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JEWEL

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薔薇王の葬列 人魚パラレル二次創作小説:涙の宝石~果てなき愛~

May 20, 2022
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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。


「これから、あんたはどうしたい?生活をするには何かと金が要る。」
「そうか。俺は家事が苦手だし・・」
「あんたの得意な事を言ってみろ。」
「そうだな・・針仕事が好きだ。それに・・」
「そうか。」
リチャードは、暫くバッキンガムの部屋で暮らす事になった。
「その格好だと目立つから、服を買いに行くぞ。」
「わかった。」
バッキンガムはホテルのフロントでタクシーを頼み、リチャードと共に町で一番大きいブティックへと向かった。
「いらっしゃいませ。」
「彼女に似合う服を見繕ってくれ。」
「かしこまりました。」
一時間後、二人は両手に紙袋を抱えながらホテルの部屋へと戻った。
「ねぇ、今の話本当なの?」
「本当よ!」
「あの人は、綺麗な人と一緒だったわ!」
「どんな人?」
「左右の瞳の色が違っていて、夜の女神のような方だったわ!」
町のカフェ“カサブランカ”では、噂好きの主婦達がブティックに現れたリチャードとバッキンガムの事を話していた。
「ねぇ、あの方・・眼鏡を掛けた背が高い方、何処かで見かけた事があると思ったら、この方よ!」
エマは、そう言うとスマートフォンの画面を友人達に見せた。
そこには、“世界で最も影響力のある企業家”の一人として紹介されているバッキンガムの写真が載っていた。
「こんな偶然ってあるかしら?」
「まさか」!」
自分達が噂されている事など知らずに、リチャードは一冊の本を熱心に読んでいた。
その本には、“一流の経営学”というタイトルがつけられていた。
「あんた、その本が解るのか?」
「あぁ。それよりも、腹が減ったな。」
「そうだな。ルームサービスでも取るか?」
「行きたい所がある。」
“カサブランカ”で昼食を取る事にした二人は、周囲の視線を気にする事無く食事を楽しんだ。
「ここのカフェは、人手不足みたいだな。見ろバッキンガム、店の回転率が悪くて外に長蛇の列が出来ている。」
「よく気が付いたな?」
「さっきトイレに行った時、給仕スタッフがランチのピーク時だというのに三人しか居なかった。」
「そうか。ならばあんたに質問だ、このカフェの回転率を良くする為ならどうする?」
「それは、実際に働いてみないとわからないな。」
リチャードはそう言うと、何か閃いたような顔をしていた。
翌日、リチャードはバッキンガムに“カサブランカ”で働く事になったと話すと、彼は飲んでいた紅茶を噴き出しそうになった。
「どうした、そんなに驚くような事か?」
「あんた、失礼だが今まで働いた事はないのか?」
「ない。」
「そうか。」
大丈夫なのだろうか―そう思ったバッキンガムは、仕事をしに、“カサブランカ”へと向かった。
観光シーズンのランチタイムとあってか、店内には観光客と地元客でごった返していた。
「ねぇ、わたしのランチはまだ?」
「会計は?」
「ねぇ、さっきから呼んでいるんだけれど~!」
リチャードは店内でそつなく仕事をこなしていた。
(初めてなのか・・本当に?)
接客業が初めてとは思えない程、リチャードは接客と店内の掃除、レジなどを効率よくこなしていた。
「いらっしゃいませ。」
「アイスコーヒー、ひとつ。」
「・・来たのか。」
「驚いたぞ。あんた、働いたことがないと言っていたが?」
「兄上が良くパーティーを家でするから、色々と身についた事がある。」
「そうか。」
「今日は忙しいから、仕事が終わったら話そう。」
「わかった。」
バッキンガムが鞄の中からタブレット端末を取り出して仕事をしていると、そこへエマ達がやって来た。
「バッキンガム様、こんにちは。」
「こんにちは。皆さんお揃いで、何かわたしにご用ですか?」
「あのう、バッキンガム様は、ロンドンで何をなさっておられるのですか?」
「会社を経営していますよ。」
「まぁ、お若いのに凄いですわ!」
「いえ、そんな事はありませんよ。」
エマ達から質問責めにされ、バッキンガムは少しうんざりながら仕事をしていた時、そこへリチャードがやって来た。
「お客様、どうぞ。」
「頼んでいないわよ?」
「店長からのサービスです。」
「じゃぁ、あちらで皆さんと一緒に頂きましょう。」
リチャードの機転によって、バッキンガムは漸くエマ達から解放された。
「リチャード、さっきは助かったぞ。」
「何の事だ?」
「あの女達から俺を解放する為に、機転を利かせてくれたのだろう?」
「まぁ、お前が苛立っているように見えたから、すぐに動いただけだ。」
リチャードはそう言いながら、足を掻いていた。
「その足のかさぶた、まだ治らないのか?」
「あぁ。」
「今日は疲れただろう、すぐ休め。」
リチャードは、ベッドの中に入るとすぐに眠ってしまった。
コツン、コツンと奇妙な音が聞こえたのは、夜明け前の事だった。
(何だ?)
リチャードが音が聞こえて来る窓の方へと向かうと、海には褐色の肌をした人魚の姿があった。
「ケイツビー、どうして・・」
「リチャード様、早く海にお戻り下さい。陛下が・・」
「父上に、何かあったのか?」
リチャードは窓を開け、そのまま海へと飛び込んだ。
すると彼女の美しく白い足はたちまち紫色の美しい尾鰭へと変わった。
「父上!」
「リチャード、やっと会えた。」
「父上、しっかりして下さい!」
ヨーク公は、優しくリチャードの頬を撫でると、静かに息を引き取った。
「これから、どうなるのでしょう・・」
「もしかしたら・・」
「リチャード様が、王冠を?」
「今の話、本当なの?」
女官達がヨーク公亡き後の後継者の話をしていると、そこへエリザベスがやって来た。
「いいえ、あくまで噂ですわ。」
「そう・・」
(リチャード、わたしの邪魔はさせないわ!)
「リチャード、何処に行っていた?何故髪が濡れている?」
「・・お前には、いずれ話さなければならないと思ったが、今話そう。」

