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JEWEL

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連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~

2012.02.27
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1628年、夏。

美津は今日も買い物に出ていた。
広場へ行くと、そこにはりつとその妹のます達が遊んでいた。
りつは美津と目が合うと、妹の手を引いてそそくさと広場を後にした。
(わたしは“化け物”・・どこへ行ってもそれは変わらない・・)
美津がそう思ってため息をついていると、1人の子どもが美津にぶつかった。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。」
そう言って美津は子どもを見た。
少年だが、顔立ちはまるで少女と見まごうばかりの美しさだ。
「あなた、お名前は?」
「四郎。天草四郎と申します。」
子どもはそう言って頭を下げた。

「わたしは美津というの。これからよろしくね。」

美津は四郎に微笑んで家へと向かった。
これが、美津と天草四郎との出会いだった。






Last updated  2012.04.01 21:46:38
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美津はりつに冷たく拒絶されたことにショックを受け、奥の部屋で休んでいた。

「ねえ四郎、やっぱりわたしって化け物なの?」
「姫様・・」
「わたし、昨夜自分が何をしたか、覚えていないの・・わたしは一体なにをしたのか・・全然覚えていないの・・」
四郎は昨夜のことを全て話した。
「そう・・りつちゃんはわたしの本性を知ってしまったのね・・だからあんなこと・・」
美津はそう言ってうつむいた。
「ここも磯村のときといっしょなのね・・わたしはどこへ行っても“化け物”なんだわ・・」
美津は涙を流してうつむいた。






Last updated  2012.04.01 21:45:31
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美津はゆっくりと顔をあげ、怒りに歪んだ顔でりつを見た。

「殺せ。」
鬼神はそう言って、りつを指した。
美津は獣のように跳躍し、りつの胸を長刀で切り裂いた。
意識を失い落下するりつを四郎が抱き留めた。
「姫様、どうされたのです?おやめください!」
エーリッヒがそう言ってなおもりつを攻撃しようとする美津を止めようとした。
だが、美津は彼の腹を蹴った。
四郎は家の中に入り、りつの傷の手当てをした。
幸い、傷は深くなかった。
奥の部屋にりつを寝かせると、四郎は家を出た。
「姫様!」
美津は四郎に突進した。
「姫様、私がわかりませんか!」
四郎の言葉を美津は聞いていないようで、唸りながら長刀を振り回した。
「貴様、姫様になにをしたぁ!」
四郎はそう言って鬼神に槍を突き出した。
「美津に命令を下したまでのことよ。あの子どもを殺せとな。」
やがて美津は長刀を地面に突き刺し、頭を抱えながら倒れた。
「また会おうぞ、美津や。」
鬼神はそう言って笑った。
「姫様!」
四郎は慌てて美津のところへ駆け寄った。
数日後。
りつはいつものように、村の広場で遊んでいた。
そこへ美津が現れた。
「りつちゃん、こんにちは。」
美津はそう言ってりつに微笑んだが、りつは顔をこわばらせ、後ずさりした。
「りつちゃん?」
美津がりつの肩を触ろうとすると、りつはその手を払った。
「近寄らないで、化け物!」

りつはそう叫んで去っていった。

「りつちゃん・・」






Last updated  2012.04.01 21:44:54
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「あなたのところなんか来るものですか!わかったらさっさとりつちゃんをこっちに渡しなさい!」

美津はそう言ってキッと鬼神を睨んだ。

「そうか・・それなら仕方あるまい。この子は死んでもらおう。」
鬼神は近くの木にりつを放り投げた。
りつの着物の袖が、木の枝にひかかった。
「きゃぁぁ~!」
目を覚ましたりつが恐怖の叫び声を上げた。
「りつちゃん!」
美津はそう言ってりつの元へ駆け寄ろうとしたが、鬼神がその行く手を阻んだ。
「そなたの相手はこのわしじゃ。」
そう言って鬼神は大鎌を取り出して、美津に構えた。
美津は気合を入れて、鬼神に突進した。
激しい剣戟の音が夜の闇にこだまする。
「もうおしまいかえ?」
鬼神はそう言ってニヤリと笑い、美津の肩を大鎌で斬った。
美津の肩から鮮血が噴き出し、美津は地面にうずくまった。
「素直にわしのものになれ・・」
鬼神は自分の掌を鎌で傷つけ、己の血を美津に飲ませた。

「天女・・様?」

りつが恐る恐る美津に声をかけると、美津はゆっくりと顔を上げた。
その顔を見た瞬間、りつの顔がたちまち恐怖にゆがんだ。






Last updated  2012.04.01 21:44:22
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「遅いわねりつちゃん・・絶対来るって言ったのに・・」

美津はそう言って心配そうに戸口を何度も覗いた。

「道に迷ったのでは?」
「それはないわ。りつちゃんは毎日のように家へ来てるし・・」
美津はそう言うなり、顔をこわばらせた。
「どうしました?」
四郎が槍を持ち、戸口の方へと目を走らせた。
「・・あいつが、来る・・」
美津は戸口に掛けてある長刀を持って家を出た。
「また会ったのぉ、美津や。」
そう言って鬼神はニヤリと笑った。
その腕にはー
「りつちゃん!」
「ほらね、やっぱりこの子と美津様は知り合いだったでしょ?」
凛はそう言って笑った。
「りつちゃんにはてを出さないで!」
美津は長刀を鬼神に向けた。
「わしを傷つけば、この子どもは死ぬぞ。」
「一体なにが望みなの!?」
「お前が欲しい。わしの元へくれば、この子どもは助けてやろう。」

