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JEWEL

全57件 (57件中 21-30件目)

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完結済小説:白昼夢

2015.06.06
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「トシ、一体あの子とはどういう関係なのよ?」

琴枝は総司を襲い、一に殴られた後、歳三に車に乗せられた。
その後彼女は、総司と歳三の関係を詰問した。

「昔の知り合いだって言ってるだろう。」
「あの子、トシの事が好きみたいね。トシ、まさかあの子とヨリを戻すつもりはないわよね!」
「そうするつもりはねぇよ、安心しろ。」
「そう・・ならよかったわ。」
琴枝はそう言うと、安堵の表情を浮かべた。
「あのね、今日は色々とトシと話がしたくて来たのよ。」
「話?」
歳三が形の良い眦を上げ、琴枝を見た。
「話って、式場の事とかドレスの事とかよ。」
琴枝はそう言うと、バッグの中から人気がある結婚式場のパンフレットを取り出した。
「まだ早いんじゃねぇのか。」
「何言ってるのよ、トシ! 結婚式は一世一代の晴れ舞台なのよ! 早めに準備しておかないと!」
琴枝の言葉に、歳三は“またか・・”と思いながらも、彼女とともに式場のパンフレットを見た。
その後琴枝とともに、歳三は人気のある式場の予約を済ませ、披露宴会場には都内の高級ホテルを予約した。
「後はドレスね。トシ、今週末は空いているかしら?」
「ああ。」
今週末は信子に招待されているホームパーティーがあるのだが、そんな事は琴枝にとっては関係ないらしい。
彼女はいつも自分の都合を優先させることで、他人の都合などお構いなしなのだ。
「済まねぇが、週末には姉貴からパーティーに誘われてんだ。」
「そう。じゃぁわたしも行くわ。」
琴枝の言葉に、歳三は溜息を吐いた。
どうやら彼女は四六時中自分と一緒にいないと気が済まないらしい。
「突然来られても姉貴が迷惑がるだろう。」
「大丈夫よ。だってもうすぐ親戚になるんだから。」
琴枝はそう言うと、歳三にしなだれかかった。
『で、琴枝さんが来ることになった訳?』
「ああ。突然の事で済まねぇな、姉さん。」
電話口で不満そうに話す姉の声を聞き、歳三は溜息を吐いた。
彼女は琴枝に対して良い印象を抱いていないらしく、携帯を片手に顰め面をしているに違いない。
『トシ、解っていると思うけど、琴枝さんに振り回されないようにしなさいね。あの子はいつも相手の都合を考えずに・・』
「解ってるよ、姉さん。じゃぁおやすみ。」

姉との通話を終え、携帯を枕元に置くと、歳三は再び溜息を吐いた。
琴枝は自分と本気で結婚しようとしている。

彼女の実家はその名を知らぬ者など居ないと言う屈指の大財閥で、土方財閥とひけはとらないだろう。
生まれながら経済的に恵まれ、何不自由ない生活を送り、家事と育児の全てを女中達に任せきりにしている母親と、会社を大きくすることしか頭にない仕事人間の父親との間に生まれた彼女は、両方の祖父母や両親から過剰ともいえる愛情を与えられ、その結果大変自己中心的な女性に育ってしまった。
自分の都合を最優先し、他人の都合などを一切考えず、同じレベルの女性にしか友情を示さない琴枝と、穏やかな家庭を築けるのだろうか。

(琴枝には何かが足りねぇ。あいつといつも居ると疲れる・・)

総司と短い間だが、彼と共に過ごす時間は歳三に束の間の安らぎを与えてくれる。
琴枝と居ると、徐々に心が疲弊している気がした。
今日1日中彼女に連れ回されただけでも激しい疲労感があるのに、この先何十年も彼女と暮らさなければならないと思うと、頭が痛くなる。

