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JEWEL

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連載小説:二人の皇太子~アメジストとエメラルド~

2018年01月19日
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主人公・アンジェリカ皇太子が両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。

ローゼンシュルツ国王一家がウィーン・ホーフブルク宮殿で滞在してから一週間が経った。

ルドルフとアンジェリカ皇太子は同い年である所為か、口さがないウィーン宮廷の女官達にとって格好の噂の種となった。

「アンジェリカ様はルドルフ様と違って、お年の割には幼すぎるのではなくて?」
「わたくしもそう思いましたわ。きっと国王ご夫妻がアンジェリカ様を甘やかしてお育てになられたからに決まっていますわ。」
ルドルフが愛犬と王宮庭園の芝生の上で遊んでいると、開け放たれた窓から女官達の声が聞こえて来たので、彼はそっと芝生の上に身を潜めた。
芝生の中にルドルフが潜んでいる事も知らず、女官達はアンジェリカが幼すぎるし、礼儀作法がなっていない、常識に欠けている、と口々に彼に対して陰口を叩き始めた。
「まぁ、アンジェリカ様はローゼンシュルツ王家にとって唯一の後継者であらせられるのですから、国王ご夫妻が溺愛なさるのも無理はないですわ。しかし、あのままではアンジェリカ様のご教育にお悪いのではなくて?」
「それはそうですね、あなた方のような人の悪口を言うのが好きな方々がアンジェリカ様のお傍に居らっしゃらない事が幸いです。」
女官達の声とは違う、変声期を迎えたばかりの、少年の心地良いアルトの声が突然ルドルフの頭上に響いてきたので、彼は思わず芝生の中から顔を出し、部屋の中を覗いてしまった。

そこには、数人の女官達と対峙している一人の少年が、窓際に立っていた。

少年はユリウスと同じように艶やかな黒髪を持っていたが、その髪は背中まで伸びており、美しい蒼色のリボンで纏められていた。
何処かの士官学校の制服なのだろうか、少年は水色の軍服に黒のズボンという服装をしており、腰には長剣を提げていた。
女官達は自分達の噂話に乱入してきた闖入者(ちんにゅうしゃ)である少年にはじめ驚いたような顔をしていたが、すぐさま彼に対して彼女達は口々にこう叫び出した。
「まぁ、貴方盗み聞きをするなんて無礼な子ね!」
「何処のどなたか存じ上げないけれど、わたくし達が知らない格下の貴族のご子息なのかしら?」
「そうでしょうとも、このような貧相な格好、ホーフブルクでは見たことがありませんもの。」
女官達はそう言って少年の服装に難癖をつけては、彼に向かって嘲りの笑い声を上げた。
そんな彼女達に対し少年は溜息を吐くと、憐みの目を彼女達に向けた。
「無礼なのはどちらですか?仮にも外国の賓客に対して陰口を叩かれるとは、無礼千万な方がウィーン宮廷に居られることを、皇帝陛下に申し上げなくてはなりませんね。」
「まぁ貴方、わたくし達を脅す気!?」
「そうとっていただけても構いません。」
そう言った少年の瞳は、ユリウスの美しい翡翠の様なそれとは違い、上質に磨き上げられたアメジストの様な深い紫だった。
「貴方、お名前は?」
「おや、そちらから名乗られるのが礼儀なのではないですか?わたくしはあなた方よりも“格下”の存在ですので、どうぞお気になさらずに。」
「まぁ、生意気な子ね・・」
女官達の一人が苛立った様子で持っていた扇子を握り締め、それを少年の頭上へと振り翳した。
「お前達、一体そこで何をしている?」
「ルドルフ様、わたくし達は何もしておりませんわ。ねぇ、そうよね皆さん?」
「ええ、そうですわ。」
女官達が逃げるように部屋から出て行くのを見送った少年は、自分を救ったルドルフの方を見ると、彼に対してこう言った。
「気づいていたのならば、何故早く助けてくださらなかったのですか?」
「窮地を助けてくれた者に対して先に礼を言う方が礼儀ではないのか?」
「それは申し訳ありませんでした。わたくしはリヒャルトと申します、以後お見知りおきを。」
「その軍服、ローゼンシュルツ王立士官学校のものだな。何故ローゼンシュルツの者がここに?」
「それは、お答えすることは出来ません。たとえ貴方様がルドルフ皇太子様であっても。」

