メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語
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May 22, 2022
全1件 (1件中 1-1件目) 1 魔道祖師腐向けファンタジー二次創作小説:泡沫の恋の果て
テーマ:二次創作小説(727)
「魔道祖師」の二次小説です。
作者様・出版社様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 美しい雪が降り積もる姑蘇の雪原に、一人の少年が佇んでいた。 彼は、涙を流しながら母を想った。 “藍湛、こちらにいらっしゃい。” 母は、息絶える前に藍湛と藍渙―二人の息子達を寝室へ呼んだ。 “わたしはもう、あなた達と一緒に生きられないの、だから・・” 『嫌だ、母様!』 “ごめんね・・” 藍湛を抱き締めながら、母は涙を流していた。 その後、母は静かに息を引き取った。 「忘機、何か食べないといけないよ。」 「何も食べたくありません。」 母を亡くした後、藍湛は寝食を忘れて城の前で母が帰って来るのを待った。 もう母が、自分を抱き締めてくれないという事を解っていても、藍湛は来る日も来る日も母を待ち続けた。 「忘機・・」 「兄上、母上は・・」 「もう帰ろう。」 「はい・・」 母を待ち続けて七日目の夜、藍湛は熱を出した。 「まだ忘機は六歳だ。母を恋しがるのは当然だ。」 「叔父上・・」 「藍渙、お前が兄として弟を導くのだぞ。」 「はい・・」 姑蘇国は、一年の大半を雪と氷で覆われた国で、人々は短い夏と春の訪れを楽しみにしていた。 母を亡くしてから、藍湛は勉学や剣術に精を出すようになった。 「忘機、少し話がある。」 「はい、兄上。」 「お前も少しは耳にしていると思うが、最近温国の横暴が問題となっている。」 「はい、存じ上げております。」 「そこで、来週金鱗台で温国討伐について話し合う事になっている。」 「わかりました。」 「忘機、お前の“発作”は、最近どうなのだ?」 「少し・・良くなっている気はします。」 「そうか。」 藍湛は、ある“秘密”を抱えていた。 それは、自分だけが氷を自由自在に操れる事だった。 だが、その力は本人の意思とは関係なく出てしまう為、藍啓仁は甥の将来を心配し、力を制御する為に藍湛の額に抹額を巻いた。 「叔父上、何故わたしだけ・・」 「気に病む事はない。この抹額を取って良いのは両親と伴侶のみ。その他の者は触る事すら出来ぬ。」 「そうですか・・」 抹額を頭に巻いてから、藍湛は力を自然と制御できるようになった。 一方、雲夢国の王都・蓮花塢では、年に一度行われる“蓮祭り”で賑わっていた。 「阿羨、何処なの!?」 「師姉、ここだよ!」 「もう、またあなたそんな所に登って!早くおりていらっしゃい!」 「わかったよ!」 赤い髪紐を揺らしながら、魏無羨は勢いよく木の上から降りた。 「ねぇ、聞いたかい?」 「あぁ、温家の奴らが・・」 「あいつら、好き勝手な事をしやがって・・」 「一体、あいつらは何処まで横暴の限りを尽くすつもりなんだ?」 「まぁ、姑蘇国と蘭陵国、それに清河国が力を合わせりゃ、温国なんて一発でやっつけてくれるだろうさ!」 「そうだねぇ。」 「師姉、どうしたんだ?またあの孔雀野郎に泣かされたのか?」 「いいえ、少しボーっとしてしまっただけ。さ、行きましょう。」 「うん!」 まだ、この頃魏嬰は知らなかった・・己が苛酷な運命の渦に巻き込まれてしまう事を。 「そんな、許しておけばいいではありませんか!何故、あの者は・・」 「落ち着きなさい。」 「お母様、一体どうなさったの?」 「厭離、申し訳ないけれど、あなたと金子軒との婚礼は一年延期になるわ。」 「まぁ、それはどうして・・」 「何でも、うちの従者達と彼の従者達が取っ組み合いの喧嘩をしたのです。それで、金夫人と話し合った結果、あなた達二人の婚礼を延期する事になったの。」 「喧嘩の原因は?」 「それが・・」 「また孔雀野郎が従者に師姉の陰口を吹き込んだんだろう?」 「魏嬰、あなたは少し黙っていなさい!」 虞夫人はそう言って魏嬰を睨みつけた。 睨まれた彼は、そそくさとその場から立ち去った。 (あの孔雀野郎、師姉の何処が気に入らないんだ?