だが今日の事があるし、彼女に別れを切りだすのは少し時間が経ってからにしよう。






Last updated  2015.06.07 15:21:22
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「あなたは・・」
確か歳三によく話しかけていた青年だ。
「あ、君は確か沖田総司さんでしょう?」
翠の瞳を輝かせながら、青年はそう言って総司を見た。
「ええ、そうですけど・・あなたは?」
「僕は大鳥圭介。新宿警察署に何かご用でも?」
「ここ、警察署だったんですか。あの、土方さんに少しお礼を言ってから帰りたいのですが・・」
「そうなんですか、じゃぁ一緒に行きましょう!」
圭介は何を思ったのか、そう言って総司の手を掴むと歩き出した。
「え、あの・・」
「土方君、いるかい?」
大鳥が捜査一課の部屋に入ると、歳三があからさまに嫌そうな顔をした。
「なんだ、またあんたか。そんなに本庁は暇なのか?」
歳三の嫌味を流した大鳥は、にっこりと彼に笑った。
「そんな事言わないでくれよ、土方君。君にお礼を言いたい人がいるっていうから、連れてきたんだ。」
「あの、本当にいいですから・・」
大鳥に腕を掴まれた総司は、そのまま歳三の前に押し出された。
「総司・・」
「土方君、沖田さんと知り合いなのかい?」
「ああ、昔のな。道端で蹲って苦しんでたから介抱してやったんだよ。」
歳三は咄嗟に嘘を吐くと、総司を見た。
「そうなんです。助けて下さってありがとうございました。では僕はこれで。」
総司はそう言って歳三に頭を下げ、部屋から出て行った。
「一君、今新宿警察署に居るよ。ホテルに戻るから、心配しないで。」
『そうか、良かった。』
一との通話を終えて総司が新宿警察署から出て行き、バス停へと向かおうとした時、歳三が慌てて彼の後を追ってきた。
「何処行くんだ?」
「何処って、ホテルに決まってるでしょう。」
「車で送るよ。」
「いいえ、結構です。一君にあなたと居る所を見られたら、変な誤解を去れるので。それに、彼はあなたの事が嫌いですし。」
「別に犯したりしねぇから、送るぜ。」
「嫌です。」
総司は歳三に背を向けて歩き出したが、歳三は車を出してしつこく総司についてきた。
バス停まであと数歩といったところで、総司は歳三に腕を掴まれた。
「いつまでもついてこないでください!」
「何で俺を避けるんだ、総司!」
「避けてなんていませんよ、無視してるだけです!」
総司がそう叫ぶと、通行人が一斉に彼らの方を振り返った。
「さっさと乗れ!」
「嫌です!」
「乗れって言ってんだろうが!」
歳三と総司が痴話喧嘩を路上で繰り広げていると、総司は背後に視線を感じて振り向いた。
「あなた、一体トシと何してるのよ!」
そこには、歳三の恋人・琴枝が鬼のような形相を浮かべながら立ち、総司と歳三を交互に睨みつけていた。
「琴枝、来てたのか。」
「来てたのか、じゃないわよ!トシ、この子とは一体どういう関係なの!?」
そう叫ぶなり、琴枝はつかつかと総司に詰め寄ると、彼の頬を勢いよく張った。
「総司に何をするんだ!」
「あたしのトシを奪わないでよ、この泥棒猫!」
怒りで醜く顔を歪ませ、総司に掴みかかろうとする琴枝を一は突き飛ばした。
「総司、大丈夫か?」
「うん。」