そう言った少年―リヒャルトは、ルドルフに挑戦的な視線を投げつけると、形の良い唇を歪めて笑った。

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最終更新日  2019年01月08日 20時51分27秒
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主人公・アンジェリカ皇太子が両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。

「ユリウスは、メルク神学校へ進学する為にわたしの下で世話になることになったのです。」
「ユリウスといったか・・君、出身は何処だ?」
「バイエルンです、皇太子殿下。」
「殿下などという堅苦しい呼び方をするな、名前だけでいい。」
「それでは、ルドルフ様とこれからお呼びします。」
ユリウスはそう言うと、ルドルフを再び翡翠の瞳で見つめた。
「ルドルフ様、わたしはこれから所用で出掛けなればなりませんので、申し訳ありませんがユリウスに王宮を案内して頂けないでしょうか?」
「わかった。ユリウス、僕と共に来い。」
「はい、ルドルフ様。」
マイヤー司祭の代わりにルドルフがユリウスに王宮内を案内している間、ルドルフは時折ユリウスの美貌に見惚れそうになった。
星の無い闇夜をそのまま写し取ったかのような艶やかな黒髪に、美しく整った鼻梁と、桜色の唇、そしてエメラルドの様な美しい翠の瞳―もしかしたらユリウスは人間ではなく、天から遣わされた天使なのではないか、とルドルフがそう思いながら廊下を歩いている時、そこへ皇帝夫妻との昼食を終えたローゼンシュルツ国王一家が向こうから歩いてくるのが見えた。
「まぁルドルフ様、お身体の具合はもうよろしいのですか?」
「はい、少し外で散歩をしていたら気分が良くなりました。王妃様にはご心配をおかけしてしまって申し訳ありませんでした。」
ルドルフが昼食中に中座してしまった事をマリア王妃に詫びると、彼女は鈴を鳴らすかのような笑い声を上げながら彼にこう言った。
「そんな事で謝らなくてもいいのですよ。誰にだって体調が優れない時がありますもの、ねぇあなた?」
「ああ、そうだな。ところでルドルフ様、隣にいらっしゃる天使様は、どなたかな?」
「こちらはユリウスといって、マイヤー司祭が先程王宮に連れて来た少年です。ユリウス、こちらはローゼンシュルツ王国の国王ご夫妻だ、ご挨拶するように。」
「初めまして、ユリウスと申します。以後お見知りおきを。」
「こちらこそどうぞ宜しくね、ユリウス。アンジェリカ、貴方もユリウスにご挨拶なさい。」
「は、はいお母様・・」
マリアの背に隠れていたアンジェリカは、ユリウスの前に出ると彼に自己紹介した。
「アンジェリカです。」
「アンジェリカ様、ユリウスと申します。これから王宮で暮らすので、仲良くして頂ければ嬉しいです。」
ユリウスはそう言って優しくアンジェリカに微笑むと、右手を差し出した。
アンジェリカは嬉しそうに頬を赤らめながらも、ユリウスが差し出した右手を握った。

(何だあいつ、僕の前では怖がって母親の背中に隠れていた癖に・・)

自分と会った時とは違う態度のアンジェリカに対し、ルドルフは苛立ちを隠す為に小声で舌打ちした。

「ルドルフ様、どうかなさいましたか?」
「いや、何でもない。それよりもユリウス、お前はいつまで王宮に居るんだ?」
「メルクへ進学するのは来年の9月になりますので、それまで王宮に滞在いたします。とはいっても、マイヤー司祭様と他の司祭様達と同じ居所で暮らすことになります。」
「そうか。ユリウス、気が向いたらスイス宮の僕の部屋に遊びに来てもいいぞ。」
「わかりました。」
ユリウスがそう言ってルドルフに微笑んだ時、ルドルフは何故か胸がキュンとしてしまった。
「ユリウス、ここに居たんだね。マイヤー司祭様がお呼びだ。」
「ルドルフ様、わたしはこれで失礼いたします。」

ユリウスを呼びに来た司祭に連れられ、彼が王宮から去っても、ルドルフは暫く廊下に突っ立ったまま、惚けたような表情を浮かべていた。

(さっきのは、一体何だったんだ?)

