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May 22, 2022
全1件 (1件中 1-1件目) 1 薄桜鬼腐向け二次創作小説:貴方に伝えたいこと
テーマ:二次創作小説(727)
※BGMと共にお楽しみください。 「薄桜鬼」の二次創作小説です。 制作会社様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 遠くから響く轟音に、一は恐怖に震えた。 「落ち着け、俺がついている。」 そう言って、“彼”は、優しく自分の手を握ってくれた。 “彼“が居れば、一はどんな物も怖くなかった。 一にとって、“彼”は光そのものだった。 「どうした?」 「貴方の瞳と、同じ色です。」 「そうか。」 大戦が始まる数年前、“彼”は一に自分の瞳の色と同じブローチを贈ってくれた。 ずっと、“彼”に居られると思った。 それなのに― 「必ず、あんたを助けます・・」 「お前だけでも、生きろ・・」 「嫌です、あんたが居なくなったら、俺は・・」 “彼”は、涙を流しながら、一にこう言った。 『愛している、幸せになりなさい。』 紅蓮の炎の中から出て来たのは、一だけだった。 (どうして、俺だけ助かったんだ・・) “彼”が居ない世界で、一はどう生きればいいのかわからなかった。 一は、今日も孤独という闇の中で藻掻き苦しんでいた。 「ここか・・」 一が入院している病院に、一人の青年がやって来たのは、大戦が終わってから数年経った、初夏の事だった。 一は、“彼”に宛てた手紙を書いていた。 “拝啓、土方大佐、大戦から数年経ちますが、その後いかがお過ごしでしょうか?報告、お待ちしております。” 「斎藤さん、あなたにお客様よ。」 「久しぶり、斎藤。」 「原田中佐。」 「元気そうで良かった。」 「あの、土方大佐は、土方大佐はご無事なのでしょうか?」 「それは・・」 「何度も手紙を書いたのですが、“宛先不明”で持って来てしまって・・」 「俺が今度、土方大佐の事を聞いておくよ。」 「ありがとうございます。」 「俺が今日ここに来たのは、お前を迎えに来たんだよ。」 「そう・・なのですか。」 原田に連れられ、一は病院を後にした。 彼と共に、一はある建物の中へと入った。 「あの、ここは・・」 「ここは、俺の会社さ。まぁ、大戦で郵便の需要が高まってね。それで、郵便社を立ち上げたのさ。」 「そうなのですか・・」 「ここでは、郵便の仕分けや配達、そして自動手記人形による手紙の代筆・・」 「自動手記人形(ドール)・・」 「ほら、あそこにいる子達がそう。」 原田がそう言って指した先には、タイプライターを忙しく打っている女性達の姿があった。 「斎藤、義手の調子はどう?」 「大分、使いこなせるようになりましたが、まだ・・」 「そうか。」 「毎日土方大佐に手紙を書いているのですが、中々指が上手く動かなくて・・ペンを持つ事すら出来なくて・・」 「じゃぁ、タイプライターは?ペンで手紙を書くよりも簡単だし、コツさえ掴めば上手く打てるようになるぜ。」 「そうですか・・」 「千鶴、こっちに来てくれ。」 「はい。」 慌てて斎藤達の元へとやって来たその女性の顔に、斎藤は見覚えがあった。 (もしかして、この方は・・) 「初めまして、雪村千鶴と申します。」 「初めまして・・」 「こいつは、今日からこの会社の一員になった斎藤一だ。」 「宜しくお願い致します。」 「よろしく・・」 「この教則本に書いてある通りに打って下さい。」 「わかりました。」 一はそう言うと、義手を隠していた手袋を外した。 タイプライターは、ペンで手紙を書くよりも良かった。 「ねぇ、もしかして自動手記人形になりたいのなら、学校へ通ってみない?」 「学校、ですか?」 「先生は厳しいけれど、教則本と睨めっこするよりはいいわよ。」 ![]() にほんブログ村
最終更新日
November 5, 2021 07:42:04 PM
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