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Last updated  May 21, 2022 09:56:22 PM
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May 18, 2022




「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

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「リチャードは、死んだのね?」
「はい。わたくしがこの目で、リチャード様が息を引き取る瞬間を見ました。」
「そう、さがってもいいわ。」
女官を下がらせたエリザベスは、リチャードの死を知り喜んだ。
(これで、この王国はわたしのものとなる!)
「お母様。」
「ベス、どうしたの?」
「リチャード叔母様が亡くなられたなんて、信じられないわ。」
「あぁベス、あなたの嘆きはわたしの嘆き。リチャードを失った事は、この世界の喪失よ。」
「お母様・・」
(リチャード、安らかに眠りなさい・・永遠に。)
エリザベスが己の“勝利”を確信している頃、地上では“人”として転生したリチャードが、病院に運ばれて七日目の朝を迎えていた。
「おはようございます。」
「俺は、いつここから出られるのですか?」
「それは、わかりません。今は、沢山体力をつけて下さいね。」
「わかった。」
地上の食べ物は、今まで海の王国で食べて来た物とは違い、見た目も味も斬新なものばかりだった。
スープを食べながら、リチャードはいつ自分が故郷へ帰れる日が来るのかと、溜息を吐いた。
「ねぇ、あの人・・」
「ロンドンから来たっていう・・」
「素敵ねぇ・・」
町の女達は、滅多に見かけない美青年(バッキンガム)の姿を、穴が開く程見つめていた。
(田舎は、息苦しいな。)
何処に行っても、何をしていても、バッキンガムは誰かに“見られている”事に気づいた。
ロンドンの方が、人付き合いの面ではこの町よりも住みやすいのかもしれない―バッキンガムがそう思いながら何杯目かのコーヒーを飲んでいると、ホテルのバーカウンターで見かけた女性がカフェに入って来た。
「ここ、よろしいかしら?」
「ええ。」
「ありがとう。」
彼女はそう言うと、サングラスを外した。
彼女の宝石のようなエメラルド・グリーンの瞳を縁取っているのは、痛々しく見える赤黒い痣だった。
「その顔は、どうされたのですか?」
「夫に殴られたの。わたしが毎日、お酒ばかり飲んでいるから・・」
「何故、お酒を?」
「息子が、死んでしまって・・みんなあの子が碌でなしだと言うけれど、わたしにとっては大切な息子だったのよ。」
バッキンガムは、黙ってオリヴィアの話を聞いた。
「そろそろ行かないと。話を聞いてくれて、ありがとう。」
「いいえ。」
それが、バッキンガムがオリヴィアの姿を見た最後となった。
その日の夕方、焼け焦げた車の中からオリヴィアの遺体が発見された。
「まさか、彼女まで・・」
「あの家は、呪われているわね。」
オリヴィアの葬儀で、町の女達はそんな話をしながら、好奇の視線をオリヴィアの夫・スティーブに向けていた。
彼は女癖が悪い事で有名で、オリヴィアとの夫婦仲は完全に冷え切り、離婚も秒読みかと思われた、その矢先の出来事だった。
「あ、ごめんなさい。」
「いいえ・・レディ、お怪我はありませんか?」
町の主婦・エマは、その日初めてバッキンガムと会った。
「あなたは・・」
「では、俺はこれで失礼致します。」
(とても、素敵な方・・)
「エマ、どうしたの?」
「いいえ。」
バッキンガムはホテルの部屋に戻ると、深い溜息を吐いた。
(田舎は監視社会だな・・さっさと“用事”を済ませて、ロンドンに戻るか・・)
彼がそう思いながらタブレット端末で動画を観ていると、ドアが誰かにノックされた。
「誰だ?」
「バッキンガム様・・」
「どうした、何かあったのか?」
「バッキンガム様にお会いしたいという方が、ロビーにいらっしゃっています。」
「そうか。」
バッキンガムが部屋から出てホテルのロビーへと向かうと、そこには仏頂面を浮かべたキャサリンの姿があった。
「お前、どうしてここに?」
「あなたが全然連絡して来ないから、会いに来たのよ!」
キャサリンはそう叫ぶと、バッキンガムの頬を平手打ちした。
「あなた、本当にわたしと別れるつもりなの!?」
「今更そんな事を言う為にここへ来たのか?帰れ。」
「言われなくても帰るわよ!」
キャサリンはそう言った後、そのままホテルから出て行った。
「バッキンガム様、大丈夫ですか?」
「あぁ。騒いで済まなかった。」
「いいえ。」
バッキンガムがエレベーターホールでエレベーターを待っていると、突然彼の前に黒髪の美女―リチャードが現れた。
「あんた、どうしてここに?」
「助けてくれ、追われている。」
「わかった。」
バッキンガムはリチャードを自分の部屋へと連れて行くと、彼女はソファに横になった。
(一体、何があったんだ?)
リチャードに厚手の毛布をかけながら、バッキンガムはリチャードの両足に鱗のようなものがこびりついている事に気づいた。
バッキンガムがそれに触れようとすると、それはバラバラと床に落ちていった。
「ん・・」
「あんた、大丈夫か?」
「水・・水を・・」
「待っていろ。」
バッキンガムが冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、それをリチャードに手渡した。
「ありがとう・・」
「あんたはさっき、誰かに追われていると言っていたが・・」
「実は・・」
リチャードは、バッキンガムにホテルに来るまでの経緯を話した。
海岸で保護され、病院に入院していたリチャードだったが、ある日の朝、彼女が病院で朝食を食べていると、突然病室にエリザベスが入って来た。
「見つけたわ、リチャード!」
「何故、ここが・・」
「今度こそ、お前を殺す!」
エリザベスはそう叫ぶと、ナイフをリチャードに振り翳した。
リチャードは熱々のコーヒーをエリザベスに掛け、そのまま病室から逃げた。
「待てぇ~!」
リチャードは裸足で町の中を走りながら、エリザベスの執念深さに恐ろしさを感じた。
逃げ惑う中で、リチャードはホテルのロビーへと、まるで光に導かれる蛾のように入っていったのだった。
「そうか・・」
「突然こんな事を頼むのはどうかと思うんだが・・俺を、エリザベスから守ってくれないか?」
「わかった。俺があんたを、あらゆる災難から守ってやる。今日から宜しく、リチャード。」
「・・よろしく。」

こうして、“元”人魚と貴族の奇妙な同居生活が始まった。

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Last updated  May 18, 2022 07:21:36 PM
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May 3, 2022




