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JEWEL

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連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~

2012.02.28
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「あの子は、大丈夫でしょうか?」

エーリッヒはそう言って、ますの背中を見た。

「あの子は大丈夫。きっとりつさんや藤吾さんたちが見守ってくれるわ・・」
「この村もさびしくなってしまいましたね・・」
四郎はそう言って廃墟と化した村を眺めた。
「彼らはもう戻ってこないけど・・わたしたちにはどうすることもできなかった・・」
美津はうつむいた。
「誰かが彼らを止めなければならなかったのに・・わたしは何もできなかった・・」
涙を流しながら、美津は胸の前で十字を組んだ。
「姫様・・」
「わたしにできることは、彼らの魂が安らかになれるように祈ることだけ・・」
四郎とエーリッヒも、村人達の鎮魂を祈った。
「行きましょう・・」
「はい。」
3人は静かに歩き出した。
やがて雨が降ってきた。
それは島原の乱で亡くなった村人達に対しての、鎮魂の雨のように思えた。


第2部・完―






最終更新日  2012.04.01 22:05:32
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1638年2月28日、島原。

3万7千人の領民達と、天草四郎という尊い命を犠牲にした「島原の乱」は、こうして終結を迎えた。
ますは突然の姉の死に涙しながら、生まれ故郷である村へと戻っていった。
村にはいつもと同じ穏やかな空気が流れていた。
(姉さん・・)
ますは目を閉じて、最期に神への感謝を捧げてなくなったりつのことを思い出した。
最期まで狂ってしまった姉だったが、いつも自分に優しくしてくれた。
その姉も、もういない。
これから自分は一人で生きていかなければならないのだ。
「ますちゃん・・?」
背後から声がして振り向くと、そこには旅装をしている美津と四郎、エーリッヒの姿があった。
「天女様・・」
「どうしたの?」
美津はそう言ってますを見た。
「姉が・・なくなりました。敵の鉄砲に撃たれて・・他のみんなも・・生き残ったのは、私だけです・・」
ますの言葉に美津は顔を曇らせた。
「私はこれから、がんばって一人で生きていこうと思います。そして、姉たちのことを忘れないように、語り継いでいきます。この村で何があったのかを・・」
「そう・・」

美津は、涙を拭いて胸を張って歩くますの背中が見えなくなるまで、いつまでも見ていた。






最終更新日  2012.04.01 22:05:00
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2012.02.27
突然の砲撃によって、城の中にいた人々は皆逃げ惑ったが、そのほとんどが砲撃の犠牲となった。

りつが目の前に広がる光景が信じられなかった。

(主よ・・どうして味方してくれないのです?あなたの信徒である私たちをどうして助けてくれないのです?)

りつは呆然として、砲撃の中をふらふらと彷徨い歩いた。
神は私たちを裏切った。
私たちを裏切り、神は悪魔と手を結んだ。
こんなことがあっていいのだろうか・・
絶望の淵にいたりつの胸に、幕府軍が放った鉄砲が打ち込まれた。
りつはゆっくりと地面に倒れていった。
「姉さん、しっかりして、姉さん!」
妹の悲痛な叫び声が聞こえる。
だが妹の顔が見えない。
胸から血が流れている。
ああ、私はもうじき死ぬのだ。
神よ、感謝します。

私を天国(パライソ)へと連れて行ってくださることを。
感謝します、神よー
りつはゆっくりと目を閉じ、その魂を神の手に委ねた。






最終更新日  2012.04.01 22:04:04
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1637年、島原。

天草四郎は長年弾圧を続けていた島原藩と唐津藩に対して反乱を起こした。
彼に協力していままで迫害を受けてきたキリシタン達が一斉蜂起し、富岡城や本渡城などの天草支配の拠点を支配し、一揆軍は勝利を得た。
さらに天草と島原の領民達3万7千人が島原において合流し、原城に篭城した。
りつとますも、その領民の中に含まれていた。
「姉さん、本当に私達は勝つの?」
ますは不安そうな表情を浮かべながら言った。
「大丈夫よ、私達には神がついていおられるのよ。どんなことがあっても私達が勝つに決まっているわ。」
りつはそう言って妹を励ました。
だが戦況は一揆軍にとって次第に劣勢に傾いていった。
老若男女を含む領民達は日々恐怖に怯えながら城で幾夜を過ごした。
(神様、私たちを勝たせてください・・私たちを迫害した者に鉄槌を下してください・・)
りつは毎晩、そう祈り続けた。
だが彼女の祈りは神には通じなかった。

1638年2月28日。

「オランダ船が見えるぞ~」
誰かの声でりつは目を覚ました。
ふと外を見ると、オランダ船が見えた。
神は私たちに味方してくれたのだ!
りつはそう思い、思わず顔をほころばせた。
だがオランダ船は原城に向けて砲撃を開始した。






最終更新日  2012.04.01 22:03:32
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「ただいま。」

ますが家に帰ると、りつがものすごい形相をして彼女を睨んだ。

「あんた、いままでどこ行ってたの?」
「私は、天女様のところに行って、野菜を少し分けてもらっただけよ・・」
「あの女のところには行くなって言ったでしょう!」
りつはそう言ってますの頬を叩いた。
「あの女はね、化け物なのよ!化け物と仲良くしていたら、神様が私たちを捨てるわ!そんなこともお前はわからないの!」
りつの目は狂気に血走っていた。
「姉さん、おかしいわ・・前の姉さん、そんなんじゃなかったのに・・」
「私はちっともおかしくなんてないわ!私は神の力を得たのよ!」
りつは狂気じみた笑みを浮かべながら言った。
「私は神になるの、何者にも負けない神に!」
「姉さん・・」
姉さんは確実に狂ってる。
ますは目の前で狂った笑みを浮かべている姉を見て、恐怖を感じた。