一に助け起こされた総司は、泣き喚きながら歳三に掴みかかる琴枝を残してタクシーに乗り、ホテルへと戻った。







Last updated  2015.06.07 15:20:03
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「あ、歳三兄ちゃ・・」
総司は歳三の激しい突き上げに声を上げながら、彼の背中に爪を立てた。
「総司、もう離さねぇ。」
歳三はそう言うと、自分から逃げようとする総司の華奢な腰を掴んで彼の中を深く抉った。
「あん、あぁ!」
感じる場所を強く抉られ、総司は白い喉を引き攣らせながら甲高い声を上げた。
「総司は、俺のもんだ、永遠に・・」
歳三の声を聞いた総司は、意識を手放した。
「気絶しちまうほど、良かったのか。」
気絶したまま動かない総司から離れ、薄茶の髪を優しく梳いた歳三は、愛おしそうに彼を見ると、乱れた服を整えて運転席へと向かい、サイドブレーキを下ろした。
「トシ、遅かったじゃないか。一体何処へ行ってたんだ?」
「悪ぃ、渋滞に嵌っちまって。」
職場である新宿警察署へと向かい、近藤に遅刻の理由を言った歳三は、コーヒーを飲んだ。
まさか上司に車の中で恋人を抱いていたなんて口が裂けても言える筈がなかった。
車はあの後、ちゃんと後始末をして、消臭剤をかけた。
「トシ、お前香水なんてつけてたか?」
「え?」
近藤に指摘され、歳三は初めて総司の香水がうつったことに気づいた。
総司が香水をつけていることは、再会した夜の時に解った。
車の中では総司を抱くのに夢中で、まさか彼の香水が服に移ったなんて気づきもしなかった。
「気分転換にちょっとな。」
「そうか。」
「土方さんみたいな色男に、薔薇の香水なんて似合わないでしょ。どっちかっていうとムスク系だよね。」
平助がそう言いながらコーヒーを一口飲んだ。
「そうだな、薔薇の香水なんてがらじゃねぇよな。」
平助の隣で、彼の相棒である原田左之助がそう言ってゲラゲラと笑った。
「お前ら、下らねぇ話してねぇで仕事しろ!」
「はいはい。」
「あ~、おっかねぇ。」
平助と左之助はそそくさと自分の席へと戻るのを見た歳三は、溜息を吐いた。
(ったく、こんな調子でどうするんだ・・)
少年院を出て警察学校へと入った歳三が、交番勤務を経てこの新宿警察署捜査一課にやって来たのは数年前の事だった。
捜査一課といっても、居るのは問題がある刑事達ばかりで、唯一まともなのは上司の近藤と山崎、歳三くらいだ。
自分達の上司であるキャリア組の大鳥は、用もないのに時々遊びに来ては自分に絡んでくるので、それが歳三には鬱陶しく思えたのだった。
(ここで苛々しても仕方ねぇか。)
歳三はコーヒーを片手に、自分の席へと向かった。
一方、総司は署内の仮眠室でゆっくりと目を開けた。
「ん・・」
殺風景な部屋の中を見渡し、鬱陶しげに前髪を掻きあげた彼は、携帯が鳴り響いていることに気づき、それを手に取った。
液晶画面には、一の名が表示されていた。
「一君?」
『総司、今何処だ!?』
電話口で聞こえた一の声は怒りで震えていた。
駐車場で歳三に拉致された後、一度も連絡をしなかったのだから、彼が起こるのは当たり前だ。
「今何処に居るのか解らないけど、必ずホテルに戻るから。ごめんね、心配かけて。」
携帯を閉じた総司は、布団を畳んで長い髪を結び身支度を整えると、仮眠室から出て廊下を歩いた。
周囲の風景を見ると、どうやらここは警察署内のようだ。
(出口は何処だろう?)
総司がそう思いながら廊下を歩いていると、彼は誰かにぶつかってしまった。
「すいません・・」
「大丈夫かい?」

総司が顔を上げると、そこにはあのパーティーで見た青年が立っていた。






Last updated  2015.06.07 15:18:22
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「嫌、離して!」

突然後部座席に押し倒された総司は、必死に歳三に抵抗したが、彼はビクともしなかった。

「総司、あいつと結婚するのか?」
「あなたには関係のないことです。あなたには恋人が居るでしょう?」
「琴枝のことか。あいつは恋人でも何でもねぇ。」
歳三はそう言うと、総司のシャツのボタンを外し、白い肌を露わにすると、そこに新しい咬み痕を付けた。
「いや、痛い!」
「感じてる癖に。赤くなってるじゃねぇか。」
「もうやめて・・あぁ・・」
頭を振りながら総司は必死に歳三に懇願したが、彼の目からすれば自分を誘っているような仕草にしか見えなかった。
「総司、お前を諦めた訳じゃねぇぞ。絶対に俺はお前を手に入れる。」
歳三の手が、総司のベルトへとかかった。
「や、やぁ!」
「じっとしてろ。」
「やだ・・」
「これで終わらせるつもりはねぇぞ。」
「い、痛い!」
まだ慣れていない箇所を刺激され、総司は悲鳴を上げた。
「もう、いいころだな・・」

(この人は変わってしまった・・)

目の前にいる男は、総司が知っている土方歳三ではない。

「総司・・」

歳三は総司に甘く囁き、彼の髪を梳いた。

(どうしてそんな優しい声で僕の名を呼ぶの?)

総司は漆黒の瞳を涙で濡らしながら、心を失いそうになった。
全てが終わった時、総司は虚ろな目で涙を流していた。

「もう・・殺して・・」
こんな穢れた身体では、一と幸せになれない。

総司の脳裡に、自分を見つめる一の顔が浮かんだ。
もう生きているのが嫌だ。

「総司?」
「昔、言っていたでしょう? “俺と死ぬか”って。今、あなたと死んであげる。それであなたが楽になれるのなら・・」

歳三の頬に触れた総司の手を、彼はそっと握った。

「俺が、そんな事をお前に望んでいると思うか?」
「どうして・・? どうして、あんな優しい声で僕を呼ぶの? 僕を殺したいほど憎いんでしょう?」
「総司、またお前を傷つけてすまねぇ。俺は・・俺は唯、お前を失うのが怖いんだ!」
歳三はそう叫ぶと、総司を抱き締めた。
「俺はもう、大切な人を失うのが嫌なんだ。総司、こんな形でしかお前を愛せない俺を許してくれ・・」
「歳三・・兄ちゃん・・」