「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

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「皆、“人魚姫”に乾杯しよう!」
「乾杯!」
華やかな宴の中で、その主役のリチャードは、何処か浮かない顔をしていた。
「どうした、リチャード?」
「少し、疲れてしまって・・」
「そうか、部屋で休むといい。」
「はい・・」
リチャードは父にいつ義姉の企みを話そうかとその機会をうかがっていたが、エリザベスがヨーク公にの傍にはりついていて中々近づけないでいた。
「リチャード、どうしたの?」
「母上・・」
リチャードは堪らず、セシリーにエリザベスの企みを話した。
「リチャード、よく話してくれたわね。あの女の事はわたしに任せて、あなたは休みなさい。」
「はい・・」
リチャードは大広間から出て自室で休もうとしたが、セシリーの事が気になり、彼女の姿を捜した。
セシリーは、ヨーク公にエリザベスの企みを話していた。
「あの女は、あなたを亡き者にしてこの国の実権を握ろうとしているのです!」
「お前もリチャードも考え過ぎだ。エリザベスは良くやってくれている。」
「貴方は、騙されているだけなのですわ!」
「セシリー・・」
ヨーク公は妻の様子がおかしい事に気づき、彼女を寝室へと連れて行った。
「そうか、母上がそんな事を・・」
「お義母様は、わたくしの事が嫌いなのですわ。」
「そんな事はない。」
「ですが・・」
「それよりもリチャードは何処に居る?宴の主役が居ないと宴が盛り上がらないぞ。」
「わたしが捜して来ますわ。」
これは、義妹の口を封じる良い機会だ―エリザベスはそう思いながらも、リチャードを捜した。
そのリチャードは、秘密の洞窟に居た。
そこには、群れからいじめられた白いイルカが居た。
「どうだ、白いの、綺麗だろう?」
リチャードがそう言って白いイルカを見ると、イルカは嬉しそうに鳴いた。
「ありがとう。」
リチャードはそう言うと、白いイルカの頭を撫でた。
“白いの”とリチャードが戯れていると、洞窟の中に一匹のシュモクザメがやって来た。
「何だ、お前は?」
「こんな所に居たのね、リチャードさん。」
「義姉上・・」
「あなたね、わたしの事をお母様に告げ口したのは?」
「何の話ですか?」
「とぼけても無駄よ。ここへ来たのは、あなたの口を塞ぐ為よ。」
エリザベスはそう言って笑うと、シュモクザメに何かを命じた。
するとシュモクザメは、ぐるぐるとリチャードの周りを旋回し始めた。
“白いの”が甲高い声で威嚇しながらシュモクザメに飛びかかろうとしたが、シュモクザメに攻撃されて悲鳴を上げた。
「役立たずなお友達ね・・」
エリザベスがそう言って笑った時、洞窟全体が激しく揺れた。
「まぁ、一体・・」
「逃げて下さい、姉上!」
外で見張りをしていたドーセットは、その腸を突然現れたシャチによって喰いちぎられ、絶命した。
「嫌ぁぁ~!」
「黒いの、来い!」
シャチはリチャードをその背に乗せ、“白いの”を従えながら洞窟を後にした。