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最終更新日  2018年01月19日 20時32分44秒
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主人公・アンジェリカ皇太子が両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。

侍従と共に入って来たローゼンシュルツ国王一家は、何処か自分達を前にして緊張しているように見えた。

「お初にお目にかかります、皇帝陛下。ローゼンシュルツ国王のアルフレドと申します。こちらは妻のマリアです。」
「初めまして。」
黒髪に紅の瞳を持つ軍服姿のアルフレド国王は、フランツ=カール=ヨーゼフ帝と共に並んでも見劣りしない程の美男子だった。
そしてアルフレド国王の隣に立つ彼の妻も、欧州随一の美貌と謳われるエリザベート皇后とは違う種類の美貌の持ち主であった。
輝くばかりのプラチナブロンドの髪に、スターサファイアのような美しい蒼い瞳を持ったマリア王妃は、ルドルフの視線に気づくと優しく彼に微笑んだ。
「初めまして、マリア王妃様。ルドルフと申します。」
「まぁ、こちらこそ初めまして。セーラ、アンジェリカ、いらっしゃい。」
マリア王妃は部屋の隅で固まっていた子供達を呼び寄せると、彼らはパタパタと足音を立てながら母親の元へと駆け寄って来た。
「セーラ、こちらがルドルフ皇太子様よ、ご挨拶なさい。」
「初めまして、セーラと申します。」
父親譲りの艶やかな黒髪を結い上げたセーラ皇女は、ルビーの様な美しい真紅の瞳をルドルフに向け、優雅に礼儀正しく彼に挨拶をした。
「アンジェリカ、貴方もルドルフ様にご挨拶なさい。」
マリア王妃は自分の背に隠れている息子に対してそう声を掛けたが、彼は怯えた目でルドルフを見ただけで、すぐに母親の後ろに隠れてしまった。
「ごめんなさいね、この子は人見知りが激しいのよ。」
「皆様、昼食の用意が整いましたので、こちらへどうぞ。」
初対面であるルドルフを前にアンジェリカは緊張してしまい、何度も食事の最中にスプーンやフォークを床に落としてしまった。
「申し訳ございません、お父様・・」
「謝ることはない。長旅で疲れが出てしまったのだろうよ。」
「アンジェリカ、そんなに緊張しなくてもいいのよ。」
自分の不作法を詫びるアンジェエリカに対し、国王夫妻は優しい言葉を掛けた。
ルドルフとジゼルがもしアンジェリカと同じような失敗をしたら、たちまちゾフィー大公妃や彼女が雇った養育係から罰として両手を鞭で叩かれていた。
同じ王家でありながら、ローゼンシュルツの皇女と皇太子、そして国王夫妻は仲睦まじい様子で両親と共に昼食の時間を楽しんでいた。
自分とは対照的な環境に居るアンジェリカを、ルドルフは少し羨ましいと思った。
「ルドルフ、どうしたの?」
「いいえ、何でもありません、姉上。」
ジゼルは、弟の手が微かに震えている事に気づいた。
「ルドルフ、もしかしたら貴方、熱があるんじゃ・・」
「大丈夫です、何でもありません!」
熱が出ている事に気づかれぬよう、ルドルフは虚勢を張り、つい大声でジゼルの言葉に反論してしまった。
すると先ほどまで和やかだった部屋の雰囲気が、一瞬にして気まずいものへと変わっていった。
「父上、少し気分が優れないので部屋で休ませていただきます。」
「そうか。誰か・・」
「大丈夫です、部屋まで一人で行けます。」
慌てて侍従を呼ぼうとするフランツをそう言って制したルドルフは椅子から立ち上がり、そのまま部屋から出て行った。
荒い息を吐きながら彼が廊下を歩いていると、向こうからマイヤー司祭と共に、一人の少年がやって来るのが見えた。
「ルドルフ様、どうかされましたか?」
「いや、何でもない。それよりもマイヤー司祭、そちらの方は?」
「こちらはわたしの手伝いをしてくれているユリウスです。ユリウス、ルドルフ様にご挨拶なさい。」
「初めまして、ルドルフ様。ユリウスと申します。」