彼に騙されてはいけない―そう思いながらも、総司は歳三のキスに応えた。

(駄目・・僕には一君が居るのに・・)

一を裏切ることになりながらも、総司は歳三と再び恋に落ちた。
彼と交わしたキスは、破滅への扉を開けた。






Last updated  2015.06.07 15:15:10
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「ああ、昔のな。」
「ふぅん、そうなの。こんなに可愛い子にトシを取られちゃうんじゃないかって心配したわ。でもその心配はないようね。」

女性は総司の婚約指輪を見ると、勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。

「ねぇトシ、わたしにはいつプロポーズしてくれるのかしら? 婚約指輪はこの子よりも大きなものを頂戴ね。」
わざと総司に見せつけるかのように、女性は歳三にしなだれかかりながらそう言うと、彼の頬にキスした。
「・・行こう、一君。」
これ以上その光景を見たくなくて、総司は彼らに背を向けて出口へと向かった。
(なんだ、ちゃんと恋人が居たんだ。)
歳三と離ればなれだった7年間の内に、彼に恋人が出来る可能性があるという考えがあったのに、実際にその恋人と幸せそうなところを見るのが辛かった。
だから、逃げてきた。
これ以上あの女性と歳三が嬉しそうに笑うのを見たくなくて、逃げたのだ。
(馬鹿みたい。)
自分には一が居るのに、何故か歳三と女性の事が気になってしまう。
(やっぱり、僕はまだ歳三兄ちゃんの事を・・)
「総司、大丈夫か?」
そっと背中を撫でられ振り向くと、そこには心配そうに自分を見つめている一の姿があった。
「大丈夫。行こうか、一君。」
総司はそう言うと、一の手を握ってタクシーへと乗り込んだ。
「お疲れさまでした~!」
「お疲れ様です。」
テレビ局の取材を終え、総司は溜息を吐いてペットボトルの中の水を飲んだ。
乾いた身体に、冷たい水が染み込んでゆく。
帰国してからというものの、稀代の天才チェリスト・沖田総司への取材が殺到し、総司はいつも多忙な日々を過ごしていた。
一は一で、実家の方で総司との結婚について色々と揉めているようで、さっきも携帯電話を片手に誰かと言い争っていた。
(一君、大丈夫かな?)
同性との結婚を、一の両親が許さないことくらい、総司は覚悟していた。
一の義母の、自分に対する冷たい眼差しを受け、これからも彼女に歓迎されることはないだろうと総司は思った。
(結婚って、自分達だけの問題じゃないんだよな・・)
よく恋愛と結婚は別だ、と言うが、結婚は家同士の問題でもある。
一のような名家なら、尚更のこと。
(一君を誰にも渡したくない。誰にも。)
歳三の事はもう過去なのだ。
今は一との未来の事を考えなければ。
(過去を振り返る暇はない。前に進まないと!)
気合を入れる為に総司は頬を両手で叩くと、一が待つ楽屋へと向かった。
「ただいま。」
「遅かったな。」
「うん、少し考え事してて。」
「そうか。総司、義母達の事は心配するな。俺が何とかするから。」
「そう・・もう行こうか。」
一と総司がテレビ局の駐車場へと向かい、用意されていた車に乗り込もうとした時、総司は突然背後から誰かに腕を掴まれた。
「見つけたぜ、総司。」
「どうして、ここに?」
「お前に会いに来たに決まってるだろ? 俺と来い。」
「嫌です、あなたとはもう終わって・・」
歳三に背を向けたままそう言った総司の背中に、冷たいものが当てられた。
「騒ぐなよ。そのまま俺について来い。」
「わかった・・」

先に車に乗り込んだ一は、総司があの男と何かを話していることに気づいた。

(総司・・)

一と総司の目が一瞬合った。
“一君、大丈夫だから。”

総司は一に微笑むと、歳三が用意していた車に乗り込んだ。

「僕を何処に連れて行くつもりですか?」

総司はそう言って歳三を睨んだが、彼は答える代わりに総司を後部座席へと押し倒した。






Last updated  2015.06.07 15:09:02
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初めて会う斎藤の義母に、総司は嫌な予感がした。