「待ちなさい、リチャード!」
エリザベスは、慌ててリチャード達の後を追った。
(早く、父上達の元へ・・)
シャチの“黒いの”に乗ったリチャードは、海流に身を任せながら両親が待つ王宮へと戻っていった。
「畜生、やってくれたわね、リチャード!」
眼前でシャチに喰い殺された弟の遺体を抱え、エリザベスはアカエイの毒を刃先に塗り込んだナイフをリチャードに向かって投げつけた。
それは、リチャードの脇腹に突き刺さった。
「リチャード、どうした!?」
「父上・・」
蒼褪めた顔をしたリチャードを見たヨーク公は、“海の魔女”を王宮に呼んだ。
「アカエイの毒ね。あと数時間で彼女は死ぬわ。」
「そんな・・」
「陛下、ひとつだけ、王女様の命を救う方法がありますわ。」
「早く言え!」
「この薬を、王女様に飲ませるのです。王女様は、人間として生まれ変わります。」
「そうか・・」
「嫌よ、リチャードが人間に、わたし達の敵になるなんて!」
「人魚としての生を終えても、記憶は残りますわ。」
「また、会えるのね?」
「ええ。」
「リチャードを、お願い致します。」
「わかりました。」
ジェーン―“海の魔女”は、リチャードを仲間の女達に運ばせると、“治療”を始めた。
「さぁ、目を覚ましなさい。」
「ここは・・?」
「リチャード様、あなたはこれから、人間として生きなさい。」
リチャードは、ジェーンに薬に飲まされ、肺に激しい痛みを感じて血を吐いた。
「さぁ、お友達に別れを告げなさい。」
「俺は、これからどうなる?」
「あなたは人間になるけれど、必ず海へ戻って来られるわ、心配しないで。」
“白いの”に海底から水面まで運ばれたリチャードは、悲しそうに鳴くイルカの頭を撫でた。
「そんな顔をするな、また会おう。」
“白いの”に別れを告げたリチャードは、ゆっくりと沖から岸まで泳いでいった。
やがて、自分の紫の尾鰭が剥がれ落ち、白く美しい二本の足へと変わるのをリチャードは見た。
(もう、父上達の元には帰れない。あの女が、俺の命を狙っている限り・・)
リチャードは、そんな事を思いながら漸く岸に辿り着いた後に気を失った。
翌朝早く、バッキンガムは日課のジョギングをする為に、海岸沿いを走っていた。
その時、何か光る物を見つけた彼は、恐る恐るそれを拾い上げた。
それは、アメジストのような美しい紫色の鱗だった。
バッキンガムがその鱗の道を辿ると、その先には黒髪の美女が横たわっていた。
「おい、大丈夫か?」
「ん・・」
美女は呻いた後、黒と銀の瞳でバッキンガムを見た。
「ここは・・」
「今、助けを呼んでくる。」
美女はバッキンガムの言葉に静かに頷くと、気を失った。
「もしもし、海岸に人が倒れている、早く来てくれ!」
突然海岸に現れた謎の美女と、ロンドンから来た青年貴族(バッキンガム)の噂は、たちまち町中に広まった。
男女両方の性を持った黒髪の美女―リチャードは、病院のベッドの上で目を覚ました。
「気が付かれましたか、ここは病院ですよ。」
「病・・院・・?」
「急に起き上がっちゃ駄目ですよ。今はゆっくり休んで下さいね。」
「はい・・」