そう言ってルドルフに挨拶した少年は、美しい翡翠の様な瞳をしていた。

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最終更新日  2018年01月19日 20時30分34秒
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主人公・アンジェリカ皇太子が両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。

「ねぇお父様、ウィーンってどんな所かしら?」
「とても素敵な所だと聞いたよ。きっとお前達も気に入ると思うよ。」
ウィーンへと向かう汽車の中、アルフレドはそう言ってセーラとアンジェリカに微笑んだ。
十歳となったアンジェリカは、時折窓の外の風景を眺めては七歳のアンジェリカと何かを話していた。
「二人で何を話しているんだい?」
「ウィーンに着いたら何をしようかって、アンジェリカと話していたところなの。そうよね、アンジェリカ?」
「うん。ねぇお父様、僕ウィーンに着いたらザッハトルテが食べたいな!」
「わかった、ウィーンに着いたらザッハトルテを食べに行こう。」
アルフレドはそう言うと、息子の頭を撫でた。
「ねぇ貴方、エリザベート様は一体どのようなお方なのかしら?」
「マリア、どうして急にそんな事を聞くんだい?」
「だって、気になるではありませんか。彼女が欧州随一の美貌をお持ちなのかどうか。」
マリアはそう言うと、アルフレドを見た。
「君の方が美しいよ、マリア。」
「まぁ、そう言ってくださるだけでも嬉しいわ、貴方。」
「それにしても、わたしが気になっているのはルドルフ皇太子様の事だな。アンジェリカと同い年だから、すぐにあの子達とルドルフ様が打ち解けてくださるといいんだが・・」
「心配いりませんわ、貴方。アンジェリカは人を魅了させるところがありますから、きっとルドルフ様と仲良くなれますわ。」
「そうかな・・」
ウィーンへ発つ前、ルドルフ皇太子が気難しい性格の持ち主だという噂を宮廷で聞いていたので、アルフレドは楽天的な妻の言葉を聞いて一抹の不安を感じた。
ウィーンに到着したローゼンシュルツ国王一家がウィーン西駅から出てくると、国王一家を歓迎するウィーン市民達が彼らの姿を見て歓声を上げた。
「お父様、わたし達ウィーンの方達に歓迎されているようですね。」
「ああ、そのようだな。さぁセーラ、アンジェリカ、ザッハトルテを食べに行こう。」
アルフレドは妻と子供達を連れ、デメルへと向かった。
「本場のザッハトルテは美味しいですわね、貴方。」
「ああ。」
アルフレドとマリアはザッハトルテを頬張りながら、自分達と向かい合わせに座っているセーラとアンジェリカの方を見た。
「アンジェリカ、ほっぺにチョコがついているわよ。」
セーラはそう言うとハンカチを取り出し、弟の頬についているチョコレートの染みを素早く取ってやった。
「有難う、お姉様。」
「もう貴方は赤ちゃんじゃないんだから、ちゃんと自分でしないと駄目よ、わかった?」
「はい、お姉様。」
仲睦まじい二人の姿を見ていたアルフレドとマリアは、互いの顔を見合わせながら微笑んだ。
「ルドルフ、ここに居たのね。」
「姉上。」
「部屋に居ないと思ったら、こんな所に居たのね。そろそろローゼンシュルツの方々がお見えになるから、すぐにお父様のお部屋に行きなさいって、お祖母様がおっしゃっていたわよ。」
「わかりました、すぐに行きます。」
ホーフブルク宮殿内にある王宮図書館で読書をしていたルドルフは、そう言うと読んでいた本を閉じて書棚へと戻し、ジゼルと共に父の部屋へと向かった。
「遅くなって申し訳ありませんでした、父上。」
「いや、気にするな。それよりもルドルフ、先方には失礼のないようにするんだぞ。」
「はい、解りました。」
「陛下、ローゼンシュルツ国王一家がおいでになりました。」
「わかった。」