「あなたが、一とお付き合いしている方なのね。」
義母の視線が、総司の左手薬指に嵌められている指輪へと移った。
「言っておきますけれど、あなたと一との関係を認めませんわ。だってこの子には許婚が居るんですから。」
「そのお話はお断りした筈です、義母上。」
一はそう言って義母を睨み付けると、総司の手を握った。
「あなたは黙ってなさい、一。あなたは斎藤家の後継者なのですよ。総司さん、一と婚約したからって良い気にならないでくださいね。」
一の義母は一方的にそう言うと、さっとリビングから出て行った。
「済まない、義母が失礼な事をした。」
「いいんだ。それよりも一君、実家への挨拶は・・」
「あの女の反応を見ただけで充分だ。総司、俺は何があってもお前の手を離さない。それだけは信じてくれ。」
一はそう言って総司を見ると、彼は一に微笑んだ。
「信じてるから、一君のこと。」
総司は一の手を握り、彼とどんなことでも乗り越えようと思った。
実家を後にした一と総司は、ラジオ番組の収録や雑誌のインタビューなど、分刻みの多忙なスケジュールを終え、ホテルの部屋に戻るなり2人はベッドに倒れ込んだ。
「一君、もう遅いから・・」
「愛している、総司。」
一はそう言うと、総司の服を剥ぎ取った。
彼の白い肌には、鬱血した痕が首筋から腹部にかけて続いていた。
(あの・・野郎!)
ギリリと唇を噛み、一は総司を犯した男が誰なのか見当がついた。
あのパーティーの夜、総司を無理矢理自分から引き離し、彼とタンゴを踊った男だ。
(許さない・・総司をこんな目にあわせて!)
「一・・君?」
一の美しい顔が怒りに引き攣っていることに気づいた総司が、彼の頬を撫でると、一はそっと総司の髪を梳いた。
「昨夜の男に、やられたんだな?」
「大丈夫だから。」
一は総司の唇を塞ぎ、唇で彼の首筋や乳首を愛撫した。
「うぅ・・」
「痛いか?」
「ううん。もっとして・・」
総司はそう言うと、一の背中に手を回した。
「本当に、いいんだな?」
総司は一の言葉に頷き、彼に身を委ねた。
総司は自分とは違った美しさを持った青年だ。
背中まである薄茶の髪に、黒曜石のような美しい瞳。
そして何よりも、他者を優しく包み込むかのような性格が、一は好きだった。
こんなに綺麗な総司が、あんな乱暴な男に犯されたのかと思うと、一は彼への怒りで視界が赤く染まりそうだった。
「あぁ、そんなに激しくしないで・・」
「愛している、総司。愛してる!」
一の激しい突き上げに、総司は思わず一の背中に爪を立てた。
―総司、俺はお前だけのもんだ。
遠くで聞こえる、誰かの声。
―絶対にお前を死なせはしねぇ。
(誰・・誰なの?)
あの声は一体誰なのだろうか。
何処か懐かしいような。
「総司、辛かったか?」
「ううん。」
我に返った総司は、一の胸に顔を埋めながら眠りに落ちた。
翌朝、総司と一がホテルのロビーへと下りると、1組のカップルが彼らの前を通り過ぎた。
(歳三兄ちゃん・・)
男の方は、自分を犯した歳三だった。
「トシ、この子知り合いなの?」

歳三の腕に自分の腕を絡ませていた女性が、そう言って値踏みするかのように総司を見た。






Last updated  2015.06.07 15:07:47
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アルバムの収録を終えた総司は、一と共に7年振りに実家へと戻った。

