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JEWEL

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連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~

2012年02月27日
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「やっと着いたわね。」

そう言って美津は、眼下に広がる島原の街を見た。
島原城がそびえたち、青い海が山の向こうに顔を出している。
山に囲まれた磯村には海がなかった。
「綺麗ね・・」
「姫様、急ぎましょう。」
そう言って四郎は美津の腕をひいた。
「わかったわ。ねえエーリッヒ、海って綺麗ね。」
「そうですね。」
美津達が他愛のない話をしながら歩いていると、美津は突然激しい眩暈に襲われた。
「姫様っ!」
倒れそうになる美津を、四郎は慌てて抱きとめた。
「四郎・・わたし・・もう・・」
美津はそう言ってゆっくりと目を閉じる。
「姫様は、まさか・・」
エーリッヒは美津を驚愕の表情を浮かべて見た。
「眠っているだけだ。」
四郎はそう言って美津を抱きかかえた。
「40年の眠りに就く。姫様が目覚めるときまで、わたし達はここで生きよう。」
「ああ。」
エーリッヒと四郎は、再び歩き出した。
四郎とエーリッヒは村に空き家を見つけ、村長や村の人々に挨拶してそこに住むようになった。
「姫様は、起きられるのか?」
エーリッヒは布団で眠っている美津の寝顔を見ながら言った。
「40年後だ。40年も経ったら、この村も国も変わるだろう。」
「ああ、それにわたし達を知るものはいなくなる・・」
「さびしいが、それはそれでいいかもしれないな。」

四郎はそう言ってフッとさびしい笑みを浮かべた。






最終更新日  2012年04月01日 21時17分33秒
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美津達が海を渡り、島原を目指している頃、魔界では鬼神が退屈そうに邸で横になっていた。

3ヶ月前、17年間契約を交わしている美津姫と出会い、一目で恋に落ちた。
金の瞳を持つ凛は気性が激しく、物静かな女が好きな彼は凛のことを気に入らなかった。
だが美津は違う。
普段は物静かだが、怒りを爆発させて戦うときの彼女の猛々しさといったら美しいことこの上ない。
彼女こそ我が花嫁にふさわしい。
だが彼女にはまるで金魚の糞のように付いて回る犬がいたので、そいつには呪いをかけてやった。
名前は、四郎といったか・・まぁ名前など関係ない。
あの犬にはじわじわと苦しみを与えてやろう。
「ご主人様、湯浴みの用意ができました。」
使用人の小鬼がそう言って恐る恐る自分を見た。
「ご苦労だった。さがってよいぞ。」
鬼神は小鬼の首をはねて言った。

「・・汚れてしまったな。」

鬼神はボソリとつぶやき、浴室へと向かった。






最終更新日  2012年04月01日 21時16分22秒
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「姫様、お待ちくださいっ!」

四郎は慌てて美津の後を追った。
美津は既に何人かを血祭りに上げていた。

「きゃぁぁっ、化け物ぉぉっ!」
背後で声がして振り向くと、恐怖に目を見開いておびえた表情を浮かべる女がいた。
美津はその声に反応し、女の方へと突進した。
美津の長刀が女の首を掻っ切ろうとしたときー
「おやめくださいっ、姫様っ!」
四郎が女の前に立ちはだかり、美津の刃を肩に受けた。
「四・・郎・・?」
緋色だった美津の瞳が、少しずつ紅へと戻っていく。
「四郎・・わたしはいったい・・」
美津がそう言って四郎の肩の傷を見た。
「わたしが・・これを・・」
そのとき、美津の頭に石が当たった。
「さっさとここから出て行け、この疫病神が!」
石を投げたのは、この宿の主人だった。
「・・行きましょう、姫様。」
呆然とする美津の肩を抱き、四郎は部屋へと戻っていった。
「四郎、わたしは疫病神よね・・父上と母上を殺したもの・・わたしがいなけば・・」
「姫様、もうお休みください。」
「四郎、ごめんね・・わたしのせいで、ごめんね・・」
美津はそう言って涙を流し、やがて眠りに就いた。
翌朝早く、美津達は宿賃を払って宿を出た。
「島原は海を渡ればすぐそこです、姫様。」
「ええ、そうね。」
美津はそう言って水平線の彼方を見た。
「すっかり遠くに来てしまったわね・・」






最終更新日  2012年04月01日 21時15分34秒
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私が・・両親を殺した・・
あれは、私がしたの?
私が、みんなを殺したの?
そんなの嘘よ・・嘘に決まってる・・
「結構利いたみたいね、心理攻撃は。」
凛はそう言って満足げに笑った。
「また会いましょうね、鬼姫様。次はもっといい勝負を期待していてよ。」
やがて凛は闇の中へと消えていった。
「姫様?」
四郎は美津の肩を叩いた。
「・・そよ・・」
「姫様!」
「そんなの嘘よ・・そんなの・・」
美津の瞳が徐々に狂気を孕んだ緋色になっていく。
「姫様、どうかお気をお鎮めください!」
美津の異変に気づいた四郎がそう言って美津の肩を揺さぶった。
だが、もう遅かった。

美津は獣のような叫び声をあげて、長刀を振り回して宿の中へと突進した。






最終更新日  2012年04月01日 21時14分33秒
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月明かりの下、美津と凛は刃を交えていた。
激しい剣戟の音が、静かな夜の庭に響く。