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Last updated  May 7, 2022 09:11:19 AM
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Apr 26, 2022




「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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「リチャード、リチャード何処なの!?」
「セシリー様、落ち着いて下さいませ!」
「離しなさい!」
数匹の人魚達に取り押さえられたセシリーは、褐色の人魚と共に戻って来た愛娘の姿を見た途端、彼女はリチャードを抱き締めた。
「リチャード、何処に行っていたの?」
「少し・・」
「まさか、港へ行ったのではないでしょうね?」
「はい。」
「あいつらは野蛮なのよ。近づいてはいけないわ!」
「わかりました、母上。」
「リチャード、わたしの可愛い娘・・あなたはわたしの希望なの。」
「母上、余りリチャードに干渉しない方がよろしいのでは?」
美女の人魚達を侍らせ、リチャード達の前に現れたのは、美しく蒼い鱗を持ったリチャードの長兄・エドワードだった。
「そうね。」
「リチャード、お前も宴に参加しろ。」
「はい・・」
宴に出るのは苦手なのだが、長兄の命令は絶対なのだから仕方無い。
「リチャード叔母様!」
「ベス。」
赤子の時以来会っていなかった長兄の娘・ベスは、美しく成長していた。
金色の髪に、宝石のように美しく蒼い瞳。
“人魚国”の次期女王に相応しいベスは、父や叔父に全く似ていないリチャードに抱き着いた。
「美しくなったな。」
「叔母様の方が綺麗だわ。わたし、“人魚姫”の称号は叔母様に相応しいと思っているのよ!」
「ベス・・」
宴席に集まっていた人魚達の視線に気づいたリチャードがベスを軽く諫めようとしたが、そこへリチャードの幼馴染、アン=ネヴィルがやって来た。
「アン!」
「ベス様、お久しぶりです。」
「ねぇ、今度の祭りにはアンも出るの?」
「ええ。」
ベスが言う“祭り”とは、“人魚国”で年に一度行われる盛大な祭り、“真珠祭り”だった。
その祭りは、この国で最も美しい人魚に“人魚姫”の称号を与え、国の繁栄を願うものだ。
“人魚姫”の称号を与えられたエドワードの妻・エリザベスは、現国王であるヨーク公よりも強い権力を持っている。
何故なら、それは彼女の父親が多額の軍資金を王国に納めているからだ。
だが、人魚の貴族達は“金を爵位で買った”新興貴族だと、エリザベス達ウッドウィル一族を蔑ろにしていた。
「エリザベス・・お母様はどちらに?」
「お母様なら、ヘイスティングスと向こうへ行ったわよ。」
「そうか、ありがとう。」
(彼女と会うのは気が重い・・だが、俺にはやらなければならない事がある。)
リチャードがそう思いながらエリザベスを捜していると、彼女は見知らぬ人魚と話していた。
「これを、王の酒に・・」
「そうよ、絶対にしくじらないでね。」
エリザベスが人魚に毒薬の瓶を手渡す所をリチャードは岩の陰から目撃してしまった。
リチャードは、そっとその場から離れた。
だが、エリザベスはリチャードに見られている事に気づいていた。
(まずい事になったわね。)
エリザベスは、どうやって義妹の口を封じようかと考えていた。