「ここが総司の実家か。」
「うん。姉さん達には連絡したから、入ろうか。」
総司はそう言って、一の手を握って玄関へと入った。
「総司、久しぶりね!」
玄関にやって来たみつは久しぶりに会う弟を抱き締めた。
「ただいま、姉さん。紹介するよ、僕の大切な人。」
「初めまして、斎藤一と申します。」
「まぁ、総司からお話しは聞いているわよ。さぁさぁ、お上がりなさい。」
総司と一はリビングで2人の姉と雑談しながら、安らぎの時を過ごした。
「総司、斎藤さんとは恋人同士なのかしら?」
「そうだけど・・やっぱり反対するよね。男同士だし・・」
総司はそう言って俯いた。
「別にわたし達は反対しないわよ?」
「そうよ、総司が大切な人を連れてきただけでも嬉しいもの! 斎藤さん、総司のことを宜しくお願いね。この子、泣き虫だから手が離せなくって・・」
「それは昔の話でしょう、みつ姉さんっ!」
「あらぁ、いつもわたし達にべったりだったのは誰だったかしらねぇ?」
「もう、止めてよ!」
突然過去の話を振られて慌てふためく総司と、彼をからかうみつの姿を横目で見ながら、斎藤は口元に笑みを浮かべた。
「楽しかったな。」
「煩かっただけでしょう? 姉さん達ったら2人とも気が強いから、昔から言い返せないんだよねぇ。特にみつ姉さんが。」
その夜、総司は一と洗い場で食器を洗いながらそう言って溜息を吐いた。
「俺は総司が羨ましい。あんなに温かい家族が居て。」
「そうかなぁ?」
「・・俺も、総司の家に生まれたかったな。」
一の言葉に、総司は皿を落としそうになった。
彼は愛人の子として生まれ、正妻とその子ども達に蔑ろにされながら育ってきたのだ。
沖田家のような、温かい雰囲気の中で手料理を味わう家族団らんの風景など、なかったに違いない。
「ごめん、無神経な事言って・・」
「いや、いいんだ。それよりも総司、週末は空いているか?」
「うん。何処か行くの?」
「余り気が進まないが、実家に挨拶に行って来る。それにお前の事も紹介したいし。婚約者として。」
「え・・今何て?」
水道の蛇口を止め、総司は驚愕の表情を浮かべながら一を見た。
すると彼は突然、総司の前に跪いた。
「俺と結婚してくれ、総司。」
一はポケットの中から、婚約指輪が入った箱を取り出した。
「本当に・・僕でいいの?」
「ああ。生涯を共にする相手は、お前だけだ。」
一はダイヤの指輪を恭しい仕草で総司の左手薬指に嵌めた。
涙で視界が曇り、総司は一の顔がまともに見えなかった。
「はい・・宜しくお願いします。」
一の家族への連絡は明日しようということになり、2人はその後総司の部屋で同じ布団の中で寝た。
(こんなに幸せでいいのかな?)
一の手を握りながら、総司はゆっくりと眠りに落ちていった。
翌朝、総司と一が1階のリビングへと入ろうとした時、中から話し声が聞こえてきた。
「ですから、弟が何処に居るのかなんて、わたしは知りません!」
「嘘おっしゃいな、うちの子がお宅に入ったという報告を受けているのですよ。」
リビングのドアノブを総司が掴んで中に入ると、そこには和服姿の女性がソファに座っていた。
「あら、やはりあなた、嘘をついていらっしゃったのね。総司さん、だったかしら? 初めまして、一の義母です。」
「は、初めまして・・」






Last updated  2015.06.07 14:29:50
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「う・・」

歳三に乱暴に犯された翌朝、総司は低く呻きながらベッドから起き上がった。
一糸纏わぬ姿で、染みひとつない肌には歳三がつけた咬み痕が首筋から腹部にかけて残っていた。

隣に眠っている歳三を起こさぬよう、総司はベッドから抜け出してシャワーを浴びた。
冷水を頭から浴び、総司は歳三に犯された悲しみと屈辱で涙を流した。

床に散らばった服を拾い上げて着ると、彼はゆっくりと部屋から出て行った。

「総司、昨夜は戻ってこなかったが・・」
「大丈夫。昔の知り合いに会って、ちょっと飲みすぎちゃった。」
「そうか。」
一を心配させたくなくて、咄嗟に嘘を吐いた。
彼はじっと総司を見た後、部屋から出て行った。
(バレて、ないかな・・)
きっと、一は昨夜何があったか知っているだろう。
“昔の知り合い”が、恋人だということも。
「ごめん・・一君・・」
ベッドに顔を埋めながら、総司は一への謝罪の言葉を、密かに呟いた。
その時、背中に激痛が走り、総司はシーツを握り締めて痛みが治まるのをじっと待った。
額からどっと脂汗が噴きだし、呼吸が荒くなった。
7年前に眩暈に襲われ、時折倦怠感や吐き気などに襲われた。
最初は疲労とストレスが溜まった所為だと思い込み、放置していた総司だったが、音楽学校の卒業パーティーで倒れ、搬送された病院で腎盂炎と診断を下された。
通院と投薬治療で何とか落ち着いたものの、完治するまでには時間がかかると医師から言われた。
『無理をしない事が一番重要だ。仕事を口実にして放置しておくと大変な事になる。』
総司は苦しく息を吐きながら、枕元に置いてある携帯へと手を伸ばした。
「総司、どうした!?」
ドアが乱暴に開けられ、一が血相を変えながら総司の元へと駆け寄ってきた。
「いつもの発作・・すぐに治まったから大丈夫。」
「そうか。だが今日は休んでおいた方がいい。余り無理をすると酷くなるかもしれないぞ。」
「でも今日の仕事は穴を開ける事は出来ないよ。薬飲んで落ち着くから大丈夫。」
総司はそう言って一に微笑んだ。
一方1人部屋に取り残された歳三は、眠気覚ましのコーヒーを飲んでいた。
出来れば総司と2人でルームサービスの朝食を取りたいところだったが、起きた時彼はもう部屋から出て行った後だった。
自分を乱暴に犯した男と、朝食など取りたくはないだろう。