「やっぱり鬼姫様ね。私と互角に戦えるなんて・・でも、3ヶ月前に比べて弱くなったんじゃなくて?」
凛はそう言って笑った。
「黙れ、人殺しが!」
美津は長刀を振り回しながら凛を睨んだ。
「人殺しはあなたのほうでしょ?まさか私が、あなたの両親を殺したとでも思ってるの?」
「なに・・何を言ってるの?」
「何も知らないようだから、教えてあげましょうか?あなたはね、あの時両親を殺したのよ。」
美津の脳裏に、父の最期の微笑が浮かんだ。
燃え盛る城と、おびただしい死者の山。
あれは凛がしたものだと思っていた。
彼女が自分の両親を殺したと思っていた。
「あなたが、殺したのよ。」
「嘘よ、そんなの嘘・・」
美津は長刀を落として地面に蹲った。
「あなたが殺したのよ、あなたが私の両親を・・」
「いいえ、あなたが自分の両親を殺したの。」

凛は美津の反応を見てニヤリと笑った。

「嘘よ・・そんなのっ!」






最終更新日  2012年04月01日 21時13分36秒
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「お前、どうしてここに・・」
「どうしてって、あなたのことを追いかけに来たのv」
そう言って凛は腰に帯びていたレイピアを抜き、四郎に突進した。
丸腰であった四郎はかろうじて凛の刃を手で受け止めた。
「うふふ、相変わらず強いわね。でもこれはどう?」
凛はそう言って四郎の腹を薙いだ。
着物が破れ、腹から鮮血が滴り落ちる。
「くっ・・」
四郎は床に蹲った。
「お前はここで死んでもらうわv」
凛が四郎の喉下を刃で貫こうとしたときー
「四郎!」
月が美津の姿を照らし、凛が持っていたレイピアは長刀によって彼女の手から弾き飛ばされた。
「まぁ、なんて乱暴な挨拶なのかしら?」
凛はそう言って美津を睨んだ。
「黙れ!」
美津は凛に向かって長刀を振り回した。
凛は美津の攻撃を避け、地面に刺さっているレイピアを取った。
「あなたはここで死んでもらうわ。」
「それはお前のほうよっ!」

月明かりの下、金と紅の瞳が火花を散らした。






最終更新日  2012年04月01日 21時56分08秒
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風呂から上がった四郎は、部屋へと戻る最中、歌声を聞いたような気がした。
凛の歌声を。

(そんなはずはない・・あいつはまだ尾張にいるはず・・)
また歌声が聞こえてきた。
空耳だろうと四郎がそう思って廊下を歩こうとしたとき、誰かに両目を塞がれた。
「だ~れだっv」
「お前は・・」
四郎の目の前には、西洋の着物を着た凛が立って四郎に微笑んでいた。
「お久しぶりね、四郎様v」






最終更新日  2012年04月01日 21時07分33秒
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尾張を出てから3ヶ月がたち、美津達は瀬戸内の宿で休みを取っていた。

人であれば天草まで1年くらいかかるであろう道のりを、鬼である3人は休みを取らずにここまでやってきた。
だが眠りの時期を迎えようとしている美津の体力の消耗が激しく、瀬戸内に入ったところで四郎とエーリッヒも疲れを感じてきたので、宿で休みを取ることにしたのだ。
「姫様は?」
「寝ておられる。ここまでの道のりを休みなしで歩いてきたゆえ、疲れたのでしょうな。」
そう言って四郎は美津の頭を優しく撫でた。
「お前は姫様一筋だな。」
「ああ、姫様と会えたことで私はここにいるのだから。」
四郎はそう言って胸を押さえる。
「どうした?」
「いや、なんでもない・・風呂に入ってくる。」
四郎はそう言って部屋を出た。
夜中過ぎだからか、大浴場には誰もいない。
四郎はゆっくりと湯船に浸かり、旅の疲れを癒した。
3ヶ月前、四郎と美津は全てを失った。
自分を無償の愛を与えてくれた家族。
幸せで平凡な毎日。
そして、ゆっくりと流れる時間。
だが戦が起き、美津は両親を、四郎は両親と兄弟達を亡くした。
明かされた衝撃の真実は、四郎に呪いをかけた。
四郎はそっと、胸に刻まれた十字の傷に触れた。
鬼神につけられた、のろい。
美津との間に子ができぬ呪い。
いつか美津と所帯を持ち、家族を作れると思っていた四郎は、鬼神にのろいをかけられ、絶望の淵に沈んだ。
美津のことをいつも想い、愛していたのに、美津との間に愛の結晶ができないとは、四郎にとってはなんとも辛いことであった。
子が成せぬのなら、美津の傍にいて、彼女を一生守ろう。
それがいま、自分にできることだから。
四郎はそう決意し、湯船から上がった。






最終更新日  2012年04月01日 21時09分08秒
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「・・鬼姫様は天草へと向かったのね。」
かろうじて火を免れた実家の部屋で、凛はそう言って新しい従者の男を見た。
「はい。それと・・」
男はそう言って凛の耳元に何かを囁いた。
「へえ・・四郎様とエーリッヒが鬼となったのねぇ・・これからが楽しみだわ。」
凛はほくそ笑んだ。
「待っていなさいね、鬼姫様。私がその命を奪ってあげてよv」

そうつぶやいた凛は、お気に入りの歌を歌い始めた。






最終更新日  2012年04月01日 21時05分27秒
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磯村を出た美津と四郎、そしてエーリッヒは、尾張を出て街道を歩きながら目的地をどこにするか話し合っていた。

「ねぇ、どこにする?」
「そうですね・・南の方はどうでしょうか?それに、磯村で起きたことは近辺でもすでに噂になっていますし・・なるべく遠い方がいいですね。」
「島原はどうです?あそこならキリシタンがたくさんいると聞きました。」
「島原ね・・いいわね。」
美津はそう言って歩き出した。
四郎とエーリッヒが慌てて後を追った。






最終更新日  2012年04月01日 21時06分02秒
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