鬼神はそう言って美津を見た。






Last updated  2012.04.01 21:43:47
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「あら、その子は?」

凛はそう言って鬼神に抱かれているりつを見た。

「森で会った子じゃ。名はりつ。どうやら美津の家に向かおうとしていたところらしいの。」
「そう・・この子なら知ってるわ。確か美津様を『天女様』と呼んでいた子よね?」
凛はりつの前髪を撫でながら言った。
「私、いいこと考えたわ。」
「ほう、どんな?」
凛は鬼神の耳元で、何かを囁いた。
「・・それはいい考えじゃ。」






Last updated  2012.04.01 21:43:21
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りつは今日も、美津の所へ遊びに行こうとしていた。

昨日広場であって、明日金平糖をあげると美津に言われて、りつは早く明日にならないかと指折り数えて待っていた。

(天女様に早く会いたいなぁ。)

今日は妹の世話や父を手伝っていて、美津との約束の時間をとっくに過ぎてしまった。
(天女様、怒ってないかなぁ?)
昨日家に行ったとき、美津は少し迷惑そうな顔をしていた。
毎日家に遊びに来ているからだろうか?
美津の家は村から少し外れたところにある。
その前には森が広がっていて、そこを突っ切れば近道になるということを、りつは知っていた。
夜の森は暗くて不気味だった。
だがこの森を突っ切れば美津と会えるーそう思いりつは恐怖と戦いながら森の中を歩いた。
美津の家まであとちょっとというところで、りつは木の下で寝ている女の人と目が合った。
黒い着物を着ていて、銀色の髪が月光に輝いてとても綺麗だ。
「そこな子ども、どこへ行く?」
だが外見の美しさとは反比例し、声は氷のように冷たかった。
「天女様の、ところに・・」
「そなた、名はなんという?」
「りつ・・」
そう言ってりつは気を失った。
「さてと、どうしようかの・・」

鬼神はりつを抱えながらつぶやいた。






Last updated  2012.04.01 21:42:56
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母の葬式から数ヶ月がたち、りつは毎日のように美津のところへ遊びに来ていた。

「天女様、また遊びに来ちゃったv」
「いらっしゃい、りつちゃん。」
美津はそう言ってりつに微笑んだ。
「お昼まだ食べてないでしょ?よかったらここで食べていってね。」
「いただきま~す!」
りつはそう言って美津が作ったご飯をあっというまに平らげた。
その日一日中、りつは美津と一緒に遊んだ。
「あの子、姫様に随分懐いているようですね。」
エーリッヒはそう言って笑った。
「あの子なんだか妹のような存在なの。わたし一人っ子だからりつちゃんに懐かれるのがうれしくてたまらないの。」
「それはよかったですね。でもこう毎日家に来られては食事の支度が大変なんですよ。」
エーリッヒはそう言ってため息をついた。
「わかってるわ。でもあの子は最近、お母さんを亡くしたばかりなの。わたしがあの子の悲しみを、少しでも癒してあげればって思うの・・」
そう言った美津の横顔が、どこかさびしげに見えた。
「姫様・・」
「わたし、あの子の悲しさがわかるの・・わたしの場合は、自分の手で母上を殺したっていうことだけど・・ごめんね、なんだか暗くなっちゃったね。」

美津はそう言って奥の部屋に入っていった。






Last updated  2012.04.01 21:42:19
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母の葬式が終わり、りつは村の広場で母のいない寂しさに泣いていた。

大好きだった母がもういない。
友達にいじめられたときに優しく抱きしめてくれた母。
おいしい料理を毎日食べさせてくれる母。
その母が、もういない。
りつは寂しくて寂しくて仕方がなかった。
「母ちゃん、会いたいよぉ・・」
「どうしたの?」
上から声が降ってきて、りつが顔を上げると、そこには天女様が立っていた。
「母ちゃんが、母ちゃんが死んじゃったぁ・・」
「そうなの・・私もお母さんを亡くしたわ。」
天女様はそう言ってりつを抱きしめた。
「亡くなった人は帰ってこないわ。でも、あなたのお母さんはいつもあなたのそばにいるわ。だからいつまでも悲しんでいると、お母さんはあなたの泣き顔を見て悲しむわ。」
「天女様ぁっ!」
りつは天女様の胸の中で泣いた。
「これからは、わたしがあなたのお母さんに代わってあなたを守るわ。だから、もう泣かないで。」

美津はそう言ってりつを抱きしめた。






Last updated  2012.04.01 21:39:30
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「母ちゃん、今日ねあたし、天女様に会ったんだよ!」
そう言ってりつが家に帰ると、母はうっすらと目を開けて自分に微笑んだ。
「そうかい・・よかったねぇ・・」
母はそう言って、りつの頭を撫でた。
「母ちゃん、死んじゃやだ!」
りつは母に取りすがって泣いた。
「母ちゃんはいつもお前のそばにいるからね・・」
そう言って母は息を引き取った。
27歳の若さだった。
「母ちゃん、母ちゃん~!」

家中に、りつの泣き声が響いた。






Last updated  2012.04.01 21:38:59
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