(嫌われちまったな・・)

口元に自嘲めいた笑みを浮かべながら、総司の心が自分から離れてしまったことに気づいた。

総司が誰かのものになっているだなんて、考えたくはなかったし、総司と別れた事に、未だに歳三は認めたくなかった。

だから、乱暴に総司を犯した。

(総司、俺ぁこんな愛し方でしか、お前を愛することができなくなっちまった・・)

歳三が溜息を吐いていると、枕元に置いていた携帯が鳴った。

「俺だ。」
『トシ、今何処? 会いたいの。』

電話口から聞こえてきたのは、恋人の琴枝の声だった。
歳三は彼女にホテルの住所を教え、ベッドに潜り込んだ。

10分後、ドアのチャイムが鳴り、歳三がドアを開けると、琴枝がにっこりと笑って彼に抱きついた。

「昨夜連絡とれないから心配しちゃったじゃない。どうしたの?」
「ちょっと昔の知り合いと会ったんだ。飲み過ぎてお前に連絡するの忘れてた。」
「もう、駄目じゃない。お酒弱いのに酔っ払っちゃ。」

琴枝はそう言って歳三にしなだれかかった。

ウェーブのかかった彼女の髪を梳きながら、歳三は総司の事を想った。
愛しているのに、彼を傷つけてしまったと。






Last updated  2015.06.07 14:28:53
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2015.06.05

パーティーが終わった後、総司は歳三に指定されたバーへと向かおうかどうか迷った。

(会いたくないけど・・やっぱりけじめをつけないと。)

7年振りにパーティーで再会し、官能的なタンゴを踊らされ、総司は歳三が恐ろしくなった。
彼は一体何を考えて自分と踊ったのだろう。
本当は行きたくないが、歳三ときっぱり話をつけないといけない―総司はそう自分に言い聞かせ、エレベーターに乗り込んだ。

10階のバーで先に飲んでいた歳三は、腕時計を見ながら総司の到着を待った。

彼は来るだろうか。
もし来たら、もう二度と総司を離さない。

7年前突然総司から別れを切りだされ、歳三は今まで彼への憎悪だけで生きてきた。
だがパーティーで再会し、美しく成長した総司の姿を見た時、それまで抱いていた憎悪の感情が違うものへと変わってゆくのを歳三は感じた。

日本人としては珍しい薄茶色の髪。
磨き上げられたような漆黒の瞳。
肌理が細かく、雪のように白い肌。

出逢った頃はまだ子どもだったのに、成人した総司は蛹から美しい蝶へと成長していた。
(総司・・)
視線の端に、薄茶の髪がグラスに反射して映ったのを見た歳三は、口端を上げて笑った。
「良く来たな。」
歳三はそう言うと、隣のスツールに置いていたコートを退けた。
「お話って、何ですか?」
「総司、これ、覚えているか?」
歳三は襟元を弛め、ブラックダイヤのクロスネックレスを取り出した。
「それは・・」
7年前、そのネックレスは歳三の誕生日にプレゼントしたものだった。
てっきり捨てられたのかと思った総司は、驚愕の表情を浮かべた。
「さっきパーティーで俺を睨みつけていた奴、お前の恋人か?」
総司は歳三の言葉に静かに頷いた。
「もう部屋に戻らないと・・」
総司がスツールから立ち上がろうとした時、歳三が彼の手を掴んだ。
「なぁ総司、今夜ここに来てくれたってことは俺とヨリを戻そうと思ったんだろう?」
「いいえ、僕はあなたと終わりにしたくて、ここに来たんです。」
総司は歳三の手を振り払うと、バーから出て行った。
エレベーターに乗り込んで扉を閉めようとすると、歳三がエレベーターに強引に入って来た。
「な、何を・・」
「逃がさねぇよ、総司。」
琥珀色の双眸を冷たく光らせながら、歳三は総司を抱き締めた。
「いや、離して!」
「大声出すんじゃねぇよ。」
歳三はチェックインした部屋に入るなり、ベッドの上に総司を押し倒した。
「やだ、やぁ!」
「煩せぇって言ってんだろ!」
苛立ちが募った歳三は、総司の横っ面を張った。
彼の口端から血が垂れ、総司は恐怖に怯えた目で歳三を見た。
歳三は、総司の長い髪を優しく梳いた。
「総司、お前は俺のもんだ、永遠に。」
(いや・・)
総司は抵抗したが、鍛え上げられた歳三の腕力に敵う筈がなかった。
(一君・・)
歳三に乱暴に抱かれながら、総司は一の事を想った。
「総司、俺から逃げられると思うなよ。」
悪夢のような夜が明けた後、歳三はそう総司の耳元で囁いた。

