアラを頭に被った。
「うわぁ、綺麗・・」
火月の金髪に、そのティアラはよく映えていた。
「火月、またここに居たの!?」
「禍蛇・・」
洞窟の入口の方から声がしたので火月が振り向くと、そこには黒髪の人魚―火月の従妹・禍蛇が居た。
禍蛇は、そっと火月の手を取り、洞窟から出て行った。
「ねぇ火月、あの噂、知ってる?」
「噂?」
「火月がよく行っている洞窟の近くに、黒魔術を使う呪術師が居るんだって。何でもそいつ、どんな願いでも叶えてくれるんだって。」
「本当!?」
「あ、あくまで噂だから!」
火月が興味深そうな様子で自分の話を聞いている事に気づいた禍蛇は、慌ててその話をやめた。
「火月、遅かったな。」
「申し訳ありません!」
「まぁいい、宴を始めるとしよう。」
宴の後、火月は自室に入り、頭に被っていたティアラを外した。
「火月、今いい?」
「うん・・」
「ねぇ、そのティアラ、あの洞窟で見つけたの?」
「似合う?」
「うん、良く似合っているよ。それよりも火月、もうあの洞窟には行かない方がいいよ。」
「どうして?」
「どうしてって言われてもね・・」
禍蛇はそう言った後、溜息を吐いた。
彼女の脳裏に、祖父と交わした会話がよみがえった。
『禍蛇、火月はまたあの洞窟に行ったのか?』
『はい・・』
『あそこには、魔物が棲んでいる。火月には、あそこへ近づけさせるな。』
『うん、わかった。』
禍蛇は、火月に祖父との会話の事を話そうとしたが、やめた。
「ねぇ、何か聞こえない?」
「え?」
「ほら、上の方から・・僕、行って見て来る!」
「火月、待って!」
自室から出て行った火月を、慌てて禍蛇は追い掛けた。
火月が向かったのは、海上だった。
そっと水面から顔を出した彼女は、空に浮かぶ綺麗な花火を見つめた。
「綺麗・・」
「もぉ~、早く戻ろうよぉ~!」
「待って、もう少しだけ・・」
火月がそう言って暫く花火を見つめていると、船の方から何かが落ちたかのような音がした。
「なに、今の!?」
「行ってみよう!」
火月と禍蛇が船の方へと向かうと、一人の男が気絶している事に気づき、彼女達は男を安全な場所へと移動させた。
「ねぇ、死んでいるの?」
「ううん、気を失っているみたい。あ、もしかして・・」
火月は、人間が溺れた時に助ける方法を突然思い出し、男の唇に己のそれを重ねた。
「か、火月!?」
火月が息を吹き込むと、彼は水を吐き出し、激しく咳込んだ。
「火月、早く海に戻らないと!」
「わ、わかった・・」
男は低く呻くと、海の底へと潜ってゆく“何か”を見つめた。
それを追い掛けようとした彼は、波打ち際で光る“何か”を見つけた。
(何だ?)
それは、紅玉(ルビー)の耳飾りだった。
「殿下、ご無事ですか~!?」
「誰か、担架を持って来い!」
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