そりゃ、あいつの周りに居る女達に比べたら、師姉は華がないけれど、気立てが良い娘の方が華があるだけの娘よりいいと思うぞ?) そんな事を思いながら魏嬰が王宮の中を歩いていると、突然向こうから犬の鳴き声が聞こえて来た。 「ぎゃぁぁ~!」 魏嬰は、養父・江楓眠に拾われる前、孤児として幾度も野良犬に殺されかけた記憶があるので、犬は大の苦手だった。 「こら、来るなって!」 「うるさいぞ、勉強に集中できないじゃないか!」 「江澄、犬をどうにかしてくれ!」 「全く、犬一匹すら追い払えないのか!」 江澄はそう言って舌打ちしながらも、魏嬰に吠えていた野良犬を追い払った。 「江澄、魏嬰、来なさい!」 「はい、母上。」 虞夫人に呼び出され、二人は彼女の自室へと向かった。 「二人共、良くお聞きなさい。明日、あなた達は金鱗台に行って貰います。」 「確か、そこでは温国討伐について話し合われるとか・・」 「そうよ。二人には、雲夢国を代表して出席して欲しいの。その日、わたし達にはそれぞれ用事があるから、頼むわね。」 「はい、母上。」 こうして、江澄と魏嬰は雲夢国代表として金鱗台へ向かう事になった。 「二人共、気を付けてね。」 「師姉、あの孔雀野郎に会ったら思い切り殴ってやるよ!」 「もう、阿羨ったら!」 翌朝早く、江澄と魏嬰は蓮花塢を発ち、一路金鱗台へと向かった。 「なぁ、ひと休みしていかないか?」 「そうだな。」 途中二人が水浴びの為に立ち寄った泉は、夏だというのに水面は一面氷で覆われていた。 「一体どうなっているんだ!?」 「さぁな・・」 魏嬰はそう言うと、氷で覆われている泉の向こうに、一人の少年が立っている事に気づいた。 「江澄、あれ・・」 「何だ?」 「ほら、泉の向こうに居る・・」 「誰も居ないぞ?」 「いや、だってそこに・・」 魏嬰がそう言って少年が立っていた方を指すと、そこには誰も居なかった。 「気の所為か?」 「疲れているんだろう。さぁ、早く宿屋へ行こう。」 「あぁ。」 (良かった・・わたしが“力”を使う所は誰にも見られていない。) 同じ頃、藍湛は泉を一瞬にして凍らせてしまった事に気づき、急いでその場から離れた。 「忘機、遅かったね。」 「申し訳ありません、兄上。また・・」 「大丈夫だ。」 「はい・・」 「それにしても、先程金光瑤殿に会ったよ。皆、温国討伐に乗り気らしいね。」 「そうですか。兄上、わたしは泉を一瞬にして凍らせてしまいました。」 「後でわたしの部屋に来なさい。今後の事を色々と話そう。」 「はい。」 金鱗台の近くにある宿屋で魏嬰と江澄は、久しぶりに風呂に入った。 「あ~、生き返る!」 「静かに入れ。」 「それにしても、隣の部屋の奴はこんな時間まで寝ているのか?何だか妙に静か過ぎないか?」 「そんな事、気にするな。明日は早いから、もう寝るぞ。」 「お前は先に寝ていろ。俺は隣の部屋の様子を見て来る。」 魏嬰はそう言うと、隣室の様子を見に行った。 「忘機“力”は制御できないのかい?」 「はい・・」 「ならば、この抹額を絶対に外してはならない。これは、お前の“力”を封じるものだからね。」 「しかし兄上、この抹額を巻いても“力”が・・」 藍湛がそう言った時、彼は窓の方に人の気配がする事に気づいた。 「何者だ!」 「ぎゃっ!」 藍湛が窓に向かって冷気を放つと、そこから短い悲鳴が聞こえた後、一人の少年が部屋の中に飛び込んで来た。 「痛てぇ、いきなり“力”を放つ事は無いだろう!もう少しで落ちて死ぬ所だったぞ!」 そう叫んだから少年は、黒髪を振り乱しながらそう叫ぶと、藍湛を睨みつけた。 「何者だ?貴様、すぐに答えないと、この剣で八つ裂きに・・」 「わかった、わかったから剣を下ろしてくれ!俺は魏無羨、金鱗台には雲夢代表として来たんだ!」 「そうか。」 「忘機、剣を下ろしなさい。弟が無礼な事をしてしまって済まない。わたしは藍曦臣、姑蘇藍国の代表として、金鱗台へ来た。」 「そうですか。こちらこそ、突然の無礼をお許しください。」 「また、会おう。あぁ、手を出してくれないかい?」 「は、はい・・」 魏嬰が恐る恐る掌を曦臣に差し出すと、彼は菓子が入った袋をそこに載せた。 「連れの者と一緒に食べなさい。」 「はい。ありがとうございます!」 これが、魏嬰と藍兄弟との出会いだった。 ![]() にほんブログ村
最終更新日
December 13, 2021 03:33:18 PM
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