歳三と再会したことで、総司は底なしの愛憎地獄へと足を踏み入れてしまった。






Last updated  2015.06.07 14:26:38
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「やっぱり、故郷はいいねぇ。」
7年振りにウィーンから帰国した総司は、宿泊先のホテルへと向かうタクシーの中でそう言って欠伸をした。
「総司、体調は大丈夫か?」
「うん、何とか。これから忙しくなるのに、倒れないようにしないと。」
総司はアルバムの収録で日本に一時帰国し、1週間滞在する予定だった。
(姉さん達、元気にしてるかな?)
日本に帰国する前、2人の姉達に連絡すると、時間があれば実家に帰ってきてもいいという返事が来たので、スケジュールを調整して一と帰ろうと総司は想っていた。
「ねぇ一君、時間があったら僕の実家に行かない? 家族に君の事を紹介したいし、母さんの墓参りもしたいし。」
「ああ、解った。」
宿泊先のホテルに着いてゆっくりと休めるかと思いきや、マスコミの取材が殺到し、夕食前に少し横になっただけでその後はパーティーが待っていた。
「はぁ・・何だかこんなに忙しいとは思わなかったよ。」
取材の後、総司はそう言ってベッドに倒れ込んだ。
「余り無理しない方が良い。」
「うん・・」
一眠りした後、ウィーンで誂えたスーツを纏った総司は、一とともにパーティーへと向かった。
流石一之瀬財閥が主催するパーティーとあって、招待客は経済界の大物や財閥の御曹司が多い。
その中で上手く溶け込めるだろうかと思いながらも総司が会場へと一歩入ると、突然客達が談笑を止め、自分と一の方をじっと見つめた。
(何?)
「どうした、総司?」
「べ、別に・・」
「俺達がパーティーに登場することは知らされてなかったのだろう。前を向いて堂々としていろ。決して俯くな。」
一は総司を安心させるかのように彼の手を握った。
その時、強い視線を感じて総司が顔を上げると、そこには過去の恋人が立っていた。
忘れようにも忘れられない、琥珀色の双眸は獲物を狙う狼のように自分を鋭い眼差しで見つめている。
(どうして、あなたがここに?)
「総司、どうした?」
「う、ううん、何でもない。」
総司は歳三の視線から逃れるように彼にそっぽを向くと、彼の手を握ったまま隅のテーブルへと行こうとした。
だがその時、楽団がタンゴを奏で始め、招待客の男女が踊りの輪を作り始めた。
「一く・・」
一と踊ろうとした総司だったが、歳三が一と総司の間に割って入り、素早く彼を総司から引き離してしまった。
「離してください。」
「1曲踊るだけならいいだろう?」
歳三は強引に総司の手を引くと、踊りの輪へと加わった。
男女のペアの中で、男同士の歳三と総司は一際目立った。
「総司、久しぶりだな。あいつは新しい恋人か?」
「あなたには関係ないでしょう。」
「関係あるんだよ、大いにな。」

黒豹のようなしなやかな肢体を持つ歳三と、華奢な身体を持つ総司とのタンゴは何処か官能的であり、招待客達はいつの間にか彼らの踊りに魅入られていた。

「もうお前を逃がす訳にはいかねぇ。こうしてまた会えたんだからな。」

歳三はそう言うと、総司の腰に爪を食い込ませた。

「土方さんと踊ってる奴って、確かチェリストの沖田総司じゃないか?」
「ああ、確かに彼だな。どうやらトシとは知り合いらしいな。」

どうして、忘れてしまった頃に再会してしまったのだろう。

一番愛していた人に、恐れていた人に再会するなんて、思っていなかった。

やがて曲が終わり、総司はそっと歳三から離れようとした。

「今夜、10階のバーに来い。」

歳三は自分の携帯番号とメールアドレスを掻いたメモを総司に渡すと、近藤達の元へと向かった。

「総司、大丈夫か? 顔色悪いぞ?」
「大丈夫。一君、先に部屋に戻って居てくれる? ちょっと用事が出来たから。」






Last updated  2015.06.07 14:23:36
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