「漸く、着いたか・・」
ロンドンから片道四時間半特急列車に揺られ、その後更にフェリーで約二時間揺られた後、バッキンガムは目的地の港へと着き、疲労に滲ませた表情を浮かべながらスーツケースを引き摺った。
迎えの車でも来るのかと思っていたが、結局バッキンガムはバスの停留所で一時間も待った後、高台にあるホテルでチェックインできた頃には半ば死にかけていた。
(疲れた・・)
キングサイズのベッドの上に大の字になって倒れたバッキンガムは、朝から長時間背負っていたバックパックの中からスマートフォンを取り出してロックを解除すると、そこには、妻からの未読メッセージの通知画面で埋まっていた。
“何処に居るの?”
“どうして返信してくれないの?”
そのメッセージを見た途端、バッキンガムはスマートフォンの電源を切った。
妻とは数年前に政略結婚したが、夫婦仲は冷え切っていた。
子供も居ないし、離婚しようとバッキンガムは思っているのだが、妻は離婚したくないらしい。
ロンドンを離れ、暫くこの海辺の町で過ごそう。
妻との事は、その後で考えよう。
腹が減った彼は、部屋から出てホテルのレストランへと向かった。
「いらっしゃいませ。」
「この店で一番美味い物を頼む。」
「かしこまりました。」
バッキンガムが暫く窓際の席から町の景色を眺めていると、急にレストランが騒がしくなってきた。
「それにしても、イーサンは死んでも良かったかもしれないわね。」
「しっ、声が大きいわよ!」
「あら、別に良いじゃないの。彼には、色々と迷惑を掛けたわよね。」
「そうね。」
「まぁ、亡くなった人を悪く言うのは・・」
「色々と、トラブルメーカーだったしね。」
どうやら、自分の隣のテーブルに座っているご婦人達は、噂好きのようだ。
「お待たせしました。」
「ありがとう。」
シャトーブリアンに舌鼓を打った後、バッキンガムがワインを飲んでいると、一人の女性がレストランに入って来た。
彼女は、かなり憔悴しきっている様子で、レストランの奥にあるバーカウンターへと向かった。
「ウォッカを。」
「はい・・」
「ねぇ、あれ、オリヴィア様じゃないの?」
「やっぱり、ねぇ・・」
「あんな奴でも、やっぱり彼女にとっては可愛い息子だったみたいね。」
「さてと、もう帰りましょうか?」
「ええ。」
ご婦人達がレストランから出て行った後、バッキンガムはレストランを出て部屋へと向かった。
エアコンをつけようとしたが、“故障中”の札がつけられているのを見て舌打ちし、フロントへ電話した。
『申し訳ありません、エアコンの修理は一月かかります。』
「そうか・・」
夏は後少しすれば終わる。
バッキンガムは溜息を吐きながら、浴室へと向かった。
シャワーの冷水を頭から浴びると、バッキンガムは生き返ったような気がした。
彼がベッドに入っている頃、リチャード達が住む“人魚国”では、“真珠祭り”が華々しく開かれた。
“人魚姫”の称号を得たのは、リチャードだった。
「おめでとう、リチャード!」
「ありがとうございます、父上。」

彼女の黒髪には、真珠とダイヤモンドを鏤めたティアラが輝いていた。

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Last updated  May 7, 2022 09:11:55 AM
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Apr 13, 2022