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最終更新日  2018年01月19日 20時17分00秒
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「お父様、わたしお父様が来てくださるのをずっと待っていたのよ!」
「そうかい、随分と待たせてしまって済まなかったね。」
「ねぇ、わたしに今日、弟が出来たのでしょう?アンナが教えてくれたわ。」
「そうだよ、今日からお前はお姉ちゃんになるんだよ、セーラ。」
アルフレドは愛娘の髪を優しく梳くと、彼女は嬉しそうに笑った。
「陛下、この度は皇太子様のご誕生、おめでとうございます。」
「ありがとう、アンナ。これからは色々と忙しくなるから、セーラの事をくれぐれも宜しく頼むよ。」
「はい、かしこまりました。」
セーラの乳母・アンナは、そう言うと頬を赤く染めた。
アンナは、婚約者がいる身でありながら、アルフレドに密かに想いを寄せていた。
「アンナ、絵本を読んで。」
「かしこまりました、セーラ様。」

(これが叶わない想いだという事はわかっているわ・・でも、わたしは陛下を諦められないの。)

アンナは皇女に絵本を読み聞かせながら、そんな事を想った。

一方、ウィーン・ラクセンブルク宮殿では、待望の皇太子・ルドルフを出産したエリザベートに対して、姑のゾフィー大公妃から残酷な言葉を聞かされた。

「ルドルフはわたしが責任を持って育てます。貴方にこの子を育てるのは無理だわ。」
「お義母様、わたくしからジゼルを取り上げるだけでは飽き足らず、ルドルフまで奪うつもりなのですか!?」
「勘違いしないで頂戴、エリザベート。ルドルフはこの国の次期皇帝になる子です。この子に骨の髄まで帝王学を叩き込ませます。」
ゾフィーは一方的にエリザベートに向かってそう言うと、そのまま彼女の部屋から出て行った。
「フランツ、何とかして頂戴!」
「シシィ、全て母上に任せていれば大丈夫だ。きっと上手くいくさ。」
「ルドルフはわたしの子なのよ!どうして母親であるわたしから取り上げる資格がお義母様にあるというの?」
エリザベートはそう夫に不満をぶつけると、涙を流した。
我が子を取り上げられたエリザベートとは対照的に、マリアは皇太子・アンジェリカを自分の手元で育てることに決め、それに皇帝である夫も、皇太后である姑も賛成した。
「ハプスブルク家のルドルフ皇太子様は、ゾフィー大公妃様によって育てられると聞いたけれど、ローゼンシュルツ王家にはローゼンシュルツ王家のやり方があるのですもの。ハプスブルク家の真似をすることはないわ。」
「有難うございます、お義母様。」

奇しくも同じ日に生まれた二人の皇太子、ルドルフとアンジェリカ。
一人は母の愛を知らずに育ち、もう一人は家族から深い愛情を注がれながら育った。
王族でありながら、対照的な育てられ方をした二人の皇太子は、どのような大人に成長してゆくのか、それは天のみぞ知る。

二人の皇太子がこの世に生を享け、七年の月日が経った。

厳格な祖母・ゾフィーの下で育てられ、過酷な軍事教練や帝王学を叩き込まれ勉強漬けの日々を送っていたルドルフは、七歳でありながらもどこか世間を冷めた目で見つめていた。

「ルドルフ、ここに居たのか。」
「陛下、ご機嫌麗しゅうございます。」
「二人きりの時は、父と呼んでもいいのだぞ?」
王宮庭園で読書をしていたルドルフはフランツから声を掛けられ、慌てて彼に臣下の礼を取ろうとすると、フランツはそう言って彼を制した。
「何を読んでいるんだ?」
「アレキサンダー大王の伝記です。ずっと前から読みたかったので・・」
「そうか。明日、ローゼンシュルツ王家のアンジェリカ皇太子様がいらっしゃるそうだ。」
「アンジェリカ皇太子様が、ですか?」
「ああ。お前と誕生日が同じだから、きっとお前と仲良くなれるだろう。」