(主よ、姉をお救いください・・姉の魂を、悪魔からお救いください・・)






最終更新日  2012.04.01 22:02:24
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天草四郎の言葉を受け感銘を受けた人々は、次々と一揆を起こし、自分達に弾圧を加えてきた役人達を殺した。

その結果、この村から迫害された他の村のキリシタン達が転がり込んできた。
天草四郎は「神の子」として慕われ、皆は彼の言葉を信じて自分達を弾圧する者達と戦った。
美津はそんな彼らを見ながら、複雑な想いを抱えていた。
彼らは自分達のことを「神の信徒」と呼ぶが、神は争いなど望んではいない。
天草四郎のことを「神の子」と呼んでいるが、人は神ではない。
(彼らはどうしてわからないのかしら?神は争いなど望んではいないのに・・)
美津が物思いに耽りながら畑仕事をしていると、そこにますがやってきた。
「美津さん、お話があるんです。」
「話?」
「ええ・・」
ますは何か思いつめたような顔をしていた。
「姉さんが、最近変なんです。」
「りつちゃんが?」
「ええ・・数週間前、姉さんはおかしなことを口走るようになって・・私は最強の力を手に入れたとか、神が力を授けてくださったとか・・なんというか、そう熱っぽく語る姉さんの目はおかしいんです・・なんだか私、姉さんが怖くて・・」
ますの話を、美津は黙って聞いていた。
りつがおかしくなったのは、自分のせいだろうか?
あの夜、りつを傷つけたから。

村に広がる不穏な空気と、りつの異常を感じて、美津は思わずため息をついた。






最終更新日  2012.04.01 22:01:35
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天草四郎は、ますます過酷になる現実を嘆いていた。

異国の神を信じる罪なき人々が、日々虐殺される。
誰かが行動を起こさなければ、この現実は変わらない。
そう決意した天草四郎は、村の広場で村人達を集めた。
「いわれなき迫害を受け、虐殺される神の信徒達よ!わたしは決意した!ここに何者にも迫害されぬ、神の国を作ると!」
天草四郎の言葉に、村人達は感動した。
「神は私を守ってくださる。信仰を捨ててはならぬ!」
村人達は四郎の言葉に涙し、やがて四郎を「神の子」と呼ぶようになった。






最終更新日  2012.04.01 22:00:04
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「姉さん、どこ行ってたの?遅かったじゃない。」

りつが夜遅くに帰ってきて、ますはそう言って姉を見た。

「ちょっと散歩していただけ・・心配はいらないわ。」
そういったりつの目は、なんだかおかしかった。
「姉さん、どうしたの?」
「なんでもないわ。それよりね、私強くなったような気がするの。」
りつはそう言ってますに微笑んだ。
「強くなった?」
「ええ・・私あの方から力を授かったのよ・・この力さえあればあの人を倒せるわ・・」
「何を言ってるの?今日の姉さんなんだかおかしいわ。」
ますはそう言って姉の元から少しあとずさった。
「私はどこもおかしくなんてないわ・・」
りつはやがて布団の中へと入っていった。

(姉さん変だわ・・いつもの姉さんじゃない・・)

すっかり変わってしまった姉を見て、ますの心は乱れた。






最終更新日  2012.04.01 21:59:02
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「ああ~ら、いいの、あんなことしちゃって?」

そう言って凛が木陰から顔を出した。

「わしの力を少し与えただけじゃ、あの娘には害はない・・まぁ、あの娘の命は少しばかり縮まるがな・・」
りつの背中を見ながら、鬼神はフッと笑った。
「あの子を使って何かしようというのね?それなら私も協力しちゃおうっとv」
凛は鬼神に微笑みながら言った。
「それに・・ここも戦のにおいがするしねぇ・・」






最終更新日  2012.04.01 21:58:19
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「四郎様なんて、大嫌いっ!」

四郎に告白したが振られたりつは、森の近くにある祠の前で泣いていた。

「あの人は化け物なのに・・どうして四郎様はあの人のことをお慕いするの?どうして・・」
「何を泣いておる、娘?」
背後から声がして振り向くと、そこにはいつの日か森で会った女がいた。
「あなたは・・あの夜森で会った・・」
「涙なぞ流して、どうしたのじゃ。わしに言うてみよ。」
鬼神はそう言ってりつの髪を撫でた。
「四郎様はどうしてあんな人がいいのかしら・・あの人は化け物なのに・・」
「四郎は美津一筋じゃ。そなたの想いは四郎には伝わらぬ。どうしても四郎を振り向かせたいか?」
「ええ。」
鬼神の目がキラリと光った。
「わしと契約せよ。さすれば四郎はお前のことを愛するに違いない。」
「ええ、契約するわ。」
りつはそう言って鬼神を見た。
鬼神は懐剣を出して掌を傷つけ、その血をりつに与えた。
「これでお前は、最強の力を得た。」
「ありがとうございます。」

りつは鬼神に頭を下げ、祠を去った。






最終更新日  2012.04.01 21:55:23
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