「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

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―ねぇ、まただって・・
―これで五人目だよ。
―恐ろしいねぇ。
今日も、町では謎の連続怪死事件の事であれこれ勝手な事を住民達が話していた。
今月に入って、この町では若い男ばかりが五人も死んでいた。
被害者は皆、町の外れにある洞窟の入口で死んでいた。
皆、仰向けになって溺死していた。
「一体どうなっているんだ・・」
この町の警察署長・ロバートは、事件の捜査が難航している事に、頭を抱えていた。
ふとカレンダーをロバートが見ると、今日は自分達の結婚記念日だったことに気づき、深い溜息を吐いた。
妻・アニーと結婚してもう三十年目になる。
三人の子供達はとうに自分達の元から独立し、この海辺の町で都会の喧騒から離れてアニーとのんびり田舎暮らしを送るつもりだったが、その矢先にこの事件だ。
ロバートは机の上に置かれた事件の捜査ファイルに目を通した。
今はデジタル主流となりつつある中で、ロバートは未だにアナログ人間で、長女がクリスマスにプレゼントしてくれたスマートフォンは包装紙が解かれないまま箱の中で眠っており、彼の主な連絡手段はポケットベルだけだった。
最初の事件の目撃者は、ロンドンからこの町へ観光に来ていたアン=ネヴィルという大学生だった。
「わたし、見たの。洞窟の入口で怪しい黒いフードを被った男を。」
その黒いフードを被った男は、近くに住む大学生・イーサンだと判明した。
イーサンは、この町の有力者一族の道楽息子で、いつも赤い外車を乗り回し、高台にある屋敷では毎晩美女達を囲んでパーティーをしていた。
早速警察はイーサンと被害者達のとの接点を探ったが、彼はシロだと判った。
結局、事件の捜査は振り出しに戻った。
(さてと、もうそろそろ出ないと、アニーに怒鳴られちまうな。)
ロバートが警察署から出て、アニーとの待ち合わせ場所である町で唯一のホテルのフロントに到着したのは、午後六時だった。
「まぁあなた、早かったわね。」
「そうか?」
「それにしても、こんな所で食事をするのは久しぶり。」
「ここのシャトーブリアンは絶品だからな。」
「ええ。」
ホテルのレストランでロバート達がディナーを楽しんでいると、急に港の方から轟音が響いた。
「何だ!?」
「何だ!?」
「ねぇ、あそこ確か・・」
突然の出来事に、レストランに居た客達は何事かとバルコニーから港の方を見た。
『署長、悪い知らせよ。港で火事があって・・』
「それは知っている。」
『そう。赤い車が爆発して、中からイーサンの遺体が発見されました。』
「わかった。」
部下との通話を終えてロバートがホテルのロビーに備え付けられた固定電話の受話器を置くと、彼の近くに立っていたアニーが溜息を吐いた。
「暫く旅行はお預けね。」
「行って来るよ。」
「気をつけてね。」
アニーに見送られ、ロバートはホテルから出て港へと向かった。
「署長、奥様とのデート中に突然呼び出してしまってすみません。」
「本当に、車の中にあった遺体はイーサンなのか?」
「はい。車の中にそんな物が・・」
そう言ってロバートの部下であるキャサリン警部が彼に手渡したものは、イーサンが愛用していた金の指輪だった。
「遺体はモルグへ運ばれたわ。」
「エミリー、君も来ていたのか。」
「ええ。」
ロバートの友人であり検視官でもあるエミリーは、鉄の塊と化したイーサンの愛車の中からある物を見つけた。
「何かしら?」
「どうした?」
ロバートがエミリーの手元を覗き込むと、そこには何か光る物がビニール袋に入っていた。
「ダイヤか?」
「いいえ。鱗みたいなものね。」
エミリーがそう言った時、何かが水面で光った。
ロバートが目を凝らして見ると、それは魚の尾鰭のようだった。
「どうしたの?」
「嫌、何でもない。」
ロバート達が港を後にしようとした時、一台のレクサスが駐車場に停まり、中から一人の女性が降りて来た。
彼女はオリヴィア=ハワード、イーサンの母親だった。
「イーサン、わたしの坊やは何処?」
「落ち着いて下さい!」
「イーサンに会わせて!」
オリヴィアはそう叫ぶと、気絶した。
「誰か、救急車を!」
騒然となる港の様子を、水面から微かに顔を覗かせながら、一匹の人魚がその様子を見ていた。
(人間は、色々と大変だな・・)
その人魚は、黒と銀の瞳を煌めかせながら、水底へと潜っていった。
時折、その人魚の紫の尾鰭が月光に照らされ、宝石のように輝いた。
「リチャード様。」
「ケイツビー、来たのか。」
美しい翡翠色の尾鰭を持った、褐色の肌を持った人魚は、主の名を呼んだ。
「その様子だと、また母上か?」
「はい。」

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Last updated  May 7, 2022 09:10:40 AM
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