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最終更新日  2018年01月19日 20時13分36秒
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1858年8月21日。

この日、世界を冠するハプスブルク家が治める帝国と、東欧の小国を治める王国の元に、それぞれ元気な皇子が産声を上げた。

「おめでとうございます王妃様、元気な皇太子様であらせられますよ!」
難産の末に元気な男児を出産したローゼンシュルツ王国王妃・マリアは慈愛に満ちた目で我が子を見つめた。
「大公妃様、皇太子様がお生まれになりました!」
「そう、それは良かったこと。」
ウィーン・ラクセンブルク宮殿にて皇后・エリザベートが皇太子を出産した事を知った大公妃・ゾフィーは、これで帝国の未来が安泰だと思いながら安堵の溜息を吐いた。
美貌の皇后が産んだ皇太子は、ハプスブルク家の始祖・ルドルフ一世の名を取り、ルドルフと名付けられた。
そして、マリアが出産した男児は、ローゼンシュルツ王国の首都・リヒトの守護天使の名を取って、アンジェリカと名付けられた。
「可愛い子ね。そう思わない事、アルフレド?」
「ああ、そうだね。マリア、よく頑張ったね。」
妻の腕に抱かれている我が子の寝顔を見ながら、ローゼンシュルツ王国国王・アルフレドはそう言って妻に労いの言葉をかけた。
「国王ご夫妻は、お子様がお生まれになっても仲睦まじいですわね。」
「そうですわね。」
マリア付の女官達が皇太子誕生を祝う宴の準備をしていると、そこへ皇太后・ソフィアがやって来た。
「マリアは部屋に居るの?」
「はい、皇太后さま。陛下もおられます。」
「そう。」
ソフィアがドレスの裾を捌きながらマリアの部屋に入って来ると、マリアは姑に向かって笑顔を浮かべた。
「皇太后さま、わざわざお忙しい中いらしてくださって有難うございます。」
「まぁ、そんな他人行儀な呼び方は止して頂戴。可愛い子ね。貴方に目元がそっくりだわ。」
「そうでしょうか?お義母様、この子を抱いてやってくださいな。」
「ええ、解ったわ。」
マリアの手からアンジェリカを受け取ると、ソフィアの腕の中でアンジェリカが目を覚まし、彼は母親譲りの蒼い瞳で祖母を見つめた。
「頭が良い子、わたくしが誰なのか解るのね?」
「この子はきっといい国王になりますわ、お義母様。だって、この子はアルフレドの血をひく子ですもの。」
「ええ、そうね。マリア、よく頑張ったわね。疲れているでしょうから、貴方は暫く休んでいなさい。」
「わかりましたわ、お義母様。」
「また様子を見に来るよ、マリア。それまで、ゆっくりと休んでいてくれ。」
「ええ。」
アルフレドは妻の額に唇を落とすと、母親と共に宴が開かれている大広間へと向かった。
「いやぁ、皇太子様がお生まれになるなんて、めでたいことですなぁ。」
「ええ。これで我が王国の未来は安泰ですな。」
シャンパングラスやワイングラスを片手に、貴族達は皇太子の誕生を祝福していた。
大広間に皇太后と国王の姿が見えると、彼らは一斉に二人に向かって恭しく頭を垂れた。
「皆の者、本日はよく来てくれました。今夜は無礼講です。楽しい宴の始まりですよ!」
ソフィアがそう言って乾杯の挨拶をした後貴族達に向かってワイングラスを掲げると、貴族達は一斉に歓声を上げた。
「母上、余り飲み過ぎないようにしてくださいね?」
「わかっているわ、アルフレド。それよりも貴方はセーラの相手をしてやって。」
ソフィアは弟の誕生によって寂しい思いをしているであろう孫娘の事を慮ってそう言うと、アルフレドは母親に頭を下げて大広間から出て行った。
「セーラ、起きているかい?」
「お父様。」

大広間から出たアルフレドが、長女・セーラ皇女の部屋へと向かうと、セーラは黒髪の巻き毛を揺らしながら、アルフレドに向かって勢いよく抱きついて来た。

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最終更新日  2018年01月19日 20時12分35秒
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